【中川博司】私の地元で、在宅医療をしている医師の講演会があり、参加者から「親が自宅で最後まで生きたいと思っていても、家族が支えきれるだろうか」「アルツハイマー型の認知症になれば、徘徊もあるし人に迷惑をかけるから施設に入れたほうがいいのではないか」といった質問が出されました。
その医師からは「何もしないのも医療。患者と家族と医師が同じ方向で考えることが大事ではないか」という提起もありました。これは、在宅医療を進める際の大きな課題だと感じたところです。そこで、何点かお伺いします。
一つは年度内の発表を目指すとしてきた健康寿命の市町村別の指標は発表できるのでしょうか。どこの自治体が、健康寿命が長いか短いかということよりも、どのような施策で健康寿命が長くなるのかという政策的な指標とすることが大切だと思いますが、その活用方法はどのように考えていますか。
【健康福祉部長】健康寿命については、国が市町村の算定をしていないため、県では平成25年度からその算定方法について、独自に検討を進めているところです。
これについては、昨年の9月定例会において議員にお答えした通り、本県に多い小規模な自治体の精度を高めるためにはどのような手法が適切なのか、保健統計学の観点から専門家にもご協力いただいて研究に取り組んでおり、現在、今年度中の公表を目指して作業を進めているところです。
これを公表することにより、住民の皆さんにそれぞれお住いの市町村の状況を知っていただくことはもとより、健康づくりを担っている市町村や関係団体にもその成果を確認していただき、政策的な部分も含めまして更なる取組の推進に役立てていただきたいと考えております。
【中川博司】地域包括ケアシステムを進めるにあたって、在宅医療の推進が大きな課題であり、診療報酬も在宅医療に誘導する方向で改訂がされ1年が経とうとしています。在宅医療を行う医師や在宅での看取り数は増えたのでしょうか。在宅医療の現状と課題をどのように考えているのでしょうか。
【健康福祉部長】県内において、在宅患者の訪問診療を担う医療機関は、平成20年10月時点では498施設、平成23年10月現在では、496施設となっており、また、県内の住宅死亡件数については、平成24年は5269件、翌25年には5210件で、いずれもほぼ横ばいで推移しているところでございます。
こうした中にあって、今後の急速な高齢化の進展を見据えると、入院医療から不安なく円滑に在宅移住が進むよう、一層、在宅医療の提携体制を充実させることが急務です。
そのためには、「病院において、円滑な在宅移行に向けた退院支援を行う体制を確立することや」「切れ目のない訪問診療・訪問看護等により、患者・家族を日常的に支援する体制を確保すること」「また、病状急変時には円滑に再入院できるよう、診療所と病院との連携体制を確立するこ」「さらには、24時間体制で患者が望む自宅などで看取りができる体制を構築することが必要」です。
中でも、医療機関での診察に訪問診療が加わることで、医師や看護師の負担が重くなることから、新たに訪問診療に取り組もうとする医療機関の数が、十分に確保できないおそれがあることが、当面の課題であると認識しています。
こうした課題を踏まえ、県としては、地域医療介護総合確保基金を活用し、在宅医療を担う医療機関の増加を図るため、その運営を支援するなど取組を進めてまいります。
【中川博司】地域ケア会議は、地域包括センター・診療医・薬剤師・ケアマネージャー・健康づくり推進委員・食生活改善委員・町会長・民生委員などが一堂に会して、地域の医療と介護の課題について研究する場として私も地元で出席させていただきました。地域ケア会議が医療と介護に対する理解を深めるとともに、個別課題についても気軽に地域包括センターや診療医に相談できる状況がつくられるものと感じました。地域ケア会議が医療と介護を結びつける土台となると思います。
新年度予算にも全ての市町村で地域ケア会議が行われるよう支援することとなっていますが、将来的には小学校区、あるいは自治会単位にケア会議がもたれ、支えあいお互い様の地域づくりにつながっていくことが求められています。
そこで、すべての医療機関、薬局、介護関係施設などを網羅した、地域包括ケア医療・介護資源マップの作成への支援など、県のより一層きめ細かな支援が必要と考えますがいかがでしょうか。以上健康福祉部長にお伺いします。
【健康福祉部長】議員ご指摘のとおり、地域ケア会議は地域包括ケア体制の中核をなすものであり、平成27年度においては、地域ケア会議未設置の19市町村に対し、立ち上げ支援を集中的に行い、その設置を進めてまいる所存です。
地域ケア会議の設置にあたって、まずは市町村を一つの単位とするとともに、おおむね日常施克県地域ごとに設置されている地域包括センターがその中心的役割を果たすことから、次に日常生活圏域を単位にすることとして、平成29年度までに全155日常生活圏域において、地域ケア会議の設置を目指すこととしたい。
その上で、お互いの顔の見える身近な地域において、医療や介護の関係者が一堂に会し、地域包括ケア体制が構築されることは、将来的には理想の一つである考えているところなので、地域の実情などをお伺いしながら、身近な地域レベルでの地域ケア会議の設置についても中長期的に研究してまいりたい。マップの作成、地域ケア会議など見えるものもその中で考えていきます。
【中川博司】健康長寿に向けた長野県の取り組みや、地域包括ケアシステムの中に栄養士、管理栄養士を活用することを9月定例議会でも提案させていただきましたが、具体的に県としての検討は行われたのでしょうか。あわせて栄養士の職場の拡大、活用について知事の所見をお伺いします。
【阿部知事】健康長寿の長野県をさらに発展させていくためには、栄養士、管理栄養士の方々に活躍していただくということは重要なことだと考えています。そういう観点で県のいろんな取り組みに栄養士の方々にご協力をいただくかたちをつくっています。
たとえば、「信州ACE(エース)プロジェクト」のEat「食事」の取組の一環として、県栄養士会と連携して、銀座NAGANOにおいて長野県の長寿を支えてきた食の発信と体験会を実施をしました。
また、県と事業者が結ぶ「食を通じた健康長寿の推進に関する協定」に併せて、県栄養士会がメニューを企画し、栄養士が店舗でアドバイスを行う食堂が3月中に長野市内にオープンする予定になっております。
また、今後地域包括ケア体制を構築していく上でも、施設そして在宅の高齢者への栄養ケアは重要だと考えております。
現在県において、地域ケア会議の整備状況の「見える化」を進めているところであり、先ずは、その中で栄養士が地域ケア会議の構成員として有益だ、有効だということを県として示していきます。それにより現状では一部圏域に限られている参画が拡がるよう、市町村に働きかけ、在宅での栄養指導の充実強化につながるよう検討していきたいと思います。
また、これまで小中学校における栄養教諭の配置の増員をしてきていますが、そうした中でも管理栄養士の増員となっているところでございます。
こうしたことにより、管理栄養士、栄養士の皆様方の活躍の場が一層拡大するよう、県としても前向きに取り組んでまいりたい。
【中川博司】地域包括ケアシステムが結果として施設医療や施設介護からの追い出しとならよう、これまでの高齢者医療の在り方や「死」ということをどう考えてきたのかという総括が必要ではないかということを、最初に問題意識として申し上げたつもりでございます。ぜひその点もご考慮いただいて進めていただきたい。