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TPPと私たちの食・農・くらし 鈴木宣弘東京大学教授 6、生産者の取り分は「不当に」低い

2016-05-07 08:15:52 | TPPと私たちの食・農・くらし
6.生産者の取り分は「不当に」低い
食料関連産業の規模は1980年の48兆円から2005年の74兆円に拡大しているが、農家の取り分は12兆円から9兆円に減少し、シェアは26%から13%に落ち込んでいる。その分、加工・流通・小売、特に小売段階の取り分が増加していることが農林水産省の試算で示されている。このことから、特に最近の小売段階の取引交渉力が相対的に強すぎることが、いわゆる「買いたたき」現象を招き、農家の取り分が圧縮されている可能性が示唆される。
また、例えば、コンビニの105円の小売価格のおにぎりに占めるコメ(精米)の生産者売上分は16円に過ぎないとの試算もある。さらに、農業の様々な品目における1時間当たりの農業所得は、稲作農家平均で500円前後しかないことに象徴されるように、他産業における1時間当たり給与水準に比較して総じて低位で、しかも、その格差は近年も拡大しつつある。つまり、労働への対価を十分確保するだけの価格形成ができていない。

生乳流通・取引体制検討の欠落点~最大の問題にメス入れず
 2015年7月2日の生乳流通・取引体制の自民党の取組案を見て、正直驚いた。肝心の問題が欠落しているからだ。乳業メーカーvs酪農協の取引の改善のみを議論しているが、最大の問題は、乳業メーカーvs酪農協の取引の改善ではなく、スーパーvs乳業メーカーの取引だからだ。乳業メーカーvs酪農協の取引の改善により酪農家の手取り乳価の向上を図ることも、もちろん重要ではあるが、乳価が上がらないのは、メーカーではなく、小売の市場支配力が大きいためであり、この点を議論せずして、乳価の改善はありえない。むしろ、乳業メーカーvs酪農協の取引の改善により酪農家の手取り乳価が向上できたら、スーパーから買いたたかれるメーカーは「板挟み」になり、「しわ寄せ」が酪農家からメーカーに移るだけで、根本的解決にはならない。

取引交渉力の不均衡
我が国では、2007~2008年の飼料・肥料・燃料等の高騰によるコストの急上昇にもかかわらず、乳価が上がらず、酪農経営が苦況に陥った。諸外国では、飼料危機当時にも、乳価上昇による調整が非常に迅速に機能した。
我が国では、大型小売店同士の食料品の安売り競争は激しいが、そのため、小売価格の引き上げが難しく、そのしわ寄せがメーカーや生産者に来てしまう構図がある。我々の試算(図3)では、我が国では、メーカー対スーパーの取引交渉力の優位度は、ほとんど0対1で、スーパーがメーカーに対して圧倒的な優位性を発揮している。一方、酪農協対メーカーの取引交渉力の優位度は、最大限に見積もって、ほぼ0.5対0.5、最小限に見積もると0.1対0.9で、メーカーが酪農協に対して優位である可能性が示されている。
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