いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

司法取引と検挙率。 judical transaction and arrested rate

2014-07-11 20:11:38 | 日記
 (1)刑法犯罪が12年連続で減少を続けている。しかし中身は逮捕、送検が前年同期比較で7.3%減で、検挙率(arrested rate)は0.7%減の30.2%(報道)だ。

 犯罪は減少しているが犯罪の撲滅、抑止力に効果があるといわれる逮捕率が減り、検挙率が3分の1程度ではまことに心もとない現在の警察力の実態だ。
 警察力が異常に強くなるのも自由で闊達、多様な国民生活の享受にとっていいのかの教訓は、日本の戦前の監視社会の歴史で思い知らされている。

 (2)それでも公平、公正な警察、司法力による犯罪検挙率が高くなるのは、犯罪抑止効果にとって有効な手法であることには変わりはない。
 しかし近年の警察、検察は検挙率をあげるばかりのためなのか、証拠デッチ上げや警察間の検挙数のやり取り、証拠不十分のままの誤認逮捕が続き、安全安心社会のパラダイム(paradigm)劣化が問題となっている。

 戦前、戦後の自白偏重捜査による冤(えん)罪は司法問題、社会問題となり、物的証拠主義が叫ばれながら最近は「状況証拠」による起訴まで判例として出てきた。
 犯罪構成要件によっては慎重な「状況証拠」の積み重ね、積み重ねによる犯罪解明も必要な判例もあるが、基本は明確な物的証拠主義での立証でなければならない。

 (3)08年舞鶴市で当時高1女生徒が殺害された事件で、深夜被害者と自転車を引いて歩いていたところが防犯カメラでキャッチされて殺人罪に問われた男性が、そのほかの物的証拠がない中で1審は有罪、2審は無罪にそして最高裁が「状況証拠」の信用性を精査して2審判決を支持して無罪が確定した。

 検挙率をあげるばかりなのか、警察、検察の「状況証拠」だけに頼る安易な捜査手法に警鐘を与えたものだ。近年の情報化時代のネット犯罪では「状況証拠」に頼らざるを得ない社会背景もあるが、特殊な事例でありそれでも「被告人が犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が含まれることを要する」(最高裁判決)ことが重要で、その積み重ね、積み重ねによる特殊な事例での「状況証拠」による立証でなければならない。

 (4)殺人事件などの重罰刑、重要犯罪に対してまで安易に「状況証拠」だけで立証、起訴することなどあってはならないことだ。
 今また司法は「司法取引(judical transaction)」導入を検討している。米国ではすでに麻薬捜査などで活用されているが、別の重要犯罪の情報提供の見返りに当該犯罪構成比較からみてそうすることが社会益になるとの弁明だろうが、検挙率を上げるための安易な捜査手法でありすべての犯罪を許さない安全安心社会のパラダイムに反する不条理(unreasonableness)な行為だ。

 (5)日本では儒教思想に根差した社会正義観、人間相互信頼社会のパラダイムが根付いており、司法取引が日本の人間性社会にふさわしいのか、また司法取引に逃げる冤罪助長も懸念されている。

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