世界滅亡の予言が話題になったが、シュペングラーも「西洋の没落」の中で予言を行っている。「2300年ごろに、今の西洋文化は滅びる」、と。
具体的な根拠は、何もない。あくまでも、彼の直観だ。なにしろ、「歴史研究とは、詩作のようなものである」、と主張するような人物だ。
このへんが、ショーペンハウアーに似ている。彼もまた、「認識できないことについて、あえて語ろうとするのが形而上学である」、と書いている(「意志と表象としての世界」)。
「西洋文化が滅びる」といっても、西洋人、そして西洋文化に染まった世界じゅうの人々が生物学的に滅びる、というわけではない。新しい文化に西洋文化が呑み込まれる、とシュペングラーは言っているのだ。
どんな文化にも寿命がある、と彼は言う。文化はある時から内的な成長が止まり、文明(文化の中の物質的・技術的な要素)ばかりが目立つようになる。代表的な例が、都市だ。そこでは知性と貨幣がもてはやされるが、やがて人々はそれらに飽きて、宗教に回帰する(第二宗教性)。これが、文化の末期の姿だという。
もしかしたら、23世紀のいつか、マヤの予言のようにシュペングラーの予言が話題になる日が来るかもしれない。かなり誇張された形で、だが。