Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

お店で売られている日用品――小玉川でのこと(2)

2007年07月04日 | 
 小玉川集落には、歩いて数分のところに、私が知る限りお店が二軒立っている。一軒は、売店を兼ねた食堂であり、もう一軒は商店である。食堂はここしかないので、必ず着いた日はここで昼食をとる。ソバ、ヤマメ料理とどれをとっても旨いし、極めつけは、なんといっても熊の手ソバ10万円である。ちなみにここの主人はマタギであり、また写真家でもある。私たちの着いた前日に山の中で撮影したユリの写真を見せてくれたのだが、それはほんとうに美しいものだった。
 さて、注文した食べ物が来る前、この店に売っている品々を眺めてみる。観光客向けに、山で獲ったハクビシンの襟巻きとか、熊の腰巻きだとか、絶対この店にしかない不思議なモノが売られているすぐ横には、集落の人々のための日用品が並べられている。だいたい集落に二軒しか店がなく、商店は酒と食料品中心であるため、この店は日用品が中心である。二軒の売られているものが競合するなんて、あまり現実的ではない。
 たぶんこの店に置かれているものは、村の人々にとって必要最低限の日用品だと考えてもあながち間違いではないだろう。石鹸、洗剤、電池、文具類、ライター・・・なんだかここに売られているものを買うと、フィールドワークに必要な品物すべてがコンパクトに手に入ってしまうようだ。品数は少ないながら、ある意味、品揃えは完璧なのである。
 さて、私が「あれ?」と思ったのは、「線香」である。今の自分の生活には「線香」といえば香取線香だけだが、仏様に捧げる「線香」がこの数少ない品々の一品であったことは、想像できなかったものだ。日用品として売られる線香の存在は、信仰がこの村の人々にとっていまだ日常であり続けている証だと私は思う。