リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

贋作はなぜ魅力的なのか(14)

2021年02月24日 17時40分41秒 | 音楽系
さて贋作はなぜ魅力的なのかというこの連載のテーマに戻りますと、それはそのための戦略があるから、ということになると思います。始めから魅力的に作るから、いい?贋作が生まれるのです。

本物は少しとっつきにくいところもあるものです。音楽なら少し構造をシンプルにして、沢山砂糖をまぶして口当たりをよくしたメロディと、あと受けそうなストーリーがあればさらにいい贋作になります。大して意味はなくても大きな音で盛り上がる曲もとてもいいです。古文書であればいろいろ都合のいいことにつながったり今までわからなかった謎が解けた、というのもいいです。絵画なら人気のありそうな画題にしたり、さらには名うての贋作師にやらせたら本物レベルになります。

誰の作品であれ、魅力的であればそれはそれでいいのだと思います。ただいかに魅力的な作品であっても、それだけではなかなか世に知られることにはなりません。真作があっての贋作なのです。

しかしいままで大好きだった作品が贋作だったということがわかったら、とたんに嫌いになったというのも変な話です。それはビッグネームの作だからいいと思っていただけに過ぎないということかも知れません。真作であれ贋作であれ、余計なバイアスをかけず自分の感性でジカにその作品に接するようにしたいものです。