院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

モダンジャズの歴史(3)

2011-04-10 15:02:22 | Weblog
 前回、西欧クラシックは単純で、モダンジャズのほうが複雑だと述べた。でも、それは西欧クラシックの悪口を言ったのではない。誤解を防ぐために補足したい。

 西欧クラシックがアイオリアン(長調)とエオリアン(短調)だけを採用し他を捨てたのは、第一義的には美しさを追求するためだった。この2種類の旋法が当時はもっとも美しいと感じられたからである。

 一方モダンジャズがいろんな旋法を貪欲に採用したのは、必ずしも意識的にではない。黒人たちが勝手に演奏している曲を、音楽の専門家が分析したらそうなっていた、ということが本当のところである。

 モダンジャズが発祥したころは、アメリカ黒人が成功するためには、ミュージシャンになるかボクサーになるしか道がなかったのだ。だから、ハングリー精神で彼らは猛烈に練習した。インパクトを与えられるものは何でも採用した。その結果、旋法は何でもありなったのである。

 西欧クラシックはもともと上流階級のものだった。モーツアルトだってショパンだって、芸術家というより、貴族のお抱え職人みたいなものだった。だから、美しさが優美さが求められた。

 西欧クラシックとモダンジャズは、出自からして対照的だったのである。