リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

音楽界三大ヤッチャッタ(3)

2020年05月24日 17時25分23秒 | ウソゆうたらアカンやろ!他【毒入注意反論無用】
三大ヤッチャッタの3つ目ですが、それは次の曲。

カッチーニのアヴェ・マリア

16世紀中頃に生まれたカッチーニはご存じ「アマリリ麗し」なんかでとても有名な作曲家です。ロバート・ダウランドもリュートソング集「音楽の饗宴」に「アマリリ・・・」を収めています。彼の作品は現代において声楽を勉強する人は必ず歌いますが、その場合多くは「イタリア古典歌曲」として勉強します。初期バロックの楽曲として初めから勉強する人は、古楽専攻の人だけでしょう。でも声楽で最初から古楽という人はいるのかな?

そのカッチーニですが、20世紀の終わり頃突如として「登場」したのが、「カッチーニのアヴェ・マリア」という曲です。初めて聴いたときは「なんじゃ、これ?」って思わず吹き出しました。歌詞は「Ave Maria」と繰り返しているだけですし、メロディはカッチーニの作風とはほど遠いムードミュージック風の音楽です。

この曲は映画に使わたり色んな音楽家が録音したりしてとても有名になりましたが、実は1970年頃ソ連の音楽家ウラディーミル・ヴァヴィロフ(Vladimir Vavilov 1925-73)によって作曲された曲です。(ウィキ)作曲者はギターやリュートをやって人らしいです。

不勉強な声楽家がご自分のリサイタルのプログラムにこの曲を載せていたを1回や2回ならず聴いたことがあります。ヴァヴィロフ作曲「カッチーニのアヴェ・マリア」というタイトルなら事情を分かっているのでしょうけど、プログラムの解説に「ジュリオ・カッチーニは15**年に生まれたバロック音楽の作曲家で・・・」なんてことを書いているところをみると、本当にカッチーニ作曲だと思い込んでいるということになります。

今回取り上げた3曲、曲自体はいずれもとてもいい曲なんですが、惜しくも来歴や邦題でちょっとやっちまっています。さらにカッチーニのアヴェ・マリアは多少の悪意も感じますが、作曲者は惜しくも早世して印税を稼ぐことはなかったのでまぁそっとしときましょう。しかしこれら3曲についての事実は知っておいても悪くはないでしょう。