リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュートの調弦の仕方(10)

2023年09月29日 23時35分03秒 | 音楽系
ガット弦を使っている人へ:

総じて張ったばかりの各メーカーのガット弦はナイロン弦より音程がいいものが多いです。(先述のG社のナイロン弦はとても音程は正確です)でもしばらく使っているとガットの1コース~3コースは音程がすぐに悪くなり音色もへたります。1コースだとケバも出てくるでしょう。その点合成樹脂弦は結構長いあいだ音程・音色の性能を維持できます。
性能の落ちたガット弦でいままで述べてきた方法をためしてみても、うなりをカウントができないし、そもそも調弦がうまくできません。ですから新しいものに交換して安定した状態でないと、先述のフレット位置の決定、日常の調弦はできません。

演奏中にチューナーなしで音程を微調整できないのなら、その前に安定性の高い合成樹脂弦を楽器に張って練習し、調弦の能力を底上げすべきです。

古くなりケバが出ているガット弦を使い音が悪くなっている上に、音が狂っているのを直していない演奏はあなたが描いているリュートの音とはほど遠いものです。ガット弦を使うのなら、チューナーなしで素早く弦を合わせられるようになってからでも遅くはありません。

ケバが出ているようなガット弦は使ってはいけません。ケバのせいで音質は悪い、かつ音程も調弦も狂ったままの演奏は、あなたがかつて合成樹脂弦で演奏していた頃の演奏よりずっとヘタに聞こえています。

ガット弦を使っているリュートだから音程の狂いは少しくらいはまけてほしい、というのはプロでもアマでも考え方として間違っています。大変残念ながら私はアマでもプロでもガット弦を使っての演奏会では皆さん狂いっぱなしでの演奏しか聴いたことがありません。そんなことを許容する日本のリュート界の一部ってレベルが低すぎませんか?そもそも「ガット弦を使用」なんて声高にいう時代はとっくに過ぎ去っています。

といって私はガット弦を使うなといっているわけではありません。ガット弦を使うのなら、よく調整された楽器で(もっともこれはどんな弦を使っていても必要ですが)マメに交換している高音弦を使い、素早く調弦の微調整ができる技術を得た上で、湿度や温度の変化が少ない場所で演奏しなければなりません。これはプロもアマも同じです。そうすればガット弦の良さは大きく発揮できると思います。私としては、ちゃんとした音楽ホールであれば湿度や温度は管理できるはずですので、そのうちリサイタルなんかでガット弦を使ってみようかなと考えなくはありません。