友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

友だちがひとり亡くなった

2014年08月19日 21時37分56秒 | Weblog

 友だちがひとり亡くなった。胃をほとんど切り取った直後は痩せてしまい元気もなかったが、最近では度々旅行にも出かけていた。私たちのような高齢者になると、旅行というと新幹線やバスを利用したゆったりしたイメージが強いが、彼は自慢のキャンピングカーで出かけて行く。今でこそオートキャンプ場が整備されているが、それでも半分は旅館やホテルを利用すると言っていた。若い時ならキャンプもいいけれど、やはりゆったりと据え膳で食べたいし、温泉があれば星を眺めて手足を伸ばしたい。

 身長が180センチはある巨体で、がっしりした身体つきだったけれど、心根の優しい人で、お酒をこよなく愛していた。東京商船大学を卒業した船乗りだが、「機関士は船底が仕事場だから面白くも無いよ」と言っていた。私たちの頃の商船大学と言えば、東京と神戸に2校ある難関大学だった。海外で事業を始めたり、そうかと思えば両親を介護するためにきっぱり会社を辞めてしまったり、波乱万丈だが思い切りのいい人だった。けれども、やはり船乗りだなと思ったのは、必ず事前に研究し綿密な計画を立てていて、無謀なことはしなかった。

 詳しいことは分からないが、キャンピングカーで旅をしていた彼は余りにも美しい渓谷に出会って車を止め、沢へ降りて行ったようだ。若い時ならきっとこんなことにはならなかっただろうが、残念ながら身体は思ったようには動かず、宙を舞って落ち、頭を石にたたきつけた。全ては推測で、事実ではないかも知れないが、今になればどうでもいいことである。どのようなことが起きたのか分からないが、彼は旅立っていった。葬儀場に、人力車に乗って微笑んでいる夫婦の写真が飾られていたが、本当に幸せなふたりであった。

 いつ、どのように死は舞い込むか分からない。葬儀場で、私の隣に座った女性は「この夏、もう3回も見送った」と言い、いずれも男性で「見事な旅立った」と話す。「家族思いよね」と彼女は言うけれど、見送られた夫たちはどんな思いなのだろう。「いや、あなた方が思っているよりせいせいしていますよ。早くこちらへいらっしゃい」とでも語り合っているかも知れない。いずれにしても、長い間寝込まず、さらっとおさらばできるようにと男たちは祈っていただろう。いや、女たちもご同様なのかも知れない。

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