ノイバイ空港から最初の観光地ハロン湾へ。どうしても実際に見たかったところ、ガイドさんは気を使って「日本の松島と同じ」と言うが、スケールが全く違う。いかにも古い帆船が出てきそうな見事な景色だ。中国の名勝・桂林から続く石灰岩台地が沈降し、海水の浸食作用で現在のような絶景が生まれた。今はびっくりするくらい美しい光景だが、やがては海に消えていく運命にある。
ハロン湾は多くの観光客が訪れるとあって、湾を望む各所にホテルやマンション、さらに「なばなの里」のような施設が建てられていた。私たちが泊まったホテルもかなり高層階であったが、朝、部屋から下を見ると、プールの向こうに壊れかけた荒家があった。ベトナムでは大資本が粗末な民家を買い上げ、大規模な地域開発が行われている。目先のことに追われて、美しい風景が無くなることに今は気付く余裕はない。
海に面した地域は広い平野が続く。山からの流れ出した川の水は平地で蛇行し、沼地が各所で見られた。米作は2期うまくいけば3期だと言うが、日本のような整然とした田んぼはない。平地はどこも水浸しだから、入水と排水をコントロールすればさらに米の収穫は上がるだろうが、見る限りでは全くの手作業だった。
鉄道はまだ未整備だが、道路網はかなり出来上がっていた。それでもまだ高速道路は出来ていないそうだ。バイクがこんなに多く走るのに、高速道路など造ったら交通事故が増えるだろう。日本に住んでいるからそんなことが言えるが、ベトナムの人たちは日本やアメリカに追いつき追い越したいのだ。戦後の日本人も、アメリカ人のように毎日牛乳を飲み、ステーキが食べたいと願って生きて来た。
豊かさを求めるのはどこの国も同じだ。けれど、ベトナムは暑いから夏の昼間は無理して働かない。木陰に椅子を並べておしゃべりしているか、涼しい土間に寝転んでいる。イタリアに行った時もそうだったが、暑い国では昼間に身体を動かすことはないようだ。それでも大都会にはビルが立ち並びオフィス街もあったから、そういう所では冷房が効いていて勤勉なベトナム人はよく働くのだろう。若者が皆、都会に出たがる傾向はどこの国も同じだ。