4.「国家安全保障の要(かなめ)は食料」という認識の欠如
我が国では、国家安全保障の要(かなめ)としての食料の位置づけが甘い。必ず出てくるのが、安けりゃ良いじゃないかという議論だ。実は日本国民は結構安さに飛びつく国民である。世論調査すると89%の方が、高くても国産を買いますかという問いにハイと答えているが、実際の食料自給率39%である(ウソつきが多い?)。
それに比べて、米国などでは食料は武器という認識だ。軍事・エネルギーと並ぶ国家存立の三本柱であり、ブッシュ前大統領は戦争を続けて困ったものだったが、食料・農業関係者には必ずお礼を言っていた。「食料自給はナショナル・セキュリティの問題だ。皆さんのおかげでそれが常に保たれている米国はなんとありがたいことか。それにひきかえ、(どこの国のことかわかると思うけれども)食料自給できない国を想像できるか。それは国際的圧力と危険にさらされている国だ。(そのようにしたのも我々だが、もっともっと徹底しよう。)」と。ただし、カッコ書きの部分は、筆者の余韻である。
さらには、農業が盛んなウィスコンシン大学では、農家の子弟が多い講義で教授は、「食料は武器であって、日本が標的だ。直接食べる食料だけじゃなくて、日本の畜産のエサ穀物を米国が全部供給すれば日本を完全にコントロールできる。これがうまくいけば、これを世界に広げていくのが米国の食料戦略なのだから、みなさんはそのために頑張るのですよ」という趣旨の発言をしていたという。戦後、一貫して、この米国の国家戦略によって我々の食は米国にじわじわと握られていき、いまTPPで、その最終仕上げの局面を迎えている。
競争力でなく食料戦略が米国の輸出力を支える
米国は、コメの生産コストがタイやベトナムより大幅に高いが、4,000円/60kg程度の低価格で輸出し、農家には生産コストに見合う目標価格との差額を、多い年は、1兆円もの補助金(穀物3品目だけで)を使って差額補填し、増産と輸出振興を推進し、世界をコントロールしようとしている。かたや、日本の輸出補助金はゼロであるから、輸出競争でも勝負にならない。しかも、TPPでも米国の1兆円規模の輸出補助金は使い放題で、関税を撤廃・削減した日本市場に、米国は補助金をいくらでも使って攻めてこられるという構造になっている。自由貿易とは、米国が自由にもうけられる貿易という意味なのである。
我々は原発でも思い知らされた。目先のコストの安さに目を奪われて、いざという時の準備をしていなかったら、取り返しのつかないコストになる。食料がまさにそうである。普段のコストが少々高くても、オーストラリアや米国から輸入したほうが安いからといって国内生産をやめてしまったら、2008年の食料危機のときのように、お金があれば買えるのではなくて、輸出規制で、お金を出しても売ってくれなくなったら、ハイチやフィリピンでコメが食べられなくなって暴動が起きて死者が出たように、日本国民も飢えてしまう。
だから、そういう時に備えるためには、普段のコストが少々高くてもちゃんと自分の所で頑張っている人たちを支えていくことこそが、実は長期的にはコストが安いということを強く再認識すべきではないか。
我が国では、国家安全保障の要(かなめ)としての食料の位置づけが甘い。必ず出てくるのが、安けりゃ良いじゃないかという議論だ。実は日本国民は結構安さに飛びつく国民である。世論調査すると89%の方が、高くても国産を買いますかという問いにハイと答えているが、実際の食料自給率39%である(ウソつきが多い?)。
それに比べて、米国などでは食料は武器という認識だ。軍事・エネルギーと並ぶ国家存立の三本柱であり、ブッシュ前大統領は戦争を続けて困ったものだったが、食料・農業関係者には必ずお礼を言っていた。「食料自給はナショナル・セキュリティの問題だ。皆さんのおかげでそれが常に保たれている米国はなんとありがたいことか。それにひきかえ、(どこの国のことかわかると思うけれども)食料自給できない国を想像できるか。それは国際的圧力と危険にさらされている国だ。(そのようにしたのも我々だが、もっともっと徹底しよう。)」と。ただし、カッコ書きの部分は、筆者の余韻である。
さらには、農業が盛んなウィスコンシン大学では、農家の子弟が多い講義で教授は、「食料は武器であって、日本が標的だ。直接食べる食料だけじゃなくて、日本の畜産のエサ穀物を米国が全部供給すれば日本を完全にコントロールできる。これがうまくいけば、これを世界に広げていくのが米国の食料戦略なのだから、みなさんはそのために頑張るのですよ」という趣旨の発言をしていたという。戦後、一貫して、この米国の国家戦略によって我々の食は米国にじわじわと握られていき、いまTPPで、その最終仕上げの局面を迎えている。
競争力でなく食料戦略が米国の輸出力を支える
米国は、コメの生産コストがタイやベトナムより大幅に高いが、4,000円/60kg程度の低価格で輸出し、農家には生産コストに見合う目標価格との差額を、多い年は、1兆円もの補助金(穀物3品目だけで)を使って差額補填し、増産と輸出振興を推進し、世界をコントロールしようとしている。かたや、日本の輸出補助金はゼロであるから、輸出競争でも勝負にならない。しかも、TPPでも米国の1兆円規模の輸出補助金は使い放題で、関税を撤廃・削減した日本市場に、米国は補助金をいくらでも使って攻めてこられるという構造になっている。自由貿易とは、米国が自由にもうけられる貿易という意味なのである。
我々は原発でも思い知らされた。目先のコストの安さに目を奪われて、いざという時の準備をしていなかったら、取り返しのつかないコストになる。食料がまさにそうである。普段のコストが少々高くても、オーストラリアや米国から輸入したほうが安いからといって国内生産をやめてしまったら、2008年の食料危機のときのように、お金があれば買えるのではなくて、輸出規制で、お金を出しても売ってくれなくなったら、ハイチやフィリピンでコメが食べられなくなって暴動が起きて死者が出たように、日本国民も飢えてしまう。
だから、そういう時に備えるためには、普段のコストが少々高くてもちゃんと自分の所で頑張っている人たちを支えていくことこそが、実は長期的にはコストが安いということを強く再認識すべきではないか。