入院していたせいか、時間の流れが早い。1月のカレンダーをめくると、もう真新しい2月だ。「今日からは、私がお昼の準備をするね」と、カミさんは台所に立つ。ふたりで向かい合って食事する。
浅野定志君が持って来てくれた、東野圭吾の『クスノキの番人』を読み終えた。「東野圭吾はミステリーの第一人者」と浅野君が言う通りで、一見すると複雑なストリーだが、読み進めると伏線がつながり、ああそうだったのかと解けていく。
『クスノキの番人』は、東京近郊のある地方に伝わる、不思議な「力」を備えたクスノキを巡る物語だった。満月の夜、クスノキの祠で念じれば、クスノキが受け止めてくれる「預念」があり、新月の夜に同様に念ずれば「受念」を授かるという。
「預念」の人と「受念」の人は、少なくとも三等親以内の血縁者でなければ成り立たない。主人公の「玲斗」は、母と妻子ある男との間に生まれたが、彼が成人する前にふたりとも亡くなっている。その彼をクスノキの番人にした、「千舟」と母は歳の離れた異母姉妹という設定だ。
クスノキに祈念しに来る人も、家族との関係で悩みを抱えている。番人となった彼は、次第に成長していく。地域の主でクスノキの神社の家を継いだ「千舟」は、家業を盛り上げ大企業へと成長させたが、次の世代への交代が迫ってくる。
家を継ぐとはどういうことなのか、そしてまた、家族とはどういうものか、縦横に織り込まれた関係の中で、東野圭吾は解き明かそうとしている。『汝、星のごとく』にもあった、選択の自由と結果が大きくのしかかってくる。
「この世はピラミッドで、人はそれを形成する石の一つです。ピラミッド全体の姿を思い浮かべ、自分がどの位置に存在しているのかを想像するのです。すべてはそこから始まります。上を目指すも下に落ちるもあなた次第、あなたの自由です」(465p)
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