寒の戻りのような・・・灰色の空と冷たい空気。
深夜などには、時雨れの降る日々。
それでも、梅、桃などが咲き始めて、百花繚乱の春の気配。
気がつけば、もう3月の半ば。
今年は、春が早いような気がしていたけれど、やはりお彼岸くらいまでは、何度か、寒の戻りがあるのだろうな。
春の花は、梅・桃・桜という順番で、開花していくけれど、梅は、紅梅なら年末ごろから花を咲かせて、お正月には、蝋梅、そして、白梅と次々に花を咲かせていくから、春の斬り込み隊長の風情だ。
厳冬のさ中、凛とした佇まいが美しい。
静かな美しさがあって、その馥郁たる香りも、冬の中に春を見るようで、こころがふんわりと暖かくなるような気がする。
桃は、その春の色そのもの。
まだまだ寒い春の朝。(昭和の日本家屋の)冷たい廊下をひたひたと歩いていくと、障子の向こうにお雛様。廊下の側のガラス戸の外は、桃の花。
廊下を挟んで、内と外が妙に溶け合う穏やかな春の朝の風景。
春なのだけれど、やはりまだ冬の寒さ。
春の宵には、雛段の雪洞の薄灯り。幽玄のひととき・・・出盛りの柑橘をジンで、割って、なんちゃって、ギムレットなんか飲みながら、ほろ酔いは、春の権利。
柑橘の苦み、春野菜の苦み、ちらし寿司の優しい甘さ。
暖かくなってくると、いよいよ春の花の女王さくら様のご登場。
桜も今頃から、咲き始める薄墨桜を始め、桜界を席捲する勢いの染井吉野、雅な枝垂れ桜、一寸重たげな花房の八重桜、そしてフィナーレの山桜は、ゴールデンウィークくらいまで楽しめる。
2ヶ月くらい絶え間ない。
春は、待つ愉しみである。
寒い冬を耐え抜いた安堵感。
これから、暖かさの増すなかで、もう少しだけ、生きてみようかな・・・そう思わせる何かが春の大気には溶け込んでいるように思う。
それは、やはりマヤカシでしかないと思うのは、毎年のことだけれど。
それでも暖かな春に、胸が開かれる思いがする。