ひびレビ

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相棒16 第4話「ケンちゃん」

2017-11-09 08:19:41 | 相棒シリーズ
相棒16 第4話「ケンちゃん」

 冠城がたまに行くコンビニの店員、ケンちゃんこと森山健次郎。彼は冠城が忘れたカードの裏面を見て「光っている」と口にしていたが、冠城がその真相を確かめる前に彼は何者かに殺されてしまった。
 調査に乗り出した右京と冠城は、健次郎の手に「中」に似た文字が書かれていることに気がつく。その文字を手がかりにしつつ、特命係は健次郎の兄・真一郎や、健次郎と偶然知り合い親しくしていた中井、バイト先であった印刷工場、そして大学教授の中垣や講師の服部、そしてかつて健次郎が衝突した窃盗犯・宍戸のもとを訪れる。

 その中で、勉強が苦手で早くから働きに出ていたはずの健次郎が、数学の分野において類稀なる才能を発揮していたことが明らかとなり、健次郎は宍戸と衝突した際にサヴァン症候群になったと右京は推測する。
 右京は健次郎のノートに掲載されていた数学の問題を1つを除いて解答し「解けないからこそ、事件の謎が解けたんです」と、再び中垣らのもとへと向かう。

 健次郎のノートに掲載されていたのは大学の入試問題だった。普通ならば盗み出すことは出来ないが、問題を一瞬にして記憶できる健次郎ならば話は別。真一郎は不正入学のブローカーを名乗る者から弟の能力を教えられ、会社を立て直すべく健次郎に問題を盗み出すよう強要したが、健次郎は問題を兄に渡すことはしなかった。
 それを良しとしなかったのが、健次郎殺害の真犯人・服部。彼は自分の才能を認めない大学を恨み、健次郎を利用して不正入学を行おうとしていたのだ。「大好きなお兄さんが、犯罪者になってもいいのか」服部は事件当夜、そう言って健次郎を脅し問題を書き写させるところまでは成功したものの、一部の問題がおかしい点に気づけず、その説明を始める健次郎を見て「自分を凡人だと嘲笑った」と考え殺害したという。

 真犯人は捕まったが、冠城には分からないことがあった。真一郎の会社は不正入学の計画が始まったあたりで経営を立て直していたのに、何故計画を続行したのか。すると真一郎は「あいつを・・・認めたくなかった」と、「優秀な兄」の地位が脅かされ、今度は自分が見下されることを恐れ犯罪に手を染めさせようとしていた心情を吐露する。
 それを知った右京は「兄弟というものは時として、本人たちにしか分からない複雑な感情をもたらすものなのかもしれません。しかし、あなたのそんな思いが弟さんが命を落とすきっかけを作りました。その罪を、あなたは一生背負っていかなければなりませんね。お分かりでしょうが」と告げるのだった。

 事件解決後、健次郎が殺害された現場には、沢山の人に愛されていたことを示すように多くの花が手向けられていたのだった・・・


感想
 突然特殊な能力に目覚めた弟と、それを良く思わなかった兄のすれ違いの話。

 サヴァンになったことにより、素数が光って見えたり、数学の問題を一瞬にして記憶・解答する才能に目覚めた森山健次郎。明るく優しい好青年であり、偶然知り合った中井小百合に告白を断られてもなお、それまでと変わらず接しようとしていたようで。モグリとはいえ大学の授業を聞くほど数学に興味を示し、大学教授も認めるほどの才能を発揮。研究者になることによって、これまで迷惑をかけてきた兄に恩返しをしようと思った、兄に喜んでもらいたかった・・・そんな思いもあったことでしょう。

 けれども兄は違い、「何も出来ない弟の面倒を見る優秀な兄」という地位が脅かされることを何よりも恐れていました。家族であれば、兄であれば喜ぶのが当然ではあるものの、喜びの反面羨ましく思う気持ちならば理解できます。年が近いと一番良く遊ぶ相手でもありましたし、対戦ゲームでも勝ったり負けたりしましたから、ある意味では一番身近なライバルといえなくもないかと。
 私に出来なくて弟に出来ることもありますが、それは弟の努力の結果ですし、反対に弟に出来なくて私に出来ることも・・・あるよなぁ・・・ほら、ポケモン図鑑完成とか!・・・うーん(汗。
 
 それはそれとして、確かに兄が会社を倒産させてしまった場合は「会社を倒産させた兄と、大学の研究者である弟」というように社会的な立場は逆転して見えるかもしれません。ですが、結局会社は持ち直したわけですから、「優秀な兄」が「優秀な兄弟」になるだけのはずです。それすらも良しとせず、見下されるのを恐れて弟を陥れ、弟が好意を寄せていた人物すらも奪い取る・・・何ともひどい話です。最後に中井小百合は森山兄弟が映った写真を見ていましたが、あれはどちらに視線を向けていたんでしょう。

 カードを忘れた冠城のためにわざわざ店から走って渡しに行く、偶然出会っただけの中井のためにキーホルダーを捜し続ける、兄に喜んでもらおうと思って研究者の道も目指し始める・・・健次郎は誰かのためを思って行動できる好青年でした。
 一方今回の犯人たちはみな自分のことしか考えていませんでした。服部は「神童」と呼ばれもてはやされていたことが災いしたのか、はたまたその地位にあぐらをかいて何もしようとしなかったのか、同い年の連中が准教授になっているのに自分だけ講師のままだったことに納得いかず、不正入学によって大学の評判を貶めようとしていました。そういったことをしようと考えるからこそ、他の人と差をつけられたと理解できないんですかね・・・大学側は服部の人間性を見抜いていたのでしょう。
 兄・真一郎は言わずもがな。弟を育てていたとはいえ、実際は「弟の面倒を見る優秀な兄」という自分の立場を確固たるものにしようと動いていただけなのかもしれません。

 一番近くにいた兄でありながらも弟の魅力に気づかず、才能を認めようとしなかった。最後にケンちゃんに手向けられていた多くの花は、血の繋がりの無い多くの人の方がケンちゃんの魅力に気づいていた証でしょう。何とも皮肉な話です。


 次回は警察学校での事件。またか。でも米沢さん登場!
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