リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

プレリュード・フーガ・アレグロのヘ長調編曲(15)

2022年05月01日 17時06分01秒 | 音楽系
解題その2です。



解題その1で書き忘れましたが、17小節目から18小節目はポジションが一気に5ポジションに飛びます。18小節目の最後の音は開放ですが、バスが残っていますので、ここをスムーズにジャンプするにはある戦略が必要です。

13小節目から続くバスのパターン、同音8分音符3つずつのパターン、のアーティキュレーションを、3つ目(または2つ目と3つ目)の音を少し短く軽く弾くというアーティキュレーションにするといいと思います。このバスを垂れ流しのレガートにするより音楽的でしょうし、なにより18小節目の最後のバス(H)が短くできるのでよりスムーズに18,19小節を繋げることができます。もっともこれでもかなり練習したいとスムーズには繋がらないとは思いますが。あと19小節目の e の音をほんの気持ち長めにするとフレーズの区切りもはっきりしてかつ技術的に多少ゆとりが出ます。

このように技術的な要求と音楽的な要求が合致しているアーティキュレーションを戦略的アーティキュレーション(strategic articulation)と呼びます。(私がそう呼んでいるだけですが(笑))こういった戦略的アーティキュレーションはリュートに精通している人から見ると、「難しいところだからうまい具合に工夫しているな」「なかなかこっすいことやっとるな」という風に映りますが、プロを含めリュートの技術的なことが分からない人には「なかなかいいフレージングだ」としか映りません。もっとも上手に弾いた場合に限りますが。