Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

萩のこと

2014年04月08日 | 
 先週、山口県の萩に息子と二人で数日滞在した。私は中学生の時に萩を訪れて以来、もう4,5回目の訪問である。最初は幕末史への興味から訪れた萩だったが、その後、その地が母方の祖母の故郷であることを知ると、別な意味で萩が身近な存在になったのだった。
 東京で生まれ、すでに父方、母方の祖父母が両方とも東京にいた私にとっては、いわゆる田舎の風景が広がる絵に書いたような「故郷」がなかった。子どものころは夏休みに田舎に帰る友人たちが無性に羨ましかったし、東京から「旅行」という手段でしか脱出できない自分がなんとなく哀れな気がしたものだ。
 それが、「お墓」という存在とはいえ、歴史の街「萩」の城下町の武家として、自分と血のつながった人々がかつて住んでいたことを知った時は飛び上がるほどの驚きと喜びを感じたものだ。しかも曽祖父は一族の記録を文字にして残していたために、母系とはいえ、その出自を漠然と追いかけることができ、幕末史の中では名のない一武士として毛利家に仕えていたと思うだけで胸が高鳴った。
 僕はそんな出自を正しく息子に正確に話すことはできないが、少なくても自分たちの血の中には長州藩の氏族の血が流れていることを墓の前に立つことで伝えたつもりだ。彼はそれをどのように感じたのかはわからない。口数の決して多くない息子は、そんな萩に来たことをこの桜のトンネルの風景を見たときに初めて口にした。「萩に来てよかった」と。桜は彼に何を語ったのだろうか?もちろん僕はそのことについて何も聞かなかったし、聞くつもりもなかったが…。