亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金の下値サポートとしての200日線

2020年11月24日 23時22分40秒 | 金市場
週明けのNY市場は英アストラゼネカの新型コロナワクチンの有効率の高さと、IHSマークイットの11月の米購買担当者景況指数(速報値)の予想を上回る上昇に、反落ということになった。

米ファイザー、同モデルナに続き、英製薬大手アストラゼネカが23日、英オックスフォード大学と共同開発中の新型コロナワクチンが、最終段階の治験で深刻な副作用を起こさず感染を予防できる有効率が最大で約90%、平均で70%だと明らかにした。相次ぐワクチン開発進展のニュースに、想定より早く経済正常化の動きが進むのではとの期待から、NY金先物市場で安全資産としての金売りが進むことになった。

アストラゼネカのワクチンの特徴は、いわゆる我々の認識にある従来型ワクチンと同じゆえに、生産コストも低く、保存に関しても一般的な冷蔵庫でも半年は保管できるという。ファイザーのように保管にマイナス70℃や80℃の環境が必要などと言われると、素人考えでは、広く普及するのは難がありのだろうと思ってしまう。普及についてのバーはかなり下がる印象だ。当然、経済正常化への期待は高まる。

23日のNY市場でその上に被ったのが、IHSマークイットの11月の米製造業購買担当者景況指数(PMI)速報値だった。56.7と2014年9月以来の高水準となったこと。さらにサービス業PMIおよび総合指数もそれぞれ約5年半ぶりの高水準を記録したことで、市場は一気にリスクオン(リスク資産選好)に傾き、直前まで弱含みに推移していたドルも買い戻されたこともあり金売りに拍車が掛かった。ちなみにドル指数は、NYの早朝に92.017まで下げ、8月以来の92ポイント割れが迫っていた。その後、反発したが、アストラゼネカのニュースが買戻しの材料になったのではとの印象が強い。あのまま5月に付けた直近の安値の91.799を下回っていたら、NY金の動きも変わっていたかもしれない。

結局、ワクチンで正常化期待が高まっていたところに、予想以上に高いPMIが出たことで、金売りに拍車がかかった。心理的な節目となる1850ドルを割れると、プログラムをヒット、4カ月ぶりの水準となる1828.00ドルまで売り込まれることになった。さすがに買戻しの動きが見られ1840ドル近辺まで回復したものの、それ以上の動きは見られず上値の重さを感じさせる状況で34.60ドル安の1837.80ドルで通常取引は終了となった。その後の時間外でも弱含み、24日のアジアは1835.70ドルでスタートとなった。

日本時間の24日、22時半までで安値は1801.80ドルと、さっそく1800ドルの攻防戦となっている。実は本日のラジオNIKKEI夕刻16時30分からの番組にて触れたが、NY金の200日移動平均線が位置しているのが、この節目の1800ドル近辺(1798.73)となっている。
経験則からは、下値メドとしての200日線の信頼度は高いといえ、金融政策が方向転換するような状況にないことから、この辺りで下げ止まりと思う。もちろん相場に上振れもあれば下振れもあるが、押し目買いの水準と思われる。

さて、話題はかわって新政権の財務長官にイエレン前FRB議長が取りざたされている。
自分はブレイナード理事を考えていたが、大御所が浮上したのは、民主党が上院選ですんなり過半数確保とは行かず48議席止まり。年明け1月5日のミシガン州での2議席決選投票での2議席確保が過半数には必要となったが、同じ州で2つ取るのは難しいのではないか。つまり「ねじれ議会」となると議会対策上、財務長官には大物を据えるということか。民主党左派にも抑えがききそうだし。いずれにしても、両者ともにFRB高官ということで、その財務長官就任は新政権とFRB間の意思疎通がよくなり、政策は進めやすくなると思う。これは株式市場にもプラスだろう。もちろん金市場にとっても歓迎人事となる。
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