アモス書9,7。 わたしはイスラエルをエジプトの地から、ペリシテ人をカフトルから、アラム人をキルから、導き上ったではないか。
英文は I brought the Philistines from Crete and the Syrians from Kir, just as I brought you from Egypt.
これは、どういうことなのだろうか。「出エジプト記」のペリシテ人版、アラム人版が、かつては存在したのだろうか。
アモス書9,7。 わたしはイスラエルをエジプトの地から、ペリシテ人をカフトルから、アラム人をキルから、導き上ったではないか。
英文は I brought the Philistines from Crete and the Syrians from Kir, just as I brought you from Egypt.
これは、どういうことなのだろうか。「出エジプト記」のペリシテ人版、アラム人版が、かつては存在したのだろうか。
ホセア書7,11。 エフライムは鳩のようだ。愚かで、悟りがない。エジプトに助けを求め、あるいは、アッシリアに頼って行く。
英文は Israel flits around like a silly pigeon; first her people call on Egypt for help, and then they run to Assyria!
鳩といえば、ユダヤ教、キリスト教ではポジティヴなイメージだが(創世記8,11とか、マタイ伝10,16とか)、例外もあるのにゃ。
ホセア書6,6。 わたしが喜ぶのは愛であっていけにえではなく、神を知ることであって焼き尽くす献げ物ではない。
英文は I want your constant love, not your animal sacrifices. I would rather have my people know me than burn offerings to me.
ホセアはユダ王国後期の預言者なのだが、その言葉はかなりキリスト教的なのにゃ。この時期にユダヤ教が変化しつつあったのか、それとも・・・。エホバの神はかつて、儀式の手順を間違えただけで祭司アロンの息子を焼き殺した(レビ記10,1~2)。同じ神の言葉とはとても思えないのにゃ。
ダニエル書12,1。 その時、大天使長ミカエルが立つ。彼はお前の民の子らを守護する。
英文は The angel wearing linen clothes said, " At that time the great angel Michael, who guards your people, will appear.
「ミカエル」という名前が出てくるということは、この記述は間違いなくキリスト教時代に書かれたものなのにゃ。
ダニエル書9,1。 ダレイオスはメディア出身で、クセルクセスの子であり、カルデア人の国を治めていた。
英文は Darius the Mede, who was the son of Xerxes, ruled over the kingdom of Babylonia.
いや。ワシの知っているダレイオスは、クセルクセスの父親なのだが。
ダニエル書5,30~6,1。 その同じ夜、カルデア人の王ベルシャツァルは殺された。さて、王国を継いだのは、メディア人ダレイオスであった。彼は既に六十二歳であった。
英文は That same night Belshazzar, the king of Babylonia, was killed; and Darius the Mede, who was then sixty-two years old, seized the royal power.
この「メディア人ダレイオス」というのが、ナゾの人物にゃ。ヘロドトスの「歴史」によると、バビロニアを滅ぼしたのはアケメネス朝ペルシアのキュロスなのにゃ。
エゼキエル書42,14。 祭司たちが聖所に入ったときは、聖所からそのまま外庭へ出てはならない。務めの時に身に着けた衣服はそこに置く。なぜなら、それは神聖だからである。彼らは別の衣服に着替えて、民のいる所に近づかねばならない。
英文は When priests have been in the Temple and want to go to the outer courtyard, they must leave in these rooms the holy clothing they wore while serving the LORD. they must put on other clothes before going out to the area where the people gather.
ロバートソン・スミスは、聖書のこの記述から、「宗教の本質は、聖なるものと俗なるものを区別することにある」という命題を導き出したのにゃ(たぶん)。
エゼキエル書23,3。 彼女たちはエジプトで淫行を行った。まだ若いのに淫行を行った。その地で、彼女たちの乳房は握られ、処女の乳首は摘まれた。
英文は When they were young, living in Egypt, they lost their virginity and became ptostitutes.
旧約聖書の性表現といえば、「女のところに入る」だった。それが、おっぱいに興味が移った実例のひとつ、と言いたいところだが・・・。日本語版(底本はドイツ語版)と英語版のこの違いは、何なんだろう。ドイツ人の、いや、ゲルマン人のおっぱい好きは、タキトゥスの「ゲルマーニア」で描かれている通りだが、それが聖書の記述にも影響したのだろうか。
エゼキエル書14,14。 たとえ、その中に、かの三人の人物、ノア、ダニエル、ヨブがいたとしても、彼らはその正しさによって自分自身の命を救いうるだけだ、と主なる神は言われる。
英文は "Even if those three men, Noah, Danel, and Job, were living there, their goodness would save only their own lives." The Sovereign LORD has spoken.
ノアと年代不明のヨブはともかく、どうしてここにダニエルが出てくるのだろう。彼が活躍するのは、主にアケメネス朝ペルシアの時代。エゼキエルは、それより前のバビロン捕囚時代の人だ。彼が神の声を聴いたのは「ヨヤキン王が捕囚となって第五年のこと」(1,2)だそうだ。明らかに、後付けなのにゃ。
エゼキエル書3,27。 聞き入れようとする者は聞き入れよ。拒もうとする者は拒むがよい。彼らは反逆の家だから。
英文は Some of them will listen, but some will ignore you, for they are a nation of rebels.
これは、キリストが繰り返し言う「耳のある者は聞きなさい」にそっくりだ。キリストがエゼキエル書のまねをしたのか、それとも、キリスト教時代にエゼキエル書のこの部分が書かれたのか。それは、わからないのにゃ。
「ヨーロッパ中世の神話伝説の世界」を読んでいる。チャントリー・ウェストウェル著。原書房。
さまざまなむかし話と、カラーの挿絵。ワシ好みの世界だが、不可解な点もある。この挿絵の左側。ヨセフが、エジプトのファラオの侍従長ポテパルの妻を誘惑している場面だというが、これは旧約聖書の創世記の記述とは逆だ。本当は妻の方が、ヨセフを誘惑するのだ(39、7以下)。
この挿絵は、フランス王フィリップ2世の王子の教育係だった修道士ロレントが書いた教科書に載っていたというが、ロレントは、教育に都合がいいように聖書の内容を歪めたのだろうか。中世においては、そういういい加減さが許されていた、ということか。
あともうひとつ、103ページ2行目以下。「ヨナタンは預言者サムエルがダビデの頭に聖油を注いで将来の王と定めたことを快く思わず、彼を殺す計画を立てる。」とあるのは、明らかな間違い。これはヨナタンではなく、彼の父親のサウル王のことだ。ヨナタンとダビデは愛人関係にあったのにゃ。作者の単なる書き間違いだろうが、翻訳の段階で気づくべきだったにゃう。
哀歌3、30。 打つ者に頬を向けよ。十分に懲らしめを味わえ。
英文は Though beaten and insulted, we should accept it all.
これは捕囚期に書かれたのか、それとも、キリスト教時代の作品なのか。わからないのにゃ。
イザヤ書57,5。 大木の陰、すべての茂る木の下で身を焦がし、谷間や岩の裂け目で子供を屠る者らではないか。
英文は You worship the fertility gods by having sex under those sacred trees of yours. You offer your children as sacrifices in the rocky caves near stream beds.
順番がおかしくなってしまったが、やはり、これに触れざるをえない。sex という単語が聖書に出て来たのは、これが初なのでは。今までは、intercourse だったのにゃ。
エレミア書30,9。 彼らは、神である主と、わたしが立てる王ダビデとに仕えるようになる。
英文は Instead, they will serve me, the LORD their God, and a descendant of David, whom I will enthrone as king.
ダビデの子孫といえばキリストだが、エレミアがキリストの登場を予言したのか、あとからこの部分が書き加えられたのか、例によって不明なのにゃ。