1本の柿の木

2008年06月19日 | 日々のこと
 6月初旬には、柿の花が咲く。OBのお客様のお宅を訪問し玄関横に立つ柿の木を見上げた。この柿の木、家を建てるときの後退線にひっかかった。

 100年以上の古木だ。移植する案も出たが、自信を持って請け負ってくれる植木屋さんもなく本当に建設屋泣かせの木だった。

 お施主様は、絶対伐りたくないと、家族の思い出の詰まった木に強い愛着をしめされていた。後退といっても、ご自身しか使わない道路だから、法の杓子定規さに切ない思いだけが募った。

 長い時間がかかったが、どうしても枯らすことも、伐ることも納得しなかったお施主様の意が通り、そこの部分だけが、後退から残された。

 当時小さく伐り詰められてたが、あれから5年の月日を経て、今日青々とした葉の中に花弁をつけた小さな青い実がなっていた。

 ちょうど外出から帰られたご主人と、伐らなくてよかったですね、と語り合った。この柿の木は、生きてきた分だけ、この家族の歴史と共にあったのだと納得した日だった。
                            依田 美恵子


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