のアルバム「HEROINE」を聴く。
今までのCDを聴いていて不満だったのは、録音で森永理科の歌をいじり過ぎている点だった。もっとダイレクトに彼女の生の声を!というのが私の希望だったが、それがこの作品では見事に実現している。硬質な、刃のようなきらめきを帯びた声(ロリータ・ボイスというのは大ウソ)が迫ってくる。このことは、ボーナス・トラックとして収録された「carillon」と他の曲を聴き比べるとはっきりわかる。
「アウトロー・ラジオ」で全曲ダイジェストを聴いた時は、同じような曲が多くてもうひとつの出来かな、と思ったが、実物は全然違った。実にバラエティに富んだ曲が並ぶ。特に、「ALICE IN BROKEN WONDERLAND」と「HIGH DIVER」が気に入った。前者は静と動、後者はサイケとリアルが激しく交錯していて、非常にスリリングだ。両方とも作曲はマツオカ先生。あと、「LORELEI」。ラジオでEURO氏が「ZEP云々」と言っていたが、ジミー・ペイジのようなギター・リフがないのにそれを言うのはどうだろう。強いて言えば、曲の展開が「アキレス」っぽいかな。
欲を言えば、誰かにライナー・ノーツを書いてもらいたかった。せっかくのファースト・フル・アルバムなのだから。J・A・シーザーか高取英氏に頼めば、喜んで書いてくれただろうに。まあ、ライナーを載せないのは今の邦楽全般の傾向かもしれないが。
そうそう、ジャケもインパクトがあっていいね。どう見ても、暗黒舞踏の人だよね、これは。3月のワンマンでは、ぜひこの衣装を使ってほしいな。
function code();は、常にプレッシャーにさらされている。つまらない作品を出したら、月蝕歌劇団以来の森永ファンからは「こんなことなら劇団でシーザーの曲を歌っている方がよかった」、と言われるし、アニメのファンからは「もっとアニソンを歌えばいいのに」、と言われてしまう。「HEROINE」は彼らにそんなことを言わせない作品だ。このレベルを維持するには、森永理科が他のメンバーの創作意欲を常に刺激し続ける存在でなければならない。つまり、バンド以外の活動が重要になってくる。・・・・・やはり、舞台復帰だね。
※ディスクユニオン限定のシングル「UNDER」も聴いた。「HEROINE」では「素の森永」が登場する。他2曲はfunction5以来の馴染み深いものだが、オリジナルのままで読んでみたかった歌詞が英語になってしまっていて、ちょっと残念。