先週にNY金は2570.10ドルで終了。9月11日以来の安値で、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて0.5%の大幅利下げが決まる前の水準まで押し戻されたことになる。
週足は前週末比128.70ドル、4.6%安と3週連続安となった。2021年6月18日終了週以来の大幅な下げとなる。 15日は一時2558.90ドルまで売られたものの2550ドルの節目は維持し、終盤に下げ幅を縮小して終了した。ドル高がさすがに一服したこともある。
先週は発表された10月の米消費者物価指数(CPI)、同生産者物価指数(PPI)また同小売売上高が発表され、いずれも米経済の好調さを裏付けた。インフレについては、鈍化トレンドは続いているものの単月では前月比上昇など足踏み状態とも言える状況にある。15日発表の小売売上高は前月比0.4%増と市場予想の0.3%増(ロイター)を上回った。9月は当初の0.4%増から0.8%増に上方修正された。NY連銀が同日発表した11月の製造業景況指数は31.2と、市場予想を大幅に上回った。
こうした米経済の堅調展開に、米連邦準備制度理事会(FRB)が着手している利下げ政策が見直されるとの観測が高まっている。 FRBのパウエル議長は14日の講演で、米景気について「極めて好調で、世界の主要国の中でずばぬけて良い」と分析。今後の政策金利については「指標と経済見通し次第」と強調した一方で、利下げを急ぐ必要はないと明言した。
こうした中で12月のFOMCでは利下げを見送るとの見方が浮上している。仮に連続利下げに踏み切っても、来年以降FRBは緩和ペースを落とすとの見方が増えている。
実際に利下げを慎重に進める姿勢を示すFRB高官が増えている。シカゴ連銀のグールズビー総裁は15日朝の米CNBCの番組で、物価上昇率がかなり高いとの認識を語っている。その上で利下げを急がないパウエルFRB議長の見解に同意した。
ボストン連銀のコリンズ総裁は、新たな物価上昇圧力は見られないとしながらも、住居費のインフレは解消されるまでしばらく時間かかる可能性あると述べた。FRBが利下げの時期やペースを決める上で「非常に注意深くあるべき立場にある」としている。
政治分断、政治的空白を手掛かりにヘッジ目的で先物市場と金ETF(上場投資信託)を介して買い進んだ欧米勢だが、サプライズとも言える展開に一斉に手じまい売りを出している状況は、NY金(12月物)の出来高からも把握することができる。
ゴールドの目先の最も強気シナリオになるはずだった大統領選が無風で終わる肩透かしに、先週も書いたが 5日以降13日まで6営業日の出来高の平均が28万5797枚と、そこまでの6日間を重量換算で約10万枚(約311トン)増加していた。
1日遅れで公表されるデータだが16日に明らかになった15日分は17万9892枚に大きく減少しており、さすがに買い付いていた目先筋の整理売りは一巡したとみられる。2600ドル近辺の戻り売りの消化が必要となる。