絵を待つ

　若い頃はたまに絵を買っていた。学生時代にバイトで貯めた金でヤマガタのリトグラフィーを手に入れたのが最初だったと記憶している。社会人になり結婚してからも、気が向いたときに衝動買いしては、部屋の空いている壁に飾ってきた。
　家の中で絵が飾れるスペースもなくなってきたし、子供が生まれてからは、アート収集なんて潤いのある趣味からは久しく遠ざかっていた。
　先日、東京の友人Ｋさんと飲んでいるときにアートの話になり、彼女の同僚が絵が趣味で、自身の作品をネットに載せているということを聞く。ＵＲＬを教えてもらい、家で早速そのサイトを拝見すると、素晴らしい。風景画が多いのだが、単に写実的なだけでなく、描き手のインスピレーションが加わった幻想的な雰囲気を醸し出している。非常に私好みである。自分の部屋に飾りたい気持ちに駆られる。
　後日、Ｋさんにメールをして、厚かましくも一枚描いてもらえないか相談する。Ｋさんから作者であるＴさんを紹介してもらいお願いすると快諾いただく。Ｔさん本人とメールで何回かやりとりしながら、希望するサイズや、イメージ、飾る場所の写真などを伝える。画廊で出来合いのものを買うのではなく、自分のために“一枚もの”を描いてもらうなんて非常に光栄かつ贅沢な話である。「イメージが沸くまでに時間がかかるので、年内いっぱいくらいゆっくり待っていてほしい」とＴさん。もちろん、急ぐ話ではないので。楽しみに待ってま～す。