カミさんは、私に感染させてはいけないと、寝室に籠って、ひたすら眠り込んでいる。私は食事の用意をしたり、食器を食洗器に入れたり、洗濯物を干したりと家事をこなす。退院してから髭が剃ってなかったことに気付き、洗面所の鏡に向かった。鏡の中の自分を見て、以前と同じジジイだなとは思う。
昼ご飯は長女が、今流行りの宅配サービスを頼んでくれた。さて、今晩はどうしようかと冷蔵庫を見る。野菜室にホウレンソウや小松菜、キノコ類がいっぱいある。カミさんはこれらをどうするつもりだったのだろう。昼に友だちが、彼女の故郷の伊予ミカンを1箱持って来てくれた。こんな重い物をよく我が家まで運んでくれたと感心する。
私の入院を知って、卒業生の浅野定志君が本を3冊我が家へ持って来てくれた。カミさんが病室に届けてくれたので、入院中に2冊は読み終えた。ビートたけしの『アナログ』、東野圭吾の『クスノキの番人』、昨年度に本屋大賞を受賞した凪良ゆうの『汝、星のごとく』で、「どれから読むかは先生次第」と手紙が添えられていた。
それで、一番薄い『アナログ』から読み始めた。ビートたけしが映画を作っていることは知っていたが、小説まで書くとは知らなかった。テレビで喋っているような調子の小説だった。題名通り、今日の何でもコンピューターの時代の中で、ひたすら手作りにこだわる男の、手作りの恋愛が最後には花開くというか、実を結ぶ、ハッピーエンドストーリーだった。
次に手にしたのは一番分厚い『汝、星のごとく』だった。東野圭吾の小説は我が家にも何冊かあり、ストーリーの面白さには感心したし、彼が私の生まれ育った刈谷市のデンソーで働いていたことも知って、親近感があった。けれど、凪良ゆうは全く知らない。女性だと思うが、男性かも知れない。どういう小説を書く人なのかと興味が湧いた。
けれど、読み始めて、重いなと感じた。17歳で出会った高校生の男女が辿る、数々の遍歴というか、生涯の巡りあわせは、確かにどの人も同じようなものなのに、こうして書かれると重い。逃げ出すことも、そのままもがき受け止めることも、本人の自由であり、誰も非難出来ないし、責任を取ることも出来ない。
またいつかの機会に、読書感想に触れてみたい。今日は大相撲の最終日、誰が優勝するのだろう。大阪女子マラソンで日本新記録が出たし、なぜか忙しい。カミさんが寝ている間に晩御飯の準備もしておきたい。
リハビリもしっかりやって下さいね。
ではまた。