サブカルチャーマシンガン

自分だけの「好き」を貫く為のブログ。

君だけを愛す 牛野缶詰「家桜」 感想(快楽天2017年6月号)

2017-06-03 | 快楽天
                                             
                                             美しい。













人間、殊勝な気持ちだけでは生きてはいけないものだ
それが「正しい事ではない」と頭では分かっていても、どうしても許せない瞬間が多々ある
先生は、ベストセラー作家である事のプレッシャーや責められる圧力から逃れる為に奥さんをもらい、
田舎にまで引っ越して平静を保とうとしたのだと思う
だからこそ、自分には見せない表情を見せて
手作りのお菓子まで作って微笑むかのこの相様に怒りを覚えたのだと想像した

その姿は「大人」とは程遠いものだし、
ハッキリ言って醜いものだとも思う
だけど、
物語の登場人物は大体殊勝でストイックでポジティブである事を義務付けられてる(?)なか
自分の感情や負い目を抑えきれずに暴れて叫んで必死に愛を求める姿はぶっちゃけ人間くさいな、とも思った
自分のご飯は遅れて起きてもまだ出来てないレベルなのに、筒井にはあらかじめ手間暇の籠ったお菓子を用意していた
そんな事実に彼のプライドが刺激され、激昂を呼び起こしてしまったのでしょう
それはある種のわがまま、
だけど、
先生の表情を見ていると自分から離れるのが不安で不安で仕方がない
愛してもらってる実感が欲しくてたまらない気持ちがストレートに伝わって来ます
それは逆説的にかのこを求め過ぎている狂気にも似た愛だともいえる
そんな相様に読んでて心を揺さぶられた・・・というか、
泣く一歩手前まで来てしまったのが本音でした





だけど、
かのこはかのこで決して怠けていたわけじゃない
朝早くから畑仕事をして、「流石先生の奥さんだ」って思われたくて努力をして、
時には先生の望む官能的な行為をしてあげる為に夜の勉強も頑張って・・・
誰よりも尽くしてくれている健気な女性だ
しかし、
そういう想いを伝えるのがある種下手な女の子でもあると思う
同時に先生にそんな水面下の気づかいを察せる心の余裕がなかった。とも言える
かのこも完璧な人間じゃないから、ときには疲れてうとうとして作業が遅れる事だってある
だけど、先生の為を想ってちゃんと努力している事は何があっても変わらない事実なのだ
先生は、自分に自信がないからこそあんな風に取り乱してしまったのかもしれない
でも、正しい人間が正しい事をする「だけ」の話はややリアリティに欠ける
先生は先生で愛されてる確証がブレてしまって不安になってしまっただけ
本当の想いを曝け出したら、
かのこの本音をきちんと受け取ってくれて謝ってくれて熱く抱きしめてくれた
パッと見やや歪でとてもきれいだとは言えない二人だけど、
歪でもきれいじゃなくても、彼らは生きている
血の通ったキャラとして成り立っている
愛されなくちゃ気が狂ってしまう不安定な男と、
そんな最愛の人を不器用ながら健気に支える女・・・
そこには本作だけのドラマがあり、正直下手な恋愛漫画よりも感情移入出来る作品だったと感じる
そんなかのこが頑張って「スケベな女」を演じているセックスのシーンは正直言ってヤバかったですね
元々のキュートさと清楚なルックスとのギャップが凄すぎて実直にお世話になってしまいました





それにしてもこの牛野缶詰さんって人はデビューしたばっかの方ですよね・・・
ぶっちゃけ洗練された絵柄、全体の趣ある雰囲気、キャラクター作りのセンス含めて
ベテラン感すら漂ってるくらいに超強力な新人が現れたなあ、、、と思いました
冒頭で引用したカットとか、
最初見た時あまりにも美しくて可愛くてハッとしましたもん
非常に快楽天らしい濃ゆいセックス描写とそれだけでは済まない趣ある作家性を感じさせる演出力が素晴らしい
絵柄もまた個性的で独特な目の描き方といいちらっと見ただけでも「あっ、あの人だ。」って思える記名性があるんですよね
それでいて先述のような「人間」を色濃く感じさせる作劇の妙、、、とまた無視出来ないレベルの新星が現れましたね
これは先月号に掲載されている作品ですが、クオリティのハイレベルさは抜きん出たものがあったので
今更ですが期待と想いを込めて感想をUPさせて頂きました。大好きな作品です。

最後もお昼遅れてましたが、
これはまあ、先生とのエッチにハマっている証拠、、、って事で、
ここは一つ(笑)。