リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

プレリュード・フーガ・アレグロのヘ長調編曲(16)

2022年05月02日 19時42分06秒 | 音楽系
解題その3

アレグロの後半部の始めの部分です。



41小節目のバスは、楽譜に書き忘れましたが、下線を付けてください。従って出てくる音はオクターブ上になります。

41~44小節のバスははト短調に転調された下降のバスです。この部分はヘ長調編曲にとっては難物です。メロディがハイポジションなので43小節目のEsが出せないのです。開放弦のバスにもEsはありません。従って1オクターブ上げる必要が出てきます。このフレーズさえなければと恨めしく思いますが、致し方ありません。

ここのバスを弾く方法はいくつかの選択が考えられますが、バスのG、F、Es、Dの音列のうちEsだけを素知らぬ顔でオクターブ上げるというのが選択1、F以降をオクターブ上げるというのが選択2、G、Fはオリジナルのままで、それ以降はオクターブ上げると言うのが選択3として、選択2にしてみました。選択2、3は少し凸凹感が際立つ感じがしますが、この部分はまだ検討の余地がありそうです。

45~48小節はその前の4小節のメロディが1オクターブ下がりバスはオクターブ上下しながら下降します。ヘ長調編曲ではこの部分は少し無理をすると演奏可能です。無理をするのは47小節目のバスです。その前の小節終わりの方に(3)と書いてありますが、これは48小節目のメロディの音g(4コース2フレット)の音をここであらかじめ押さえておくという意味です。そうすることによって48小節目のEs(10コースの1フレットを押さえる)が押さえやすくなります。(そうしないと10コースの1フレットの1の指が間に合いません)

41~44小節は妥協を余儀なくされたヘ長調編曲ですが、45~48小節では他の調の編曲ではできないオリジナルのバスの形を実現することが可能になっています。といって技術的にはギリギリのところを行っているので、できればこうはやりたくないというのが正直なところですが。