Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

「おはよう」「いくら?」

2010年09月26日 | 東京
 私の友人H氏のお話。彼は1980年代に初めてバリに行ったとき、朝、小さなロスメン(民宿)で目を覚まして部屋を出ると、ホテルの従業員がはき掃除をしていて、彼に「スラマット・パギ(おはようございます」と挨拶をしてくれたという。その時、彼は一生懸命おぼえたガイドブックの後ろについているインドネシア語の会話の文章を思い出してこう答えたそうだ。
「ブラパ?(いくらですか?)」
 彼は「挨拶」が書かれた頁ではなく、どうも「買い物」に必要な会話の頁を勘違いして、答えてしまったらしい。
 ぼくは、この話を聞くと当然のことながら笑ってしまったが、それにしても冷静に考えてみると、実にシュールな会話ではないか?
 「おはよう」
 「いくら?」
 「おはよう」と声をかけた従業員はいったいこの応答に何を思ったのか。外国人旅行者にありがちな単なる誤解と思ったのだろうか、あるいは、この会話は一見すると間違っているようで、実はそこには深い意図があり、本当は会話として成り立っているのではないかと悩んだのではなかろうか?
 今度、大学で学生が「おはようございます」と声をかけてくれたときに、一度だけ「いくら?」と応答してみようかしら、なんておかしなことを考えてしまったのだった。