いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

被害者感情。(闇サイト裁判) sufferer emotion

2011-04-13 19:30:29 | 日記
 (1)日本の刑法は「報復主義」をとらないから、死には死をもって償うという一様の被害者感情(sufferer emotion)には相容れないこともある。
 判例は社会正義のパラダイム(paradigm)の維持のために、動機、目的、生い立ち、環境、精神性などを多様に織り込んで考慮して、犯罪行為そのものよりはそこに至る「背景」、「環境」社会性の解明に重点を置いて苦心している。
 意思決定の判断基準が「あいまい無味」で、自分で決めれない他人依存性が強く、だから結果責任もとらない、根拠のない被害者意識、被害妄想だけは強いのが近年目立つ幼い社会人像の特徴だ。

 (2)07年に、因果関係もない通りすがりの女性をネット闇サイトで知り合った男3人が残虐な方法で殺害し金品を奪った事件。事件を誘った主犯は死刑が確定(控訴取り下げ)しているこの裁判の他の二人の共同正犯の2審控訴審で、1審死刑判決の容疑者に「無期刑」の減刑判決が出た。
 焦点は、ネットを悪用した安易な模倣性(真似)に対する社会正義のパラダイム(paradigm)からの「厳罰化」の必要性、判断基準だった。
 1審の死刑判決「厳罰化」の意味合い(判決主旨)は、「犯罪抑止力」効果という「報復」的意味合いの強い判決とも言えて、刑法の主旨(報復主義をとらない)からは「理由づけ」に問題はあった。
 いかに自ら望んだとは言え控訴取り下げによる死刑確定と、控訴審の無期刑減刑との比較整合論もある。

 (3)それでは、無期刑減刑の判決理由はどうか。ネットを悪用した「模倣性」については「高いとも言えない」として、「ネット」だけが特に模倣性の高さに問題があるものではない判断を示した。
 そして主犯者の誘いに「安易」に応じた動機、目的の希薄性、それまでの生活歴から矯正可能性もあるとして、1審死刑判決の容疑者に無期刑の減刑判決とした。

 (4)凶悪犯罪を起こしておいて、「その後」反省著しいとか矯正の可能性が高いとかの減刑判断は、事件の「本質性」論からは容易に受け入れがたいものがあるが、今回の判決主旨のひとつ「被害者が1人の事件で、死刑がやむを得ないといえるほど悪質ではない」とした点については、被害者と加害者の生命比較、格差、社会(正義)性から到底受け入れがたいものだ。

 裁判による死刑判決の判断基準に、殺人被害者の「数の多少」が判例基準として存在はする。確かに複数者の生命を同時に奪う行為の凶悪性は無論許し難いものがあるが、「許し難い行為」の基準は人間「ひとり」の生命の重さ「以上」のものでも「以下」のものでもない、人間ひとりひとり誰しも生命、安全が奪われてはならない「普遍的」な哲学に基づくものでなければならない。

 (5)「無期刑」も、考えようによっては苛酷な(犯罪者の処分に苛酷もないが)罰則だ。一生を拘束されて罪の償いの苛酷な日々を生きる残された人生だ。
 ①被害者と加害者の「生命」比較、②その後の「人生」のあるなし、③「ある」とすれば犯行時と現在時の心境の変化と判断、④非報復主義と被害者感情の斟酌(しんしゃく)と、「人」が「人」を裁く矛盾の中の社会正義のパラダイム(paradigm)化だ。

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