リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

Flow my teares の日本語訳(16)

2020年05月06日 17時12分08秒 | 音楽系
Flow my teares 第3部の歌詞は1回分だけです。この曲はパヴァーヌという舞曲の形式によっています。リュートソングでこういった舞曲の形式によるものはそう多くありません。

イギリスにおける器楽曲としてのパヴァーヌは3部形式で、それぞれ繰り返しをします。繰り返しにはディヴィジョン(ディミニューション)による変奏を伴います。この曲の場合も各部の繰り返しには、声楽的な装飾なりディヴィジョンを入れて歌うべきだと思います。

本曲の第3部は歌詞が1回分だけですので、歌の楽譜には繰り返し記号がついていません。(複縦線のみ)ところがリュートの楽譜には繰り返し記号がついています。(複縦線の両側の線間に点)これはどうしたことでしょうか。



他の曲を見てみますと、大体次のような規則みたいです。

通しのみで繰り返し部分がない→両パートとも繰り返し記号なし
繰り返し部分があり、繰り返し部の歌詞がある→両パート繰り返し記号あり
通しだが最後にリフレインがある→リュートパートのみ繰り返し記号

ただダウランドの他のリュートソング集を見てみますと結構ばらばらで統一的な規則は見いだせません。今日一般的には第3部を同じ歌詞で繰り返すのが普通ですが、新しい解釈として、繰り返しをせず1回だけというのもアリかもしれません。