市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

住民にとってはデメリットしかないマイナンバー制度のメリットを享受する官業癒着体質が露呈

2015-10-16 22:42:00 | 他の自治体等の横領事件とタゴ51億円事件
■来年2016年1月からスタートするマイナンバー制度ですが、それに先立ち2015年10月5日から各住民に割り当てられた番号の配布が始まったようですが、51億円横領事件で103年ローンを支払い中の安中市からは、現時点ではまだ通知カードは送られて来ていません。これまで住基ネットで巨額の血税を浪費した上に、さらに多大な血税が投入され、ますます行政と関係業者との間の癒着による税金の無駄遣いが懸念されていましたが、案の定、とんでもない事件が発生しました。事件の舞台が、厚生労働省というのも象徴的です。

**********産経2015年10月13日 13:31
「マイナンバー」システムで収賄容疑 厚労省室長補佐を逮捕へ 警視庁

警視庁に出頭する厚労省情報政策担当参事官室の中安一幸室長補佐=13日、さいたま市(橋本昌宗撮影)
 国民一人一人に12桁の番号を割り当てる「税と社会保障の共通番号(マイナンバー)制度」導入に絡むシステム契約を受注できるよう便宜を図った見返りに、現金を受け取った疑いが強まったとして、警視庁捜査2課が13日、収賄容疑で、厚生労働省情報政策担当参事官室の40代の室長補佐から事情聴取を始めたことが捜査関係者への取材で分かった。容疑が固まり次第、逮捕する。
 捜査関係者によると、室長補佐は平成23年秋、マイナンバー制度の導入に絡むシステムの契約を受注できるようIT関連業者に便宜を図った見返りに、現金約100万円を受け取った疑いが持たれている。
 関係者によると、室長補佐は3年に厚生省(当時)に入省し、医療・社会保障分野の情報化を推進。マイナンバー関連のシステム構築にも関与し、24年からは厚労省の情報政策を統括する情報政策担当参事官室に所属している。
 室長補佐は日本医療情報学会に所属し、国立大客員准教授も務めるなど、医療関係者やIT業者にも幅広い人脈がある。捜査2課は、室長補佐が情報政策に影響力がある立場を悪用して業者に便宜を図ったとみている。
 マイナンバーの導入には、政府側、民間側ともに大規模な情報システムの改築や、新規システムの立ち上げが必要とされる。1兆円規模の市場になるとの見方もあり、IT関連業者による受注合戦が繰り広げられている。
 マイナンバー制度は23年6月に民主党政権が「社会保障・税番号大綱」を決定し、25年5月、マイナンバー法が成立。今年9月には預金口座への適用などマイナンバーの活用方法をより詳細に定めた改正マイナンバー法が成立し、来年1月から運用が始まる。

**********産経2015年10月13日 13:44
「マイナンバー」システムで収賄容疑 厚労省室長補佐を逮捕 警視庁

厚労省情報政策担参事官室の中安一幸室長補佐=13日午前、さいたま市大宮区(早坂洋祐撮影)
 国民一人一人に12桁の番号を割り当てる「税と社会保障の共通番号(マイナンバー)制度」導入に絡むシステム契約を受注できるよう便宜を図った見返りに、現金を受け取ったとして、警視庁捜査2課は13日、収賄容疑で、厚生労働省情報政策担当参事官室室長補佐、中安一幸容疑者(45)を逮捕した。
 捜査2課の調べによると、中安容疑者は平成23年秋、マイナンバー制度の導入に絡むシステムの契約を受注できるようIT関連業者に便宜を図った見返りとして、現金約100万円を受け取った疑いが持たれている。
 関係者によると、中安容疑者は3年に厚生省(当時)に入省し、医療・社会保障分野の情報化を推進。マイナンバー関連のシステム構築にも関与し、24年からは厚労省の情報政策を統括する情報政策担当参事官室に所属している。
 中安容疑者は日本医療情報学会に所属しており、国立大客員准教授も務めるなど、医療関係者やIT業者にも幅広い人脈を持っている。捜査2課は、中安容疑者が情報政策に影響力がある立場を悪用して業者側に便宜を図ったとみている。
マイナンバーの導入には、政府側、民間側ともに大規模な情報システムの改築や、新規システムの立ち上げが必要とされる。1兆円規模の市場になるとの見方もあり、IT関連業者による受注合戦が繰り広げられている。
 マイナンバー制度は23年6月に民主党政権が「社会保障・税番号大綱」を決定し、25年5月、マイナンバー法が成立。今年9月には預金口座への適用などマイナンバーの活用方法をより詳細に定めた改正マイナンバー法が成立し、来年1月から運用が始まる。

**********毎日新聞 2015年10月13日 13時49分(最終更新 10月13日 18時20分)
収賄容疑:厚労省室長補佐を逮捕 マイナンバー関連で便宜
 国民一人一人に番号を割り当てるマイナンバー制度に関連した事業の受注に便宜を図る見返りに現金を受け取ったとして、警視庁捜査2課は13日、収賄容疑で厚生労働省情報政策担当参事官室長補佐の中安一幸容疑者(45)を逮捕した。現金を渡したとみられる東京都内の経営コンサルタント会社の70代の男性役員については、贈賄罪の公訴時効(3年)が成立している。【宮崎隆、黒川晋史】
 捜査関係者によると、室長補佐は、将来的なマイナンバー制度導入に備えた社会保障分野でのシステム構築事業について厚労省が2011年10月に公募した企画競争で、コンサルタント会社側に便宜を図り、現金100万円前後を受け取った疑いが持たれている。事業はコンサルタント会社が受注し、11年11月に約7400万円で契約を結んだ。
 企画競争は、受注希望業者の提出した企画書を審査し、事業の委託先を決める入札の方式。一般的には、委託元が契約額などを事前に明示し、それに応じて受注希望業者が企画書を作る。
 関係者によると、室長補佐は1991年に旧厚生省に入省し、現在は情報政策担当参事官室で社会保障分野の情報化やマイナンバー制度に関する施策を担当。国立大学の客員准教授や日本医療情報学会の評議員も務め、医療分野での情報化を推進する立場で各地のシンポジウムにも出席していた。
 民間信用調査会社などによると、コンサルタント会社は90年に設立され、厚労省の他にも、経済産業省や総務省などの公共事業でコンサルタント業務などを受注している。厚労省の事業では09年1月〜15年6月に少なくとも6件を受注。受注総額は計13億円を超えている。
 ◇厚労省、汚職止まらず
 マイナンバー制度導入に備えたシステム構築事業の発注を巡り、警視庁が厚生労働省職員の捜査に乗り出したが、同省や外局の旧社会保険庁などでは職員による汚職事件が過去にもたびたび摘発されてきた。
 東京地検特捜部は89年、「リクルート事件」で未公開株を譲り受けたとして、元労働省(当時)事務次官を収賄容疑で逮捕。警視庁捜査2課は96年、特養ホーム建設の補助金交付に便宜を図った見返りに現金を受け取ったとして、元厚生省(同)事務次官を収賄容疑で逮捕した。
 中央省庁の再編で厚労省となった01年以降では、雇用対策助成金の申請を巡り、元愛知労働局の課長補佐が03年にあっせん収賄容疑で愛知県警に逮捕された。翌04年には、兵庫労働局の物品納入を巡り、神戸公共職業安定所の雇用指導官が収賄容疑で兵庫県警に逮捕された。
 09年に廃止された旧社会保険庁では、テレビCM発注を巡る収賄容疑で石川社会保険事務局元課長を逮捕(04年6月)▽保険料徴収に使う機器発注を巡る収賄容疑で社保庁課長を逮捕(同年9月)▽歯科医への診療報酬を巡る収賄容疑で社保庁指導医療官を逮捕(07年5月)--と事件が相次ぎ、批判を浴びた。
 10年9月には、眼科診療所への指導・監査を巡る収賄容疑で厚労省課長補佐が逮捕された。同年12月には、年金給付手続きを教えた見返りに女性から謝礼を受け取ったとして、厚労省所管の特殊法人・日本年金機構職員が収賄容疑で逮捕された。【黒川晋史】

**********読売2015年10月13日 14時32分
マイナンバー巡り収賄容疑、厚労省室長補佐逮捕

 今月5日に始まった共通番号(マイナンバー)制度を巡り、厚生労働省の室長補佐が、システム関連業務を受注したIT関連会社に便宜を図った見返りに現金を受け取っていた疑いが強まり、警視庁は13日、収賄容疑で室長補佐を逮捕した。
 贈賄側のIT関連会社はマイナンバー導入が決まった2011年以降、少なくとも5件、総額約12億円の業務を同省から受注していた。同庁は癒着の実態を調べる。
 逮捕されたのは、厚労省でITシステムの発注などを担当する政策統括官付情報政策担当参事官室の室長補佐の中安一幸容疑者(45)。
 捜査関係者によると、中安容疑者は11年秋、年金や医療など社会保障分野の番号制度(現在のマイナンバー)のシステム整備に関する2事業を東京都内のIT関連会社が受注できるよう便宜を図った見返りに、同社社長(当時)から現金約100万円を受け取った疑いが持たれている。

***********日テレニュース2015年10月14日 12:07
室長補佐“仕様書原案”贈賄側に作成させる
 マイナンバー制度に関連する贈収賄事件で、厚生労働省の室長補佐の男が、入札予定のシステムについて、厚労省で作成すべき「仕様書」の原案を、贈賄側のIT会社に作成させる便宜を図っていたことが分かった。
 警視庁は14日朝から、厚生労働省の家宅捜索を行っている。
 捜査関係者への取材で、14日朝に送検された厚労省の室長補佐・中安一幸容疑者(45)が、入札予定のシステムについて、厚労省で作成すべき発注の要望などを記載した「仕様書」の原案を、贈賄側のIT会社に作成させていたことが分かった。
 警視庁は、仕様書を作らせることで、入札で高い評価が得られる便宜を図ったとみている。
 厚労省によると、贈賄側の会社は今年度までに、逮捕容疑の2つを含む6つの事業で総額14億円以上を受注していた。
 逮捕容疑について、中安容疑者は自ら賄賂を要求した趣旨の供述をし、贈賄側の会社も同様の供述をしているという。

**********東京新聞2015年10月14日朝刊
マイナンバーで癒着 厚労省室長補佐を逮捕 100万円収賄容疑

 住民一人一人に番号を割り当てる「マイナンバー制度」に絡み、厚生労働省発注の関連事業を受注した業者に便宜を図り、その見返りに百万円を受け取ったとして警視庁は十三日、収賄の疑いで、同省情報政策担当参事官室の室長補佐、中安一幸(かずゆき)容疑者(45)=さいたま市大宮区=を逮捕した。中安容疑者は、来年一月に利用が始まる制度のシステム構築に準備段階から関わっていた。国のシステムそのものへの信頼が大きく問われることになりそうだ。
 逮捕容疑では、二〇一一年十月、マイナンバー制度の準備段階として厚労省が発注した事業の入札で、東京都千代田区のIT関連会社に有利な取り計らいをした見返りに、同年十一月上旬、同社の前社長から一度に百万円を受け取ったとされる。
 捜査二課によると、中安容疑者は容疑を認めており、自ら賄賂を要求したとみられる。現金を手渡したとされる前社長は贈賄罪の公訴時効(三年)が成立している。
 この事業は、マイナンバー制度を導入する前段階で、年金や健康保険などの社会保障制度の情報連携を推進するためのシステム設計と、そのシミュレーションを行う内容だった。
 入札は、計六社の参加業者の計画書が省側の仕様書にいかに沿っているかを点数で評価する「企画競争入札」で行われた。
 中安容疑者は贈賄側業者だけに、本来国が作るべき仕様書の原案をひそかに作らせる便宜を図り、業者は原案に基づく計画書を提出し、高評価を得て契約が決まった。
 業者は、システム設計が約一億四千万円、シミュレーションが約七千万円の計約二億一千万円で受注した。
 中安容疑者の逮捕を受け、同省の田中誠二人事課長は会見し「事実であれば極めて遺憾な事態。国民の皆さまに深くおわびします」と謝罪した。
<マイナンバー制度> 赤ちゃんからお年寄りまで国内に住民票がある人に12桁の番号を割り当て、税と社会保障、災害関連などの行政事務を効率化する制度。社会保障関係の申請の際には住民票が不要になるなど、手続きが簡素化されるメリットがある一方、住民への監視強化や個人情報流出を懸念する声もある。

★マイナンバー発送開始直後 揺らぐ信頼 情報政策の第一人者
 「マイナンバー制度には多大な税金が投入され、一部業者と行政側との癒着につながる構造があり、心配だった。収賄容疑が事実なら行政側がマイナンバーを利権にしており、制度そのものへの不信感を持たざるを得ない」
 今月五日、マイナンバーの番号を知らせる「通知カード」の発送が始まった直後に発覚した今回の汚職事件。市民団体「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎さん(54)=横浜市南区=は取材に語気を強めた。
 厚生労働省によると、収賄容疑で逮捕された中安容疑者は兵庫県の高校を卒業後、一九九一年に国立療養所(現国立病院機構)兵庫中央病院の事務職に就職。二〇〇五年以降は厚労省の情報政策部門に籍を置き、情報技術(IT)に詳しい人材と評価されていた。三つの大学で無報酬の非常勤講師も兼務し、昨年度は週の半分足らずしか厚労省に出勤していなかったという。
 マイナンバー法が成立した一三年五月の二カ月前には、複数の大学でつくる研究会の場でマイナンバー制度について「社会保障給付の申請、届け出などの負担が軽くなる」などとメリットを強調するなど、学会や専門家の研修会などでたびたび講演していた。
 今回の事件とは無関係のIT関連会社「ハミングヘッズ」(東京都中央区)のインタビューでも、国が国民一人一人の年金や健康保険などの社会保障費を一括管理する重要性を強調し、ホームページ(HP)で紹介されていた。
 中安容疑者を知る東海地方の大学病院の関係者は「この分野では第一人者。法律も分かっていて政策を知っている。民間を指導する能力もあった」と話す。
 国民らを番号で管理するシステム構築の準備が、専門的な知識を持つ一部の役人に委ねられ、そこにまた専門性を売り物にする業者が金を渡した上で進められてきたとされる闇は深い。中安容疑者は本体システムづくりにも深く携わってきた。
 ジャーナリストの大谷昭宏さんは「マイナンバー制度で国民は何の利益も得られず、企業も番号管理に悩んでいる。(容疑が事実なら)国民に負担を強いておきながら、国が利便性を得て役人が金をもらったり、新しい仕事ができたりするという、この国の政策の姿が図らずも露呈した」と指摘している。

**********産経2015年10月14日14:00
【マイナンバー汚職】医療&ITに精通した「異能のノンキャリ」 派手なブランド服で身を固め…
 
警視庁に出頭する厚労省情報政策担当参事官室の中安一幸室長補佐=13日、さいたま市(橋本昌宗撮影)
 収賄容疑で逮捕された中安一幸容疑者は、ノンキャリアながら民間の医療関係者やIT関係者に太いパイプを持ち、その服装や言動などから「異能の官僚」とも呼ばれた。
 13日朝、ウエーブのかかった髪に鼻まで下がった眼鏡。白いジャケットで警視庁に出頭する中安容疑者の姿は、およそ一般的な官僚のイメージとはかけはなれた姿だった。
 中安容疑者は高校卒業後の平成3年、国立病院の事務官として採用され、17年に係長として厚生労働省の本省に転任。19年以降は部署間を大きく異動することはなく、システムの導入や企画立案を担当した。医療分野のIT化の旗振り役として、政府の医療情報政策を主導してきた。
 「情報を電子化することで将来の医療の質は間違いなく高まるはず」。雑誌のインタビューにもこう持論を展開した。大学の客員准教授を務めるほか、贈賄側のIT関連会社なども入っていた産官学による研究団体にも所属していた。
 中安容疑者と一緒にシンポジウムのパネリストを務めたことがあるIT業界の関係者は「自分の考えを持って明快に説明していくことから業界内にファンも多かった」と振り返り、「厚労省の中でも医療とITに関する一番の専門家と聞いていたが、まさかこんなことになるとは」と話す。
 だが、省内では別の側面も見せていたようだ。
 ある厚労省職員は、中安容疑者がワインレッドのシャツに黒のネクタイ、くるぶしまでの長いトレンチコートと高級ブランドで身を固めた姿で省内を歩いていたことを覚えている。「金回りがいい人だな」。この職員はそう感じたという。
 「外にもパイプがあるので、いつでも役所は辞められる」「自分に近い国会議員もたくさんいるし、人脈は持っている」。同省の中堅官僚によると、中安容疑者は口癖のように周囲にそう吹聴。「勉強家だが、野心家でもあった」と振り返る。
 情報技術にも詳しく、マイナンバー制度に消極的な上司に対しても、積極活用を強く主張していた中安容疑者。一緒に数回、仕事をしたことがあるという厚労省職員は「能力が高く、代わりの人材がいないからずっと同じ部署に置かれていたのだろう。上司も彼があまりにベテランで、逆らえない雰囲気があったのではないか」と推測している。

**********読売2015年10月14日 14時31分
マイナンバー汚職、タクシー券も百万円超受領か
 共通番号(マイナンバー)制度を巡る贈収賄事件で、厚生労働省情報政策担当参事官室室長補佐の中安一幸容疑者(45)(収賄容疑で逮捕)が、贈賄側のIT関連会社「日本システムサイエンス」(東京都千代田区)側から現金だけでなく、少なくとも百数十万円分に上るタクシー券も受け取っていたことが、捜査関係者への取材でわかった。
 現金やタクシー券の授受を繰り返す過程で癒着を深めていったとみられ、警視庁で詳しい経緯を調べている。
 同庁は14日朝、容疑を裏付けるため、東京・霞が関の厚生労働省に捜索に入った。
 捜査関係者によると、中安容疑者とシステムサイエンス社の元社長は約10年前に仕事を通じて知り合った。その後の2007年4月、中安容疑者はIT分野を担当する同省社会保障担当参事官室に配属されたが、この頃からタクシー券をもらうようになったという。

**********読売2015年10月14日 15時34分
厚労省ITの「頭脳」捜索…マイナンバー汚職

厚労省に捜索に入る警視庁の捜査員(14日午前、東京・霞が関で)=三浦邦彦撮影
 共通番号(マイナンバー)制度を巡る贈収賄事件の舞台となった厚生労働省に14日朝、警視庁の捜索が入った。
 収賄容疑で逮捕された同省情報政策担当参事官室室長補佐・中安一幸容疑者(45)が勤務していた同室は、省内のIT分野を取り仕切る「頭脳」。この日、室内は立ち入りが禁止され、緊迫した雰囲気に包まれた。
 捜索が行われたのは、同室などがある東京・霞が関の合同庁舎11~12階。午前8時半頃、警視庁の捜査員約20人が省内に入ると、周囲は防火戸で閉め切られ、出勤してきたばかりの同省職員らが遠巻きに様子を見つめた。
 同省によると、贈賄側のIT関連会社「日本システムサイエンス」(東京都千代田区)は2008~15年度にマイナンバー制度関連の6事業(計約14億4700万円)を受注。いずれも中安容疑者が所属する部署が発注を担当した。

**********日刊ゲンダイ2015年10月15日
マイナンバー収賄で逮捕 厚労省ノンキャリ室長補佐の“素性”

こんな状態でスタートさせて大丈夫なのか?(C)日刊ゲンダイ
 マイナンバー制度をめぐる汚職事件で、収賄容疑で逮捕された厚労省情報政策担当参事官室室長補佐、中安一幸容疑者(45)。都内のITコンサル会社に入札で便宜を図った見返りに賄賂を要求、受け取った額は2011年から計数百万円に上るとみられている。
 中安容疑者は兵庫県出身。高校を卒業後、1991年に神戸市にある国立病院の事務官として採用された“ノンキャリ”だが、現在は各地で講演もしたり、北大大学院の客員准教授も務めていた。
「主に医療情報のIT化に携わり、05年に本省の係長に就任。“ITのプロ”として省内でも一目置かれ、医療関係者やIT業者など省外にも顔が広かった。高飛車な性格で、ワインレッドのシャツにごつい指輪をはめ、省内を闊歩。上司も何も言えなかったそうです。12年からマイナンバー制度のシステム構築に関わっていました」(厚労省関係者)
 贈賄側のコンサル会社社長は、そんな中安容疑者の人脈のひとりで、5年ほど前から付き合いがあった。
「贈賄についてはすでに時効ですが、コンサル会社は09年1月から今年6月までに6件、総額14億4700万円を厚労省から受注していました。昨年の売り上げが2億4000万円の会社ですから、中安サマサマでしょう。厚労省以外に経産省、総務省、内閣府とも“取引”していただけに、問題が“飛び火”する可能性もあります」(捜査事情通)
 中安容疑者の自宅はJR大宮駅から車で10分ほど。敷地面積約40坪の一戸建てで、近隣住民によると、中安容疑者はバツイチ、いまは再婚した妻と3歳の娘の3人暮らしだった。
「引っ越してきたのは十数年前ですが、3、4年前から髪を伸ばして後ろで束ね、ヒッピーみたいな派手な服装をするようになった。てっきりホストだと思っていました。まさか官僚とはねえ」(近隣住民)
 中安容疑者はワイロとして受け取ったカネをカードやローンの支払いなどに充てていたようだ。
 厚労省は昨13日の会見で「(中安容疑者は)マイナンバーの具体的なシステム設計をしているわけではなかった」などと、事件による制度への影響を否定したが、とてもうのみにはできない。
「個人情報を暗号化する優れた技術があっても、“ヒューマンエラー”があれば流出は防ぎようがない。マイナンバー制度にも“穴”があることを行政側が自ら“証明”してしまったような事件です」(ITジャーナリスト・井上トシユキ氏)
 のっけからグダグダで大丈夫なのか?

**********東京新聞2015年10月14日夕刊~15日朝刊
さらに数百万円受領か マイナンバー収賄容疑の厚労省職員
100万円超タクシー券も

マイナンバー制度導入に絡む汚職事件で、家宅捜索のため厚労省に入る捜査員ら=14日午前8時32分
 住民一人一人に番号を割り当てる「マイナンバー制度」の導入に絡んで厚生労働省が発注した関連事業をめぐる汚職事件で、収賄容疑で逮捕された厚労省室長補佐、中安一幸容疑者(45)が、贈賄側のIT関連会社(東京都千代田区、時効成立)から逮捕容疑となった百万円以外にも数百万円を受け取った疑いがあることが捜査関係者への取材で分かった。警視庁は、賄賂にあたるかどうか捜査を進めている。
 さらに、中安容疑者が二〇一〇年以降、百枚以上のタクシーチケットを贈賄側から受け取っていたことも判明した。
 利用したタクシーチケットの総額は少なくとも百数十万円に上り、警視庁は中安容疑者が都内から、さいたま市大宮区の自宅に帰る際、頻繁に利用していたとみている。同庁は十四日、同省を捜索し、中安容疑者を送検した。
 中安容疑者の逮捕容疑では、二〇一一年十月、マイナンバー制度の準備段階として同省が発注した二事業の入札で、同社に有利な取り計らいをした見返りに、同社前社長から百万円を受け取ったとされる。
 捜査関係者によると、中安容疑者は容疑を認めており、受け取った金を家のローンや月々のカード支払いなどに充てていたという。
 中安容疑者の逮捕容疑では、一一年十月、マイナンバー制度の準備段階として厚労省が発注した二事業の入札で、IT関連会社に有利な取り計らいをした見返りに、同社の前社長から百万円を受け取ったとされる。
 同社がマイナンバーの導入が決まった二〇一一年以降、一二年八月~今年六月、三件の関連事業を約十億一千万円で受注しており、これらを含め、少なくとも厚労省発注の五件の業務を総額約十二億二千万円で受注していた。逮捕容疑を含めたこの五件の事業は中安容疑者が統轄していた。
 五件の入札は、参加業者の計画書が厚労省の仕様書にいかに沿っているかを点数で評価する「企画競争入札」で行われた。
 本来仕様書は、本来、厚労省側が作成して業者に提示するが、汚職の舞台となった一一年の二事業では、中安容疑者が贈賄側業者にひそかに仕様書を作成させた上で、贈賄側業者がそれに沿った計画書を提出し、入札を有利に進めたとされる。警視庁はほかの三件の入札の経緯についても調べている。
 日本システムサイエンスの担当者は本誌の電話取材に「一切答えられない」と話している。
 信用調査会社によると、贈賄側の同社は一九九〇年設立で社員十五人、資本金三千万円。取引先は厚労省のほか、経済産業省などの官公庁に特化していた。
★業者の契約解除検討
 厚生労働省発注のマイナンバー関連事業をめぐる汚職事件で、同省が、事件に関わったとされる「日本システムサイエンス」が今年六月に受注した約六億円の関連事業について、契約解除を検討していることが分かった。同省幹部が十四日、民主党に説明した。
 この事業はマイナンバー制度導入後のシステム改修に関する研究で、来年度までの二年間で行われる予定だった。
 また同社は二〇一一年以降、中安一幸容疑者が所属する部署が発注した五件の事業を総額約十二億二千万円で受注していたが、それ以前の〇八、〇九年にも二件受注していたことが判明。中安容疑者が所属する部署が発注した事業を計七件、総額約十五億円で受注していたことになる。

**********NHK NEWS Web 2015年10月15日 17時40分
厚労省汚職 ほかに数百万円受け取ったか

 マイナンバー制度の導入に向けた厚生労働省のシステム設計などの業務を巡る汚職事件で、収賄の疑いで逮捕された室長補佐が、贈賄側の会社からほかにも現金数百万円を受け取っていた疑いがあることが警視庁への取材で分かりました。警視庁は、現金の趣旨について慎重に調べるとともに、いきさつを捜査しています。
 この事件は、厚生労働省情報政策担当参事官室の室長補佐、中安一幸容疑者(45)が、平成23年、マイナンバー制度の導入に向けた医療分野のシステム設計などの業務を巡り、都内の情報関連会社に便宜を図った見返りに、現金100万円を受け取ったとして収賄の疑いで逮捕されたものです。
 これまでの調べで、中安室長補佐は、100万円をカードの支払いなどに充てていたとみられるほか、複数回、飲食の接待も受けていたことが分かっています。
 その後の調べで、中安室長補佐が、会社側からほかにも現金数百万円を受け取っていた疑いがあることが分かりました。
 さらに、タクシー券も繰り返し受け取り、帰宅する際などに使っていたとみられ、総額は100万円以上になるということです。
 警視庁は、これらの現金などについて、何らかの便宜を図ったことへの見返りかどうか、趣旨を慎重に調べるとともに、いきさつを捜査しています。

**********北海道新聞2015年10月16日08:55社説
マイナンバー 汚職が募らせた不信感
 来年から運用が始まるマイナンバー制度のシステム整備事業発注をめぐり、収賄容疑で厚生労働省の現職室長補佐が逮捕された。
 東京都内のIT関連会社の受注に便宜を図った見返りに、現金100万円を受け取った疑いだ。
 制度は、個人情報の漏えいや不正利用の疑念が拭えない上、この時期になっても国民への周知が遅れている。巨額の税金投入に反発も強い。容疑が事実ならば、国民が抱く不信感はますます強まる。
 にもかかわらず、厚労省からは危機感が伝わってこない。事件を警察任せにせず、自ら汚職の経緯や原因を徹底的に究明して、再発防止に向けて襟を正すべきだ。
 室長補佐は情報政策担当参事官室でマイナンバー制度などに関する施策を担当。省内でもずばぬけたIT知識を持っていたという。
 汚職の対象となった2事業は、受注の要件を定めた国の仕様書をもとに業者側が企画書を提出し、国がそれを審査して委託先を決める企画競争入札だった。
 室長補佐は、国が準備する仕様書をこのIT関連会社に作らせ、受注を有利にさせるなど便宜を図った疑いが持たれている。
 2事業の受注額は計2億1千万円だった。しかし、同社はこのほかにも厚労省の業務を4件計12億円余で受注している。
 いずれも室長補佐の部署が発注した事業だ。これらの業務に関連し、数百万円の賄賂や多額のタクシー券を受け取った疑惑もある。
 調べに対して「自分から金を要求した」と供述しているという。その通りであれば公務員のモラルを大きく失墜させる行為だ。
 問題なのは、長年情報政策の仕事を任せ続けた点だ。厚労省は通常、1~3年程度で人事異動を行うが、制度に精通する室長補佐は8年以上、同じ部署に所属した。
 代わりの人材がいないという理由だが、結果的にこれが癒着の温床となった。厚労省の責任は大きい。
 厚労省幹部は「事件は制度そのものと直接関係がないので、運用にはそれほど影響はないだろう」とする。大きな勘違いだ。
 国民のプライバシーを扱う制度である以上、情報管理体制の強化と慎重な制度運用は欠かせない。
 そうでなくても「見切り発車」と批判する声が強いのに、今回の汚職事件は制度に対する信頼をさらにおとしめてしまった。
 厚労省が事件のウミを出し切り厳正に対処しない限り、国民の理解は得られないだろう。

**********読売2015年10月16日
マイナンバー汚職で逮捕の厚労省職員 事業再委託を浦添市に要求
 共通番号(マイナンバー)制度を巡る汚職事件で、厚生労働省情報政策担当参事官室室長補佐の中安一幸容疑者(45)(収賄容疑で逮捕)が2008年、同省のモデル事業を受託した沖縄県浦添市の幹部に対し、贈賄側のIT関連会社「日本システムサイエンス」(東京)に事業を再委託するよう要求していたことが、市関係者への取材で分かった。同市は実際に事業を同社に再委託していた。中安容疑者は同社と密接だったといい、警視庁で解明を進める。
 同省などによると、モデル事業は、病院や薬局、スポーツジムなどが利用者の健康に関する情報を共有し、効果的な治療や指導を行うなどの内容。08年3~4月に公募型企画競争が行われ、浦添市が計約4億3200万円で受託し、10年度までの3年間実施した。
 中安容疑者は08年3月まで、IT分野を担当する社会保障担当参事官室と併せ、医政局研究開発振興課にも所属。同課の業務として、モデル事業の企画立案などを担当していた。
 当時の浦添市の担当者によると、市が事業を受託した直後の08年4月下旬頃、中安容疑者から電話があり、「システムサイエンス社が入ることは既に決まっている。使ってくれ」などと要求されたという。これを受け、市は同8月、公募型企画競争に唯一応募してきた同社に、受託額とほぼ同じ計約4億3000万円で事業を再委託した。

**********東京新聞2015年10月15日 朝刊
マイナンバー1兆円市場 IT特需に癒着の温床

 住民一人一人に番号を割り当てる「マイナンバー制度」導入に関連する厚生労働省の発注事業を舞台にした汚職事件は、一兆円規模とされる「マイナンバー市場」の旗振り役の官側と、そこに食い込もうとする中小のIT企業の暗部を浮き彫りにした。業界が特需に沸く中、専門家は「今後も官民の癒着の温床となる恐れがある」と指摘する。 (マイナンバー汚職事件取材班)
 厚労省情報政策担当参事官室の室長補佐中安一幸容疑者(45)=収賄容疑で逮捕=に二〇一一年十一月、百万円を贈ったとされるのは、東京・平河町にあるIT関連会社「日本システムサイエンス」。
 社員十五人、資本金三千万円の同社は、中安容疑者が統括した二件のマイナンバー導入の関連事業を計約二億一千万円で受注した。信用調査会社によると、前年まで二百万~三百万円台の利益しかなかったが、同年は五千万円超に。マイナンバー関連の厚労省からの受注額は五件、計十二億二千万円に上る。
 「マイナンバー制度の市場規模は政府の初期投資だけで三千億円、さらにセキュリティー対策などで波及効果が一兆円規模に上るとされる」。三菱総研の中村秀治政策・公共副部門長は話す。厚労省だけでも一四~一六年度の三年間で、自治体への補助金を含め千二百億円のコストがかかり、システム改修費やランニングコストなどに税金がつぎ込まれる。
 そこに参入するのがIT関連企業。通常の企業にとっては、制度は従業員のマイナンバー情報の管理などで大きな負担がかかるが、IT業界には大きな商機となる。東京商工リサーチが六~七月に行った調査では、情報通信企業の35%が「マイナンバーはビジネスチャンス」と回答した。
 また、政府が個人番号によって住民の監視を強める側面を持つ。国税当局のある職員は「(個人番号で)税金をしっかり取れるようにするのが第一のメリット」と本音を漏らす。
 行政事務の効率化という長所が強調された制度だが、政府による個人の監視が進む上、莫大(ばくだい)なコストがかかるという負の側面が、次第に浮き彫りになっている。日弁連情報問題対策委員の清水勉弁護士は「IT業界には年々多大な利益が入り、メリットのある官と民が深い仲になるのは当然。今後も癒着が深まる恐れが十分ある」と懸念した。
<マイナンバー制度> 赤ちゃんからお年寄りまで国内に住民票がある人に12桁の番号を割り当て、税と社会保障などの行政事務を効率化する制度。来年1月から運用が始まる。今月各世帯に郵送される「通知カード」には、12桁の個人番号を記載。来年1月から市区町村の窓口で希望者に配布される「個人番号カード」には住所、氏名、生年月日のデータや顔写真が付き、本人確認に使える。社会保障関係の申請で住民票が不要になるなど手続き簡素化の長所がある一方、住民の監視強化や個人情報流出を懸念する声もある。
**********

※贈賄側の会社概要
商号:日本システムサイエンス株式会社 Nippon System Science. ,Ltd
設立:1990年(平成2年)6月
代表者:代表取締役 八幡秀彌
本社所在地:東京都千代田区平河町二丁目4番14号 平河町KSビル3階 〒102-0093
アクセス: TEL:03-3262-4311(代表)FAX:03-3262-4322
四国事業所:香川県高松市宮脇町一丁目1番23号 帝大ビル6階 〒760-0005
TEL:087-887-7341 FAX:087-887-7342
従業員数:20名
取引銀行:りそな銀行、みずほ銀行、三井住友銀行
沿革:
平成14年6月 本社を千代田区三番町へ移転
平成17年5月 本社を千代田区平河町へ移転
平成23年7月 四国事業所を開設
平成24年4月 日本スマートケア株式会社を設立
事業内容:
◇医療情報標準化普及促進事業
◇医療情報セキュリティ推進事業
◇情報システム構築支援サービス
◇アドバンスト・コンサルティングサービス
  ・プロジェクトマネージメント
◇情報セキュリティ関連サービス
所属団体:保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)、日本HL7協会、保健・医療・福祉情報セキュアネットワーク基盤普及促進コンソーシアム(HEASNET)、一般社団法人 日本医療介護経営研究機構

※参考情報
**********産経2015年8月22日 09:20
マイナンバー、年金連結延期 改正法成立へ
 政府・与党は21日、国民一人一人に個人番号を割り当てるマイナンバー制度と基礎年金番号との連結の開始時期を、当初予定の来年1月から延期する調整に入った。日本年金機構の情報流出問題を受け、再発防止策が図られるまで先送りする。延期期間は半年から1年の方向だ。
 民主党が年金との連結延期を求めており、今国会に提出中のマイナンバー法改正案に連結時期延期の修正を盛り込む方向。与党は修正を受け入れる方針で、法案は今国会で成立する見通しとなった。法案は衆院通過後に年金情報流出問題が起き、参院での審議が止まっていた。
 年金番号と連結すれば、年金機構内部でマイナンバーが使えるようになり、利用者の相談に応じやすくなる。
 平成29年1月からはマイナンバーを労災保険など他の制度と連携させ、給付調整などに使う予定だったが、この時期も延期する方向だ。
 改正案は、国民全員に割り当てる個人番号を、30年から金融機関の預金口座にも適用するとの内容。マイナンバー制度では、年金受給に必要な書類が簡略化できるようになる。

**********NHK 2015年09月03日 (木) 午前0:00~
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/226730.html
時論公論  「マイナンバー 改正法 成立へ」 竹田 忠 解説委員
 国民一人一人に一生かわらない番号を割り振るマイナンバー制度。あとひと月余りで、番号の通知が始まります。このマイナンバー制度の改正法案が、日付が変わってきょう3日にも国会で可決・成立する見通しです。改正法案は、番号の使い道を、新たに銀行の預金口座などに拡大します。
 その一方で、制度の中核的な分野である、年金への適用を当面、延期します。これは、年金情報の大量流出問題を受けたものです。
しかし、もともと政府は、消えた年金問題などを防ぐために、マイナンバーの導入が必要だと説明をしてきたわけでして、その年金への適用を先送りすることは、制度の大きな軌道修正を迫られた形です。
 サイバー攻撃が相次ぐ中、マイナンバー導入に伴う情報漏えいへの不安は払しょくできるのか?きょうは、この点を中心に考えます。


▼改正法案とは?
 まず、今回の改正法案を整理します。マイナンバーは、国民全員に割り振られる、一生変わらない12桁の番号です。
 今年10月中旬以降、簡易書留を使って、世帯単位で、国民に番号が届きます。
 そして来年1月からは、主に社会保障と税の分野で各役所が別々に管理している個人情報を、番号を使って結び付け、事務作業を効率化します。
 ここまでは、既におととし(2013年)成立したもともとのマイナンバー法で決まっていることです。


 今回の改正法案は、どう違うのかいうと、この番号の使い道をさらに広げて、金融機関の預金口座に結び付けます。これによって税務当局や自治体が、国民の資産を把握しやすくなり、脱税の防止や税の徴収がしやすくなります。
 口座への番号の適用が始まるのは2018年からで、これは、あくまで”任意”です。
 つまり、預金者本人が同意して、自分の番号を銀行に教えれば、口座に番号が振られるというものです。政府は、その3年後に、義務化も含めて検討することになっていまして、今後の議論が焦点となりそうです。


 この改正法案が、5月に衆議院を通過し、参議院に送られたところで、年金情報の大量流出事件が発覚したわけです。
 このため、情報管理に不安のある日本年金機構がマイナンバーを扱うことは、当面、延期する、つまり、年金を、番号の適用対象から、事実上、当面外す、というふうに法案が修正されて、きょうにも可決・成立する見通しとなったわけです。
 制度の大きな軌道修正です。


▼無防備だった年金
 今回、問題となった、年金の大量流出事件では、年金を受けている人の氏名や住所、生年月日など、125万件、人数にして101万人分もの個人情報が外部に流出しました。直接の原因は、何者かが業務を装った大量のウイルスメールを送りつけたことにあります。
 しかし、結果として、情報が漏れた背景には、日本年金機構の日頃のずさんな情報管理がありました。といいますのも、機構では、本来、年金の個人情報というのは外部とはいっさい遮断された、基幹ネットワークの中に保管されています。厚い壁に守られているようなものでシステム的には頑丈な仕組みです。
 なのに、なぜ、流出したのか?問題は運用にありました。
 基幹ネットワクークの中にある個人情報をCDやDVDにコピーして、それを、外部のインターネットとつながっているパソコンに入れて、作業していたためです。このため、サイバー攻撃を受けて情報が漏れてしまったわけです。


 セキュリティーの専門家は、こういう重要な情報を外に出して扱う場合は、外部のネットとは全くつながっていない、スタンドアローンと呼ばれる端末を使うべきであって、ここに安全管理上、大きな落ち度があったと指摘しています。


 また、機構の内規では、そもそもこういう使い方をする場合は、情報が漏れにくいように、パスワードを設定したり、アクセス制限をかけたりすることになっていましたが、それも、充分に守られていませんでした。機構自身が行った内部調査の報告書は「ルールは有名無実化していた」と指摘しています。
▼変わらない ずさんな体質
 では、なぜ、このようなずさんなことが許されていたのか?
 内部調査の報告書は、旧社会保険庁時代から指摘されてきた問題、いわば“社保庁体質”が、問題の根底にあるといいます。
 それは、具体的に言えば、ガバナンス(組織統治)の脆弱さ、組織としての一体感の不足そして、ルールの不徹底、だと、報告書は言います。


 かつて、旧社会保険庁は、年金業務を巡って様々な問題を起こしたあげく、ついには、合わせて5千万件もの年金記録が誰のものかわからなくなっていることが大問題となり、組織が解体され、日本年金機構に生まれ変わりました。
 この時に、組織の体質として指摘されたのが、ガバナンス(組織統治)のなさや、組織としての一体感の不足という、まさに同じ問題でした。
 つまり、同じことが繰り変えされているわけです。


 さらに、日本年金機構を管理する厚生労働省の対応にも問題がありました。
 年金機構がサイバー攻撃を受ける2週間ほど前、実は、厚生労働省も同じような手口のサイバー攻撃を受けていました。


 専門家は、この時の情報をただちに機構側に伝えていれば被害は少なくてすんだ可能性があると見ていますが、厚生労働省は連絡しませんでした。
 これについて、厚生労働省の第三者検証委員会の報告書は、厚生労働省と日本年金機構は、お互いに情報や危機感の共有がなく、組織が一体として危機にあたる体制になっていないと結論づけています。
 年金業務をあつかう現場が、ここまで、サイバー攻撃への危機意識がなく、無防備である以上、当面、マイナンバーという重要な情報を任せるわけにはいかにない、それが改正法案の趣旨です。


▼連結延期とは?
 では、マイナンバーと年金の連結延期で、今後どうなるのか?
 法案では、延期する期間は、最長で1年5カ月となっています。本来は、マイナンバーの運用開始の来年1月から、日本年金機構では、年金相談にマイナンバーを利用したり、内部の事務手続きで基礎年金番号とマイナンバーを連結させて、事務作業を効率化する予定でしたが、そういうことがすべて凍結されます。
 今後、政府は、年金機構と厚生労働省による情報管理の強化策を見極めた上で連結時期を改めて決めることになりますが、抜本的な対策には、組織改編も必要になり、時間がかかることになります。
 そこで焦点となるのは、さ来年・2017年の1月です。自宅のパソコンで、年金の納付状況などが確認できるマイナポータルという仕組みがこの時期から開始されます。
 もし、これまでに年金との連結が間に合わなければ、マイナンバーの柱である、このマイナポータルそのものに影響が出かねません。


▼自治体への懸念
 最後に、こうやって、年金だけを切り離して、それで情報漏えいへの不安は払しょくされるのでしょうか?
 実は今、多くの専門家がセキュリティー対策で懸念を指摘しているのは、実は、自治体です。というのもマイナンバーで結び付く、社会保障と税の実際の業務の大半を担っているのは、全国およそ1800の自治体です。
 しかし規模の小さな自治体の場合は、セキュリティー対策にあてるヒト、モノ、カネに限度があります。税や福祉などの重要な住民情報をあつかう基幹ネットワークがインターネットから、完全に分離されていない所も、まだ残っているとみられます。
 先日の参議院の質疑では、IT政策を担当する山口 沖縄・北方担当大臣が自治体のセキュリティー対策について聞かれ、「正直って心配もある」と答弁しています。
そして、「サイバー攻撃への対策が不十分な自治体でも制度に加えるのか」と問われたのに対し、「出来ていない自治体は制度に入れない」と答弁しました。
 つまり、それだけ、政府内部でも不安が残っているわけです。
 番号通知まで、あと一月あまり。政府は、日本年金機構と、自治体のセキュリティー対策について支援策を急ぐ必要があります。(竹田 忠 解説委員)

※当会注:このように、日本年金機構の情報漏えい問題で、マイナンバー制度実施開始を最大1年5カ月ほど延期しようというのが改正法です。即ち、マイナンバー制度は年金情報や税収などの管理が主目的ですから、マイナンバーとのヒモ付けができなければ意味が有りません。しかし、それでマイナンバー制度を延期すると、主目的がバレてしまうため、予定通り2016年1月から始めるというのが本音のようです。

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大同スラグ問題を斬る!…スラグ不法投棄撲滅を目指すリットン調査団の目(その1)

2015-10-15 23:55:00 | スラグ不法投棄問題
■市民オンブズマン群馬では、昨年春から一貫して大同スラグ問題に取り組んでいます。とりわけ、当会の誇るスラグ不法投棄特別調査チームの中核であるリットン調査団の、昼夜を問わずスラグ不法投棄現場に、いつでもどこでも出動する活動は、スラグ不法投棄撲滅にむけた大きな存在として、評価に値するものです。
 さて、当会の9月30日付ブログの末尾に10月1日追記として紹介したとおり、9月30日の毎日新聞に、これまで大同スラグ問題に粘り強く取り組んできた毎日新聞の記者の思いが綴られている熱血記事が掲載されています。本件記事の末尾の「記者の目:鉄鋼スラグ 有害物質問題=杉本修作(特別報道グループ)」をご覧下さい。

2015年9月30日毎日新聞全国版10面

■リットン調査団を擁する当会も、大同スラグ問題に対して、これまで粘り強く取り組んで参りました。群馬県による告発と、県警による大同特殊鋼やその関係先への家宅捜索から1ヶ月が経過した今、あらためて、この問題について、別な視点から考察してみたいと思います。題して、
「オンブズマンの目:鉄鋼スラグ 有害物質問題=リットン特別調査チーム(その1)」。

**********
 有害スラグ問題を斬りはじめて2年余。群馬県に住む者として“きれいな群馬ちゃん”を取り戻すため微力ながら活動してまいりました。企業の刑事責任は今後の捜査で解明されることになりますが、我々もこれまでの行政の対応を厳しく問いたい!のです。

◆この事件の発端

 この問題は有害スラグの“聖地”:渋川市のスカイランドパーク遊園地の駐車場に有害スラグがゴロゴロしているのが、そもそもの発端でした。水を吸った有害スラグが膨潤して、地表面が激しく凸凹になったため、駐車場舗装修繕工事の名目で、大同が、撤去した有害スラグを産業廃棄物の許可を取らずに収集運搬・中間処理しようとしました。

 また、大同は、有害スラグを細かく砕き、あらためて蒸気でエージング処理して、それを下層路盤材として納入しようと画策しました。さらに、それさえ飽き足らず、有害スラグ混合上層路盤材を「渋川市にテスト施工させろ!」という大同特殊鋼からの要請を受けて、渋川市が簡単に許可してしまったのが事件の始まりでした。

 テスト施工のいきさつについてはこちらを参照してください。
○2014年11月18日:大同有毒スラグ問題を斬る!…オンブズマン提訴で分かった渋川市の超法規的対応と大同特殊鋼との癒着
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1463.html

◆毎日新聞の記事では、次のとおり報道しています。

 ・・・取材で入手した大同の内部文書の中に、2011年11月にスラグの利用拡大に向けて大同と建設会社が開いた会議の資料がある。出荷状況などに加え「国土交通省へもアプローチ検討」「県議も使う」などと記され、行政や議員の取り込みを画策していたことがうかがえる。建設会社は県OBの天下りも受け入れていた。これらが奏功したかは分からないが、建設会社はその後、国が推進する八ッ場ダム(群馬県長野原町)の住民移転代替地の関連工事3件を計約4億円で受注し、そこにスラグを運び込んでいた。・・・

 佐藤建設工業が受け入れている県職OBの話は、大変気になる所です。ブラック大同・佐藤による「行政や議員の取り込みを画策」の追及は毎日新聞に任せることにして、オンブズマンの目としては、会議資料を別な視点で読み取っていきたいと思います。


※PDFはこちら→ 3c1129.pdf

 上に示したのが、問題の内部資料です。

 確かに「県議も使う」「県訪問」「国交省へもアプローチ検討」など恐ろしい文字が並んでいます。我々が今回、特に注目したいのは、表の下「*8、9月 処分場道路工事発生スラグを再処理、佐藤建設へ出荷(約600m3)」という文章についてです。

●注目点その1:ここで使われている「再処理」という言葉の意味は何でしょうか?考えてみましょう。

 大同特殊鋼渋川工場には、スラグの破砕施設に加えて、蒸気でスラグを蒸し上げるエージングという施設がありました。スカイランドパーク駐車場の建設に使用されていたチョー有害スラグは、サイズが100ミリと大きいため、撤去して回収後、大同に持ち込まれて破砕され、膨張による隆起現象を防ぐためのエージング処理を施されたと考えられます。

 破砕は産廃の中間処理にあたります。一旦工事で使用された現場から廃棄物を受け入れて、再処理するには、産業廃棄物処理業の許可を得ていなければなりません。また、その運搬には産業廃棄物収集運搬の許可を得なければなりません。

●注目点その2:「処分場道路工事」とは何でしょうか? 当会では既にこの問題を取り上げています。

 次のブログをご覧ください。
○2014年10月15日:大同有毒スラグ問題を斬る!…りんご団地の隣の小林製工運送の最終処分場を巡る変更申請手続の疑問点
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1426.html


小林製工運輸株式会社の最終処分場となっていますが、実質的に大同特殊鋼の最終処分場です。産業廃棄物の種類として「鉱さい」と記されています。スラグが「鉱さい」にあたると大同は認識しているのです。


処分場入口です。アスファルトがヒビだらけです。左に行くと超“デカ”スラグを施工してある様子が見られます


処分場からヒビだらけな道路が続きます。写真を撮影した日の3年前に、補修工事をしています。超有害スラグを掘削して、ブラック佐藤建設工業が無許可で運び出し、大同で破砕・エージングの処理を無許可でして、またしても道路下に不法投棄しています。そして、このように再びヒビだらけなのは、ブラック佐藤の有害スラグ入り砕石は、使い物にならない不良建設資材であることの証です。処分場の看板には「鉱さい」と記入してあることから、スラグが産業廃棄物であることを認識し、他方、佐藤建設工業は、産業廃棄物の収集運搬のがれき類の許可をもっていることから、許可外の「鉱さい」の運搬は、法律違反であることを充分認識しているはずです。ブラック企業が好んで口にする「知らなかった」「わからない」は通用しません。


処分場の左下の道路には、大同特殊鋼が不法投棄した超デカスラグの様子が見られます。

 このように、「処分場道路工事」というのは、小林製工運輸の最終処分場前の道路(市道です)に、大同の有害スラグが路盤材として使用され、それが膨張したことが原因でアスファルト舗装が凸凹になってしまったため、大同が大林組に改修させた工事のことを指していると考えられます。

◆内部資料に記されている「*8、9月 処分場道路工事発生スラグを再処理、佐藤建設へ出荷(約600m3)」というのは、この産業廃棄物処分場の工事に関連して、平成23年8月~9月に処分場に入るための管理用進入路工事が施工されたことを指していると考えられます。

 この道路は市道ですが、小林製工運送(株)が既存の道路を改良して渋川市に引き渡したものです。大林組が施工したこの改良工事の内容を見ていくと、元々あった市道に大同猛毒デカスラグが敷設されていたため、約600m3を掘削・撤去したことがわかります。

 群馬用水の調査でも判明しているように、このデカスラグは超猛毒で、遮断型処分場へ処分しなければならないところ、今回取り上げた内部資料によると、なんと大同特殊鋼渋川工場で破砕・エージングという処理をしてから、佐藤建設工業へ約600m3もの量が引き渡されてしまったのです。佐藤建設工業は、大同が排出し続けた大量の超猛毒デカスラグを、盛土材置き場、または箱島中央混合所、もしくは直接現場に搬入することで、「処分」してしまったようです。
********** 

 このように信じられないことが、我が群馬県では続けられてきたのです。

【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】

※参考資料
9月30日の毎日新聞に、これまで大同スラグ問題に粘り強く取り組んできた記者の思いが綴られている、熱血記事が掲載されています。
**********毎日新聞2015年09年30日
Listening:<記者の目>鉄鋼スラグ 有害物質問題=杉本修作(特別報道グループ)

大同特殊鋼東京本社に家宅捜索に入る群馬県警の捜査員=東京都港区で2015年9月11日、田口雅士撮影
◇行政は環境守る気概を
 大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から排出された鉄鋼スラグに有害物質が含まれていた問題で、群馬県警は11日、強制捜査に乗り出した。有害スラグを再生資源と偽って出荷する「リサイクル偽装」に捜査のメスが入るのは過去に例がない。取材を始めて2年余。企業の刑事責任は今後の捜査で解明されるが、私はここで、これまでの行政の対応を問いたい。
 この問題は一昨年6月、渋川市の遊園地の駐車場で環境基準を超える有害物質が検出されたのが始まりだった。群馬県は昨年1月、大同やスラグ販売先の建設会社に立ち入り検査し、その結果を今月公表。大同はスラグに有害なフッ素が含有されていることを知りつつ販売額以上の費用を販売管理費などの名目で支払う「逆有償取引」で出荷していたことなどから、県は大同のスラグを廃棄物と認定し、廃棄物処理法違反容疑で大同や建設会社を刑事告発した。
 取材で入手した大同の内部文書の中に、2011年11月にスラグの利用拡大に向けて大同と建設会社が開いた会議の資料がある。出荷状況などに加え「国土交通省へもアプローチ検討」「県議も使う」などと記され、行政や議員の取り込みを画策していたことがうかがえる。建設会社は県OBの天下りも受け入れていた。これらが奏功したかは分からないが、建設会社はその後、国が推進する八ッ場ダム(群馬県長野原町)の住民移転代替地の関連工事3件を計約4億円で受注し、そこにスラグを運び込んでいた。
◇「事なかれ主義」、告発まで2年余
 私は昨年5月、この移転代替地工事にスラグが無許可で使われていることを確認した。国交省のダム事務所に写真を送って調査を求めたものの「受注した建設会社に確認したがスラグ砕石は使用していないとの回答で、目視点検でも写真のような砕石は見つけられなかった」などとして調査は不要と判断された。
 しかし、建設会社が不正をしたとすれば、素直に「スラグを混ぜました」と言うはずがない。その後、国交省は昨年7月、建設会社を「優良受注者」として表彰。私たちが昨年8月5日朝刊で「八ッ場ダム代替地整備に有害資材」と報じたことを受けて、国交省はようやく重い腰を上げて調査を始め、有害スラグの無許可使用などを認めた。
 県も一部の担当部署が当初は「火消し」に回った。環境森林部が廃棄物処理法に基づく検査を進める一方、県道を所管する県土整備部は昨年5月、県道6カ所をサンプリング調査して「安全性が確認された」と表明した。県関係者はこう漏らす。「県土整備部は検査や刑事告発に消極的だった。問題が大きくなれば、自らの職責を問われるからだ」。スラグは県道でアスファルトの下の緩衝材として広く利用されていた。撤去となれば交通網への影響は避けられず、行政の責任を追及する声が上がる可能性がある。
 有害スラグの利用はその後も次々明らかになり、国交省と県土整備部は昨年11月、対策会議を発足させて調査範囲を拡大せざるを得なかった。発注工事についてはサンプリングではなく、資料などで利用が疑われる工事も調査対象に加えられた。県内93カ所で環境基準を超えるスラグが見つかり、54カ所で周辺土壌に汚染が広がっていることが判明、昨年末には県庁内で刑事告発の方針も固まった。現時点で地下水への影響は確認されず、深刻な汚染が起きる前に調査が進んだことは良かったが、報道などによる指摘がなければどこまで調査したのか、また刑事告発まで踏み切ったのか、疑問は残る
◇近隣県も対象に、調査ためらうな
 現在の調査対象は国と県、県内2市の発注工事のみだが、他の市町村や近隣県を含めて徹底した調査を求めたい。また、八ッ場ダムの移転代替地の多くは住民に分譲済みで「私有地」を理由に調査対象から外れているが、苦渋の決断で移転を容認した人々に禍根を残さないためにも調査をためらうべきではない
 これまでも「リサイクル偽装」が確認される度、行政の対応は問題になった。有害物質を含む土壌埋め戻し材「フェロシルト」が01〜05年に不法投棄された事件では、問題のフェロシルトを三重県がリサイクル推奨品に認定していたとして批判された。ごみ減量のため国はリサイクル製品の利用を後押しし、自治体が率先して使うことを全て悪いとは言えないが、問われるのは偽装を生まない監視と起きた場合の行動だ。今回のスラグ問題は氷山の一角かもしれない。行政は「事なかれ主義」でなく、環境を守る気概を示してほしい。
**********
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大同スラグ問題を斬る!…10月9日群馬弁護士会館でのスラグ汚染問題に関する毎日新聞記者の報告(その2)

2015-10-14 23:36:00 | スラグ不法投棄問題
■続いて質疑応答に移りました。

**********
司会:ありがとうございました。せっかくの機会ですので、時間を6時半ぐらいまで伸ばしたいと考えていますので、質問のある方は、ぜひこの機会にしていただければと思います。

Q:はい、すいません。愛知県のほうでは、問題はないと、群馬県ではあると。どの程度の基準が、条例等の関係で違っていたんでしょうか。

A:愛知県はアイクル材という、要はリサイクル材、愛知の愛とリサイクルのアイクルでアイクル材という、リサイクル製品を積極的に愛知県は使いますよと、但し厳格な基準を設けたもの以外は公共事業から締め出しますよ、と言う強いスランスで臨んだんですね。その基準の中に、膨張比は勿論ですが、有害物質を原料から超えた場合はアウト、という基準を設けています。この原料からというのがポイントです。今回、大同特殊鋼の渋川工場がすり抜けたのは、原料のスラグは有害だということは大同も分かっていたんですけど、それに天然砕石をブレンドさせて、結局、検査をまとめてマスで検査をするので、マスで検査をすれば有害物質が、含有率は相対的に下がるから、それで大同はすり抜けていたんですね。だけど、愛知の場合は、二つの物質を混ぜる場合は、それぞれの物質で検査をしなければいけないという規則になっているので、今回のような手法が通じなかったので、超えるのは素直に廃棄していました。これは明らかに群馬県の愛知県の設けた基準の差が、今回の対応になったということです。

Q:その廃棄する費用というのは、廃棄はどういうものかということと、それに対する費用というのはどういう問題にひっかかってくるんでしょうか。

A:1立米3万円とか4万円とか言われているんですね。70万トンとかっていうふうに今排出、年間2万トンですかね。

参加者から:2万5千トン。

A:2万5千トンが大同の渋川工場から排出されて、それにトンで言えば2万円掛かるので、ちょっと計算していただければと思うんですけど、そのぐらいの数億円、多分かかると思うんですけど、それを惜しんで、建設屋さんに小遣いを渡せば殆どただみたいなおカネで、それが捌ける、コスト削減になるということで、やっていたんですね。

Q:その処理方法というのは。

A:スラグを処理しようとする場合には、遮断型という環境省の指定を受けた特殊な処分場に持って行かないと、処分が出来ないんです。単純にそのへんの安定型という穴を掘って埋める処分場、管理型の処分場では処分ができないんです。例えば、長野県のイーステージでしたっけ。そこに持っていて高いカネを払って、最終的には埋めるんですね。富山の方へ持って行って埋めるんですね。水が漏れないような特殊な遮蔽をしたような特殊な処分場でないと処分が出来ないんです。それにコストがかかってきます。
 さっきちょっと説明を抜かしてしまったところがあります。6ページを見ていただいて、覚書というのが有ります。運賃表と言うのが載っています。これは、甲が大同で、乙が群馬丸太と書いてありますが、これは群馬丸太が中抜きをほとんどしないで、全て佐藤建設工業に支払っているようですけど、大同はさっき販売管理費という名目でおカネを払っているだけではなくて、スラグを運ぶおカネというのも一切大同に負担を掛けまして、佐藤建設工業は、これを営業によく利用していまして、「輸送費込みの同一単価」という、凄いんですが、これは例えば、何処にスラグを運んでも値段が変わらない、ということです。で、資材もあまり詳しくないかたは、ご存知ないかもしれないですけど、資材というのは輸送費がすごくかかるんです。トラックで運ばなければならないんです。八ッ場ダムに運ぶと。東毛だったら、太田、館林まで運ぶと。だから輸送費が必ず販売単価に加算されてくるのが普通なんですが、佐藤建設工業は、輸送費を大同が全部負担してくれるので、ユーザーの建設業者に対して、「どこまで資材を持って行っても、値段は統一価格でやらせていただきます」というのを、一つ営業にしていました。太田の方に持っていた実績があるようなんですが、普通は、地産地消で、コストがかかるから太田にもたくさん砕石屋さんが居るのに、その太田の砕石屋さんが佐藤に負けたという話も出ているくらいです。運賃の負担と言うのが、やはりひとつ、販売管理費と並んで逆有償のひとつ、大きな要素になっていったというところですね。すいません。おカネに関して、そういった問題もあります。

Q:実際に混ぜていたのは、この佐藤工業のほうで混ぜていたわけですか。

A:大同の渋川工場で出たスラグを、佐藤建設が管理する渋川市内のヤードに・・・東吾妻町かな、そのヤードに持ってきまして、そこで、佐藤建設が自分の山で発破した天然採石を持てきてそこでブレンドするということなんですが、このブレンドが非常にいい加減で、きれいに混ぜていれば、スラグの使う量は、ある程度少なくて済むんですけど、もうトラックが来たら、私も見たんですけど、スラグの山から持って来るみたいな。だから、ものによって、スラグがうんと薄い場所もあれば、殆ど100%に近いような場所もあって、それが、県も頭を悩ませているところなんですけど、結局、もう、乱暴にほとんど混ぜることなく使っているものだから、あるところではスラグだけではなく、スラグが接している土壌にまで汚染が、深刻な土壌汚染を生んでいる場所もあります。そういった場所は、ほとんどもう、100%、“生一本”と専門家は言うんですけれど、100%に近いスラグが使われている場所もあると。仮にですけど、それが、八ッ場ダムの宅地の下で、生一本に近いものが使われていない保証がないので、それが結局、おそらく佐藤に聞いても、濃い場所と薄い場所がわからないわけなんですよ。それが、心配なんですよね。だから、先ほど見たTさんのうちは生一本の場所だから、あんなに直ぐに膨れてしまったんですけれど、八ッ場ダムの住宅の下で使われているものが生一本でないという保証なんていうのはまるでなくて、そこが非常に心配なんです。因みに試験に必ず出さなくてはいけなくて、行政で使う場合には試験に出すんですが、試験に出して使う場合には、ちゃんとした、きっちりブレンドして、試験を通るやつを出してわけなんですよ。

Q:スラグとは見た目で分かるものですか。

A:それが・・・分かりません。ただ、私は、国交省の現場監督とか、建設屋さんも有る程度気付いていたんではないかと思うんです。その根拠は、普通の、コンクリートガラを作った資材の2割から3割安い値段で佐藤建設は、資材を売っていたわけです。そうするとなぜ安いんだろうというのは、普通の業者さんなら分かるし、国交省だって、この辺ちょっと話が入ってくれば、そこの資材は安いんだぞということになれば、「あれ、スラグを混ぜているのではないか」ということは、当然分かる筈なので、国交省は「認めて無い所でたくさん使われていてうらは被害者」だと言っているんですけど、資材が2割、3割安いんだから、そこは常識的には気付くのではないかと私は思いますけれど、一応、今回は行政は被害者というふうになっているわけなんです。

Q:現在もでているわけですか、スラグは。

A:去年、渋川工場はもうスラグの排出を止めて、群馬県では、スラグは排出されていません。ただ、多くの鉄鋼メーカーが今もスラグは再生利用しているので、大同のような問題が、他のメーカーで起きないとは限らない、とは思っています。ただですね、今回の問題を受けて、業界全体が厳しくしているのと、あとは、みな、やはり新日鉄さんとか住金・・・新日鉄住金とか、JFEとか、神戸製鋼とか、やはり、スラグの有害物質の低減化に、かなりの設備投資をして、おカネをかけて有害物質が出ないような設備を導入していて、特許とかも取ったりしているので、他の所はかなり先進的にやっているところが多いんですよね。だから、大同は、特殊金属を使っているがゆえに、有害物質があれだけ入っているのをご存知であったにも関わらず、その環境に対する配慮が、やっぱり、他企業と比べても相当低かったのではないかな、というのは思いますね。特に、愛知ではやっていないので、群馬が・・・言い方は悪いんですけど、軽く見られていたというような、結果を見れば状況だったというふうに思います。

Q:愛知の方で使ったものを、群馬からでたものを持って行っていたんですか。

A:いや、先ほども申しましたように輸送コストが非常にかかるんで、基本、スラグは地産地消なんですね。愛知には、知多工場という鉄鋼工場を、大同は持っていまして、その工場で出たやつを愛知で使っていたわけです。で、愛知のほうは、有害物質が出た場合には処分をして、出ていないやつを限定的に、スラグとして向こうは使っている。お分かりになりますか。

A:はい。今のところ、新日鉄住金とか、神戸とかいろいろありますよね。こっちの方から今のところは、わかっていないんですか、スラグは。

Q:問題になっていないからということですかね。ちょいちょいあるんですよね、というのは、豊島でしたっけ。瀬戸内海で問題になったり、とか、過去にもいくつか出ているんですけれど、その度に問題が起きるとその企業が改めるという状況を繰り返して居まして、ただ、逆有償取引は、大なり小なりどこのメーカーもやっていたんですけれど、今回の大同のやつでみんな慌てて止めたという話は情報としてあります。有害物質に関しては、これは鉄鋼スラグ協会が言うには、大同の渋川工場は特に特殊で、他のメーカーは特殊金属を作っているメーカーは、そもそも殆どスラグを売っていないと。もう(有害物質が)出ちゃうから。スラグを売っているのは、有害物質をほとんど使わない「銑鉄」と言うんですけれど、高炉で使う、いわゆる科学で習った、コークスと鉄鉱石と石灰石を混ぜて作る鉄があるんですが、それのスラグはそんなに有害ではないので、それくらいしか流通させていないんだというふうに鉄鋼スラグ協会は言っています。ただ、協会が言っていることなので、どこまで本当かというところはありまして、現に私、今さっき名古屋で220箇所隆起したという説明をしたと思うんですけれど、あれも、さっきの私が言った愛知の基準からすれば矛盾している話で、おそらく愛知でもアイクル材に、通過するときに検査で持っていくやつには、基準を下回るやつを持って行ったくせして、流通させているのは基準を超えているのを使っているという可能性が十分考えられるので、私、最近名古屋にずっと言って、220箇所の亀裂問題をずっと取材しているところです。だから、他でも眠っている可能性があると思います。

Q:名古屋では膨張の問題が今、表に出ているんですか?

A:そうです。

Q:その有害な六価クロムの、含有とか、そういった所はもうクリアしているんですか。

A:一応、膨張したスラグを、行政が検査機関に持っていったら環境基準は全部下回っていて、その辺から、大体どこの製品かということが分かってきまして、何製のスラグが膨張してたのか、というのは、大体分かってきたんですが、それは企業秘密で、数カ月以内に毎日新聞をお楽しみください。(場内笑い)

Q:それは楽しみですね。スラグはもともと膨張するものですか。

A:すごくマニアックというか、科学的なことで、スラグには2種類ありまして、高炉スラグと製鋼スラグと言うのがあります。資料の1枚目にも書かせていただいたんですが、高炉スラグというのは、科学でいわゆる3つの物質を混ぜてつくる「銑鉄」といわれるやつなんですね。これ(のスラグ)は膨らまないんです。製鋼スラグ、とくに大同で使われている電炉スラグの場合に入れる物質が膨らむということで、全てのスラグが膨らむわけではないんですね。で、そうなってくると、膨らんだ鉄。名古屋で例えば膨らんだということは、高炉ではなくて製鋼なんだなと、そうすると電炉メーカーなんだな、とか。しかも有害物質を調べてみると、この物質がちょっと高くて、この物質がちょっと低いな、とか、いうのをバーッと調べていくと、鉄鋼メーカーもそんない幾つもあるわけではないので、だんだん業者が絞れてきて、最終的に、あのメーカーというのが絞り込めたんですけれど。膨らむのに、全部膨らむわけではないんです。

Q:いいですか。実は、私は2013年6月のスカイランドパークの駐車場問題に絡んだことがあるんですが、この事案は駐車場が膨張して、それを渋川市の方で改修工事をするということで、当然事業主体は渋川市で、スラグを掘り起こす業者、それから運ぶ業者、それから最終的には最後に処理する業者、それらに発送したんですけれども、産業廃棄処理法で、この処理費用は誰が法的に負うかということで、県とかいろいろやりあってきて最終的には県の見解は、そのスラグを掘り出した業者が法律的な責任をもつと。ただし渋川市の予算はまさに掘り出す費用といえば報酬しかくれないんですね。それでもし廃棄物処理費を負担すると言ったら、その会社が当選するという危機管理の問題があったので、これはおかしいのかなという気がしたんですが、これからやっぱり今回掘り起こす問題になった時に、誰が廃棄物処理法の法的な責任を負うかという問題で、それからその費用の負担という問題についてこれからまた話さなくてはいけないかなということがある。うっかりして工事を請け負って責任を負えば、他の人が責任を持たなくては、義務者が負うような格好になってしまうので、その辺が我々、今度は法律的な問題として相当整理が必要かなと思った次第なんです。

A:まさに2013年6月の問題は、この問題が一番最初に明るみになった時なので、いろいろな、研究と言うか、みんなが遅れている初めての状況だったんと思うんですけれども、例えば水資源機構の群馬用水の脇の砂利道で有害スラグが見つかって、それはもう撤去して工事が終わったんですが、その時、佐田道路とか、佐田建設が受注して、それは水資源費用がもう全部、費用を、片づける費用まで一義的には支払って、最終的には大同と話し合いが出来て、その費用は全部大同が全部負担しますよということで落ち着いたんです。これからは、撤去する、例えばあの当時だと北部土建か、地元の建設屋さんが、駐車場を掘り出す役回りをしていたと思うんですけれども、その業者さんに責任がいくような状況には、今後はなっていかないという風には思います。

Q:廃棄物処理法上の責任はその業者に有りそうなんですね。実際に費用は、そんな、高々掘り出すことだけを請け負った業者に、最終的にはそれを廃棄物処理する責任ということ自体は、おかしい事はおかしいですけれど、法律的にはそういったことをしっかり意識しておかないと。費用の負担者を決めておかないと、うっかり掘ることもできないんですよ。今言ったTさんの家を掘るにしても、掘った人が掘り出したものの処理に対する責任を負う格好になって来てしまうので、それをうっかり請け負えば、掘ってしまえば、掘った人の責任になってしまうのか。ただ、費用の負担者をTさんにするのか、それともその原因を与えた大同にするのかは、どういう形にするのかは別として、廃棄物をうっかり掘り返してはいけないのは、廃棄物処理法の処理義務者が誰になるのか、ということが非常に難しい問題が残ってくるわけです。

A:通常は多分、今回見たいな状況でなければ、工事を請け負った業者が、それも含めて請け負うんでしょうね。きっと。

Q:だから水資源開発機構とこの2つは決まったわけですね。だが堀った人が、あとは汚染が残ったひとが、
これは決まったが実際に掘った人が、あとは自分でマニフェストを作って、やらなくてはいけない。その費用が他の人に持ってもらうか、スカイランドの場合は、最終的には渋川市が持ってもらって、その辺は免れたんだと思うんですけれども、それは結果的にはそれは適切な処理だとは思うんですけれども、ただ廃棄物処理法違反だと、掘った人が義務者になってしまうことです。

A:私もその辺勉強させていただきたいと思います。なかなか難しいんですね。佐藤建設工業が無許可で使った場所を撤去する場合には、じゃあ、大同が負担するのかどうかとか、あと民間で、さっきの無償で提供された場所については、大同が負担するのかとか、一口に大同が責任を負うと言っても、いろいろなケースが有るので、今度逆に、大同が支払わないと言った場合は、おっしゃるとおりになる。

Q:そういったところは非常に大きな問題で、請け負ったり、業者と話をしたりする場合に、うっかり受けられない、受ければ自分が法的な義務ですから、そうすれば、トン当たり何万円を誰かから補てんするかたちが無ければ工事に掛かれないんですね。

A:そうですよね、うーむ。特に民間の公人場合だと今後そういった問題がいくつか出てくるんだろうと思います。

Q:怖くてうっかりうけられないということです。それから掘り出してしまえば業者が基本的には廃棄物処理法上で、掘り出したところでマニフェストを作って、最終的には管理型の処分施設に持って行き、管理型の最終処分場に捨てるということになります。制度としてはそうなります。

A:今のところは、かなり出来る限り負担をしたいということは、大同がおっしゃっているので、この辺がどこまで続くかですね。

Q:それでしてくれるなら良いが、県も、それなら除去できると思うんでしょうが。

A:貴重なご意見をありがとうございます。

Q:特に我々も、すぐ業者の方にも相談に行ったりあと、そういう問題であとで要請があったときに、廃棄物処理法と費用負担との関係で、大同が処理してくれるんかと、言ってら、廃棄物なんだから処理するんかと、いうことで、大同が処律してくれるのなら、建設業者は処理しますとは言わないでしょうし。

A:請求するにしても一時的にどれだけ払わなければならない問題がある。

Q:要するに200億とか300億とか、コストがかかることは間違いない。そのコストは全部大同が負担してくれるなら、それに基づいて義務者が早く工事が出来るんでしょうけれど、まだそこまでは大同は言っていないんです。

Q:渋川市の市内のその場所と言うのは、本当に(リストが)できているんですか。

A:公共工事(の「現場リスト」)はかなり出来ているんですけれども、ひょっとしたら一部かもしれないし。

Q:住民は知っているんですか、それを。

A:場所によっては、検出された場所には看板を出しているんですね。これは、こういう写真、こういう看板を出して、立入り禁止にいちおう渋川市ではしていまして。これ、実は裏にあるのは使われていない施設ではなくて、市民体育館と言って、今も市民の憩いの体育施設なんですが、従来ここは体育館に来た住民の人たちの駐車場だったわけなんですけれども、そこを今、こういうかたちで立入り禁止にしまして、この体育館を利用するかたは、離れた市役所の駐車場に車を止めて、ここまで歩いて、体育館を利用されていまして、だからバレーボールとか、そういう、バスケットボールとか、そういった道具を、歩いて運んで使っているような状況で、非常に気の毒な状況です。こういった施設が渋川市内にかなりありまして、この間、なにかオンブズマンのブログを見ましたけど、スカイランドパーク駐車場もほとんどがこういった状況で立入り禁止にしているので、時々、あの遊園地閑散としているんですけれども、時々、たくさん人が来ると、今度は逆に駐車場が無くて、大変なことになるという、渋滞が起きるという状況なので、かなり住民生活に影響が出ている現状です。渋川市の場合は。

Q:責任というのは、原因者責任と、もう一つ関心があるのは行政責任というものがあるわけですね。公共工事に関しては原則としては入札しているわけで、入札価格が見積もりの中で、相当低いところ、おかしいなと思う可能性があると思うんですが、それについても情報公開等はなさっているんですか。

A:やれる資料は、協力しながらとっているんですけれど、正直言いますと、まずは県の調査と、県警の捜査が行われるまでは、様子を見ようと、いうところがあったので、この9月11日までは、穏便にやっていたんです、表現悪いんですけれども。これ、しっかり捜査や、行政がしっかり対応をとるというのがハッキリしたので、ここからきっちり、個々の政策に対する問題追及を、記者としていけないかなというふうに思っているところです、現時点では明確に、相手の不手際の証拠が、手元にあるかというと、そうではない。
 ただ、小川さんたちがやっていらっしゃる裁判で、萩生地区の農政部が、県農政部が、やった工事なんですが、スラグが敷き砂利で大量に使われていまして、それが、えらいことだということで、隣に水田があるので、水田の隣に有害スラグがたくさん使われているので問題だというので、農政部は普通ならば撤去工事をしなければならない所を、上にアスファルトを簡易舗装でかぶせて、それで、安全対策を行ったというふうに言っています。それは違うだろうと。その、地中から結局水質で隣りの水田に流れるわけですし、蓋をすればいいという問題ではないし、逆に撤去するチャンスが、蓋をしてなかったわけですから、あったにもかかわらず、それを片付けずに蓋をしてしまったという、行政の不手際を今、まさに訴訟でやっていらっしゃると思います。あれなんかは明らかに政策として間違っていると思うし、県土整備部の幹部も、国交省も、基本的に今は、撤去という方向に政策として進んでいるので、あの農政部の対応は大きなミスで、今後問題になって来るんじゃないかなと思います。それが一つです。
 あと、いわゆる倉嶋文書というのがありまして、今の県土整備部長の倉嶋さんが出した文書なんですけれど、平成・・・2010年6月に、平成22年ですね。スラグを一般の再生採石と同じように使っていいですよ、というお墨付きを、お達しを、県が出すわけなんですよね。その通知を受けて、県内の市町村が積極的に使うようになって、もともとは渋川市がよく使っていただけなんですけれども、それから爆発的に流通するようになった、そのきっかけになった文書です。これを県庁に取材をしていろいろ聞いたら、「うちは安全対策とか基準とかちゃんと設けて、それを満たすものだけを使わせている」と、県庁が説明して、「その安全基準ってなんですか?」と聞いたら「ああ。大同の指導を受けて作った」という。つまり、取り締まる側が取り締まられる側の意見を聞いて作ったという基準なんですね。それなので、これも非常に問題だなと思っていまして、かなりよく読んでみると、鉄鋼スラグ協会ですら認めていない、混合で検査をするとか、甘い検査になっています。多分、大同が認めたから、全国的なそんな甘い検査をしている県は、私の知る限りないんですけれども、結局、大同に聞いているからそんな検査方法になってしまう。その辺も、どう好意的に解釈しても、ちょっと行政の対応としては、おかしいな、と思っています。これも今後の追及課題かなと思っています。ただ、群馬県は、一つだけ庇うと、結果的に群馬県の工事では1ヵ所しか有害な場所が検出されなくて、今、群馬県はホッとしていて、これで群馬県でもいっぱい出てきたら間違いなく県土整備部長の首が飛んでいたでしょうから、群馬県はそれで胸を撫でおろしている状況なんです。

(以下省略)

■当会から、研修会の最後にひとつコメントをださせていただきました。

「オンブズマンなんですが、先日、神戸で開催された全国市民オンブズマン大会で、名古屋の市民オンブズマン事務局に、現地の道路隆起について調べてくれと依頼してあります。当会の依頼に対して、今、愛知の方でも情報収集に努めてくれており、じきに何か出てくるかと思います。」

 まだ非公式情報ですが、現地のオンブズマンからの情報によれば、愛知県におけるスラグ問題では、大物政治家も絡んでいるようです。もしかしたら、一大スキャンダルに発展する可能性もあるやもしれません。

【市民オンブズマン群馬事務居からの報告・この項終わり】

※配布資料
○大同特殊鋼鉄鋼スラグ問題 説明資料→
20151009xouwilj.pdf
○ルポ「循環型社会」の裏側→
20151009xoulilj.pdf
P242-243 PDF⇒zep242243.pdf
P244-245 PDF⇒zep244245.pdf
P246-247 PDF⇒zep246247.pdf(※大同関係者の衝撃発言に注目!)
P248-249 PDF⇒zep248249.pdf
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大同スラグ問題を斬る!…10月9日群馬弁護士会館でのスラグ汚染問題に関する毎日新聞記者の報告(その1)

2015-10-13 23:21:00 | スラグ不法投棄問題
■10月9日(金)午後5時から、前橋市大手町にある群馬弁護士会館の3階大会議室で、大同スラグ問題に当初から取り組んできている毎日新聞社記者の杉本修作氏を講師とした研修会が開催されたので、当会も聴取してきました。気鋭のジャーナリストだけに、要領よくまとめられた内容はこの問題を読み解くうえで大変参考になります。

 この研修会は、群馬弁護士会の平成27年度の公害対策環境補銭員会の勉強会として開催されたものですが、一般人も聴講できるとあって、会場には同弁護士会のメンバーのほかにも、当会を始め県内の市民団体の関係者らが多数、詰めかけました。

**********
司会:本日は「鉄鋼スラグに関する問題について」と題して、毎日新聞の記者である杉本様を講師としてお招きして研修をすることとなりました。一般の方も多数お見えになっておられますが、一応名目は当会のあくまで勉強会という名目で、具体的な活動とかそういった形に必ずしも結びつくものではありませんが、一緒に勉強したいと考えておりますので、この点についてはご了承いただきたいと思います。はじめに、本日の講師の杉本氏の経歴を紹介いたします。1977年静岡県生まれで、2002年に毎日新聞に入社し、2007年4月まで前橋支局で勤務されていました。当時は県警、県政、前橋、伊勢崎、渋川を担当されていたということです。その後東京社会部、大阪社会部で警察調査報道を担当。2014年4月からは、新設された調査報道部署特別報道グループに配属されています。具体的な活動例としては、今回の群馬県鉄鋼スラグ問題のほか、小渕優子経済産業大臣、それから西川公也農林水産大臣、当時ですけれども、政治とカネ問題等を取材されています。本日は貴重なお話がもらえると期待しておりますので、杉本様、よろしくお願いいたします。

講師:初めまして、ご紹介に預かりました毎日新聞特別報道グループの杉本と申します。失礼して着席させていただきます。私は、この大同特殊鋼の鉄鋼スラグの問題を、2年余にわたって取材をしており、始めた当初は大阪の社会部にいました。昔の群馬県渋川市にいる友人から、こういった問題が有るので取材に来てくれないかという要請を受けました。当初は、私費で新幹線に乗って、休みを使って、群馬県に来まして、で、当時は地元の記者も行政も、全くこの問題について全く取り上げていなくて、孤軍奮闘に近いような状況から、この問題を始めました、取材を始めたんですが、そうこうしているうちに地元議員の方々や市民オンブズマンの方々、その他いろいろな方々が協力していただいてくださるようになって、ようやく、先月11日に、群馬県警が、この問題について強制捜査をして、ようやく全国的なニュースになっていたという状況です。
 今回の、法律専門家の方々が多数いらっしゃるということなので、基本的な問題はそこそこにして、まさに法律家の手を借りたい方々が、今後たくさん増えるであろうと思われますので、そういった観点で、詳しく説明をさせていただけたらな、というふうに思っております。つたない説明になるかもしれないんですが、宜しくお願いいたします。
(1)鉄鋼スラグとは
 まず、もうここにいらっしゃる方々で、ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、鉄鋼スラグとは何ぞやということから、簡単に説明させていただきます。
 鉄を作ると炉の下にカスが溜まりますが、いわゆるそれが鉄鋼スラグの原料になるんですけれども、一口に鉄鋼スラグと言っても、鋼種、どんな鉄を作るのかによって、その中に含まれる有害物質等々が全然変わってきます。例えば、鋼を作るときに鉛を入れたりとか、そういった場合には、鉛が出てきます。ステンレスですと、錆を防ぐために、クロムという物質を入れるんですね。不純物を取り除くために、フッ化カルシウムという、ホタル石という物質なんですが、それを加えると、不純物が取り除かれるだけでなく、技術的な話で言うと、融点が下がる、つまり溶融を、容易にしやすくなって、要はコストが下がるんですね。蛍石を入れれば、低い温度で鉄が溶けるので、好んで使われていたわけです。
 特に大同特殊鋼の渋川工場は、世界に冠たる工場で、ロケットとか、航空機とか、果ては原子炉の部品などに使われている超高性能な鉄で、ステンレスで、いろいろな、主にクロムだとかフッ化カルシウムなんですが、化学物質を添加して、そこから出てくるスラグが、今回の問題の原因になっているということなんです。なので、鉄鋼スラグ、イコール、みんな六価クロムが出るんだとか、フッ素が出るんだとかいうことではないのですが、特に渋川工場の鉄鋼スラグは、そういった物質が多数含まれると。ちなみに、愛知県に大同特殊鋼の知多工場というのが有りますが、そこのスラグには、六価クロム等々は入っておりません。あちらは、環境基準を超えた場合には、全て処分をしているんですね。つまり愛知県で出されているスラグには問題がないのに、同じ会社で群馬県のほうでこういう問題を起こしていると。スラグ、後で説明しますが、何が原因なのかというと、簡単に言えば、愛知は基準が厳しくて、群馬は県庁の基準が緩かったから、こういった問題が起きてしまったという、これは別に行政批判でもなんでもなくて、愛知と群馬の基準の差が、今回の問題の原因でもあるということになる、というのを、後程、詳しく説明させていただきます。
(2)六価クロムとフッ素とは
 六価クロムとフッ素、特にフッ素なのですが、歯の再石灰化とかというので、虫歯予防などというふうに言われているんですが、危険物質だと言われ始めたのがこの17年くらい。ユニセフとかが警鐘を鳴らし始めたのが1990年代後半くらいだと記憶しています。もちろん、少量で、歯にいいというのは、そういう研究もあるようですが、過剰摂取は骨などに奇形をもたらすというのが、インドや中国の研究で明らかになっています。なんか向こうは、蛍石のようなものに、石灰を燃料に使って暖房にしていたようなんですけれども、それで過剰摂取した子ども達が、骨に異常が出始めたと。写真に載っているのはインドの子の例ですが、ちょっと分かりにくいですが、足が膝のあたりからグニャッと曲がっていると思うんですが、これが、背骨でそういうのが出たりとか、歯で出たりとか、そういう子どもたちがたくさん出て、フッ素もかなり有害であるということが、近年の研究で分かって来てまして、環境基準も設けられています。六価クロムは言わずもがなですが、各地で公害問題を起こしている物質で、鼻中隔穿孔という、江東区の日本化学工業の公害問題ではこの病気になる人がたくさんいらっしゃいまして、簡単に言うと、鼻の中に壁があるがんですが、その壁に穴が開いてしまって、右穴と左穴では奥ではくっついていますが、手前側の辺りで穴ができてしまって鼻水が止まらないという病気です。
 肺がん患者も出て、これは公害問題で民事上の訴訟を起こされて、たしか和解が成立していると思いますが、六価クロムはもう発がん性物質としてかなり認知されている物質です。いずれにしても大同特殊鋼のスラグには、この2つの物質が含まれていて、大変危険だというところをおさえていただけたらなあと思います。
(3)問題の経緯
 問題の経緯について説明させていただきます。ここに書かれている内容は、新聞記事等々にも出ていて、簡単な時系列をまとめたものなので、読みながら聞いていただきたいと思います。そもそも、角田さんという渋川市議さんが、遊園地のスカイランドパークの駐車場が膨らんで撤去する際に、環境検査もちゃんとしなさいと、土壌汚染対策法で3000平方メートル以上の土地の形状の変更をする場合には、都道府県知事が有害検査の試験をさせることが出来るという法律があります。それに則って試験をさせたら、2013年6月の渋川市議会で発表になったんですけれど、環境基準を超える六価クロムやフッ素が出てきたというのが、問題の始まりです。
 当事の記事を見ると、各紙小さいベタ記事みたいで、ちょっと問題が出ちゃったねというぐらいの取り扱いだったんです。これが、不作為によるものなのか、それとも、かなり企業の故意性が高いのかと、いうところが分かれ目だと思うんですが、取材をしてみて、企業が、どうも確信犯的に有害物質を含んでいるスラグを、排出し続けているんではないかというふうな思いに至ってですね、それで、取材を始めたというわけです。
 で、群馬県の廃棄物リサイクル課も同様の疑問を持って、我々に近いような思いで、廃掃法に基づく立入検査を翌年に行いまして、それで、その検査結果がようやく先ごろ出て、大同のスラグが廃棄物に当たるというような判定をしたわけです。
 ざっと説明したんですが、これは何故廃棄物なのかというと、それは、有名な、おから訴訟というのがあります。おから裁判・・・刑事事件だったのでおから裁判ですね。豆腐のカスのおからが、果たしてゴミなのか有価物なのかという裁判が昔、起きまして、刑事事件で元々は、豆腐屋さんがおからはもともと有価物だから、ゴミじゃないので、おからを生産する際には、廃棄物処理の資格はいらないんだというふうに言い張った豆腐屋さんがいまして、おいおいそれはダメだろう、おからはゴミなんだから、製品に処理する際にはちゃんと廃掃法の資格がいるだろうと、いうところで、裁判になって、最高裁はそのおから屋さんを、廃掃法違反だというふうな判定をしたんです。その訴訟が、平成11年3月10日に、最高裁判決が出まして、それで、その時の裁判所の判断で、そのものが、ゴミか、それとも有価物なのか、という時には、すいません、細かな話を申し上げて。そのものの性状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引価値の有無、および事業者の意思等を総合的に勘案して、これがゴミか、有価物かを判断しますというふうに最高裁が判断して、この場合のおからの場合は、典型的に言うのは、引取り料と称して、普通、有償のものであれば、そのおからは、もう、引き取る人が、おカネを払って売買が成立するはずなんですが、引取り料を支払っていたと、いわゆる逆有償というものですが、それをやっていたから、それはゴミの取り扱いではないか、というのが最高裁の判断のひとつの基準になりました。その判例以降、逆有償というのが、ゴミが有価物かという判断するときに非常なひとつの判断材料になると、いうふうになったのです。
 今回の大同特殊鋼も、実は後述するんですが、スラグの取引がされる、いわゆる逆有償取引というのをしておりまして、そこの辺を群馬県は重く見て、これは廃棄物であろうというふうに判断したんですね。
 資料をちょっと見ていただきたいのですが、契約書類の、スラグ混合再生路盤材の製造販売等に関する契約書という資料の5頁がございます。
 それで、この第6条のところをご覧になっていただきたいのですが、甲は丙に対して云々とありますが、甲は大同特殊鋼で、丙はこのスラグを購入した佐藤建設工業という資材会社です。月額25万円を販売管理料として支払うと。それで、1トン当たり260円・・・月額25万円を支払います。で、第2条を見ていただいたいのですが1トン当たり100円を販売価格と支払いますとあります。簡単にいうと、100円を支払って、すいません、佐藤建設工業は大同に100円を払います。そのお礼として、大同特殊鋼は佐藤建設に販売管理料名目で260円払いますと。そうすると取引されるごとに150円ずつ、佐藤建設工業は引き取れば引き取るほど儲かるという仕組みになっておりまして、これがいわゆる逆有償取引ということです。当初は、儲けは150円だったんですが、これがどんどん契約書が改定されて引き取れば引き取るほどどんどん儲かるようになったんですね。
 で、これをやってしまうと何が問題かというと、佐藤建設の立場からすれば、資材を使うあてもないのに、どんどんどんどんスラグを引き受けて、引き受ければ引き受けるほど逆有償でおカネが儲かると。どんどん山積みになっていくわけですね。で、使うに困って、結局は八ッ場ダム等々で認められていない場所にスラグを使って、今回、有害物質が出て問題になったという流れになるんです。結局、根本は大同特殊鋼が佐藤におカネを払って引き渡していたという、それは全ての問題の始まりなんですよね。廃棄物処理の典型的な問題で、群馬県がそれを廃棄物と認定したのも、合理的に考えて、正しい判断じゃないかなと思います。
 先ほどの最高裁判例の後で、環境省が、各都道府県に通知を出すんですが、それが7ページにあります。実はここに、土質の性状、ア、イ、ウ、エ、オと書いてありまして、これは各基準で、これは正に最高裁の判断に基づいて、こういうふうな基準を環境省は各都道府県井通知していたんです。○×○とか、左側に描いてあるのが分かると思いますが、これは私が別に描いたわけではなくて、大同特殊鋼の担当者のこれは内部資料で、大同特殊鋼の担当者が、自分たちの判断で、これは○なのではないか、これは×なのではないか、とりあえず○とか、描いてあるんですが、いかに彼らが、この基準をかなり意識して、今回の問題に手を染めていたかというのが分かると思います。
 ゴミかゴミじゃないかの判断というのを、大同は相当意識して、今回こういうことをやっていた。その一つが、例えば、大同特殊鋼のスラグは、特に最近のスラグは、ただ単純にスラグだけを・・・スラグというのは砂利の形状をしていますが、ただ単純にスラグだけを流通させていたのではなくて、そこに、天然砕石を混ぜ合わせて、ブレンドさせて、天然砕石とスラグの混合物として販売するわけです。それ、どういう意味があるかというと、スラグだけを検査してしまうと、有害物質が環境基準を超えてしまう。だから、天然砕石と混合させることによって、彼らの言質でいえば、有害物質の低減化を図っているという趣旨なんですが、環境省は、希釈を目的として、例えば液体でも、硫酸みたいなものとかを水と混ぜて、有害性を薄めて排出するという手法を禁止しています。まさに環境省でも禁止している典型的な手法なんですが、それを今回やって、検査をすり抜けていたと。検査をすり抜けてきた・・・すり抜けているので、行政は、一見したら、検査を測ったものは数値以下になったので、それをそのまま使うのを行政も許可していたと、いう状況なんですよね。だから、大同特殊鋼と佐藤建設との間で、逆有償で始まったことに、国交省や県もお墨付きを与えて、使用させていたと、いうような構図が浮かび上がってきます。
 問題の経緯は、ざっとそういうところです。
(4)問題の構図
 それで、この取材をする時に、本当に大変だったのが、先ほど群馬県廃棄物リサイクル課は、かなり協力的に情報もいろいろと交換をさせていただいていたんですが、国土交通省とか、あと、群馬県の県土整備部は、やっぱり事実の全容解明に消極的でした。私が、ここは住民の敷地内に、スラグが、八ッ場ダムの移転代替地で使われているんですとか、再三再四、国交省に言って、危険なので撤去したほうがいいですよ、と言っていたんですが、国交省からは、「君らが捲いたんじゃないのか」とか、そういうことを言われました。
 それで、まともに取り合ってもらえなくて、出来たら、記事を書く際には、「国交省も調査を始めた」とかっていう、一つ前向きな形の記事を書きたいと思って、複数回にわたって国交省とやり取りをしました。けれども、皆さん、なんというか、我々や、一緒に活動している方々が“故意にやった可能性がぬぐえない”ということを何度も言われました。
 あとは、ちょっと住民の方からもお声をいただいたんですけれども、「毎日新聞が勝手に石を拾って、有害だ何だと騒いでいる」とか、この本筋と違うことで、論点をそらすなどして、なかなか前向きに取り組んでいただけませんでした。で、記事を去年の8月5日に、八ッ場ダムで、無許可で使用されているんだと、住民移転代替地で、無許可で使われているんだという記事を書かせていただいて、なんかようやく潮目が変わって、地元の方々はまだまだ不満が有るんでしょうけど、一応国交省が調査を始めて、そして問題がかなり動いて、その流れでようやく、群馬県警の捜査というところまで至ったのかなと思います。逆に、我々や議員の方々や市民団体の方々が騒がなければ、できれば行政は、隠しておいた方が良かったという問題なんだろうなというのは、取材をしていて、残念ながら思わざるを得ないかなと、いうところでした。
(5)今後の展開と残された課題
 余り過去の問題を叩いていてもしょうがないので、これからの話を中心に、ちょっとこれから話していきたいと思います。
 捜査が動いたら万々歳だということではなくて、むしろ、これから大変な問題が出てくるのではないかと思います。で、まず、被害の全容がはっきりしないんです、特に今、行政は、ある程度公共工事で使った箇所がトレースできているので、ここで使われているんじゃないかというのが、ある程度把握できているんですけど、どうやら民間工事で大量に使ってまして、これが、大同が、例えば、古い例だと友人に発もまれて、大量に使って、大同自身もどこにどう使われているのか分からないという。民間駐車場で使っているんですね。言われて初めて大同が気付いたとか、そういうケースがたくさん散見されています。大同自身が、どこでどう使われているのか把握できていないという。特に、ここ5年くらいを考えれば、有害物質で気にするのはフッ素だけでいいんですけど、10年前、15年前、もっと20年前、30年前のものになると、六価クロムがかなり検出されているものが多くなります。六価クロムとなってくると、フッ素と較べると、気にしなくてはいけないレベルが変わってきます。
 その辺が、ようやく大同が、電話相談窓口を今、開設しまして、情報提供を呼び掛けている状況に至っています。それで、これから民間の使用状況がどんどん明らかになって来るのではないかなと思います。それで、佐藤建設工業の受注歴を見ると、民間工事も多数受けていて、例えば駐車場の敷地とか、コンビニの駐車場の敷地とか、あとは、佐藤の前に付き合っていた建設会社が、昭和村で何かデカい企業の駐車場を施工していて、そこでスラグが使われているとか、そういう話もいくつか出ています。
 それで、これから、公共工事よりもむしろ民間工事で、民事上のさまざまな問題が出てくるのではないかと私は思っています。

 その例として、これは、榛東村にTさんというかたがいらっしゃいます。一見すると木造2階建ての普通のお宅、古い立派な瓦葺きのお宅かと思うんですが、簡単に説明すると、この方がTさんで、この方が長岡技術科学大学のM教授という方です。実はこの方にこの家を、私が連れて見に行ってもらったんです。この方は何が専門家かというと、実はスラグの膨張の専門家です。スラグと言うと有害物質の話ばかりが取り沙汰されているんですが、実は、スラグにはもう一つ怖い特徴があります。それが、膨らむという特徴なんですね。もっと言うと、水を含む、水和反応というんですけれども、これはもう科学的にも立証されていて、スラグには石灰が付いているので、その石灰が水和反応を起こすと。M先生によると、10%最大で膨らむそうです。例えば、このくらいの、1センチのものなら1ミリ膨れるし、1メートルのものなら10センチ膨らむんですね。最近のスラグは、膨らまないように膨潤・・・エージング処理というものを行っているので、過去の、昔のものよりもいくらか膨らまなくはなっているんですけれども、それでも例えば昨年10月に、名古屋市の上下水道工事で使われたスラグが膨らんで、道路に220箇所亀裂が入るという問題も起きたりしています。
 スラグをやはり完全に膨らむのを抑えることは、なかなか難しいというのが現状です。それで、Tさんの家を見てみます。こういう状況なんです。分かりにくいかもしれませんが、これは、天井に亀裂が入っている様子ですね。


 で、これなんですが、・・・これは縁側なんですね。これは奥の方。これはもともとくっついていたんですね。ところが、母屋が膨らんで、こちらは下がってしまった。10数センチの隙間が空いているんです。ここが一番わかりやすいんですけど、実は写真にすると膨らんでいる様子がうまくわからないです。要は家の真ん中がこういうふうに膨らんでました、家の端っこが全部下がってきていまして、結局壁が引っ張られるため、外壁の至るところに亀裂が走っています。それで、どんどん家がこういうふうに下がってきてしまっているんですね。家の周りが。それをTさんも実は建築屋さんをやっていて、そうならないように梁を地下に・・・軒下に梁をいっぱい、鉄筋の梁をたくさん通したんですが、その梁が曲がってしまうくらいの力。どんどん、と今も隆起が起こっている、どんどん進んでいる状況です。このお宅は30年前に、大同特殊鋼からスラグを家の盛土材として、無償で提供を受けまして、それで、正確に言うとTさんの先代のお父さんがこの家を新築する際に無償で提供を受けて、大同に、トラック何百台分ぐらいのスラグだったらしいんですけど、それを家を、高台にこういうふうに家を造りたくて、その盛っている部分を全部スラグで作ったわけです。そしたら10年ぐらいしてから、スラグの隆起が目立ち始めて、私も行ってみたんですけど、凸凹になっている状態です。
 で、因みにここのスラグを測ったら、専門家に鑑定してもらったらスラグであることは間違いなくて、しかも、環境基準を超える六価クロムやフッ素とかが検出されていて、有害性もあるんですけれども、それ以上に家ががたがたしてしまっています。もう、ちょっと、住んでいる状況が・・・よく住んでいるなという状況になってきてしまっているんですね。
 スラグは、有害物質だけではなくて、こういう膨張の危険もあるんですね。それが今、ちょっと私が一番心配しているのが、実は八ッ場ダムの移転代替地で、実は国交省がこの間、調査をしたと発表しているんですけど、調査した箇所は、国の管理地に限られていて、その隣に、もう宅地で分譲している場所があります。そこは住民の方がおカネを出して国交省から買っているわけです。その、買った土地を、国交省は「民有地だから」といって、ほとんど検査をしていないんですね。よほど要望があったところ以外は。それで、検査をしていないので、そこの下にスラグが使われているのかどうか、実は分からないんですよね。ただし、確実に言えることは隣ではスラグが見つかっているので、使われている可能性が、私は極めて高いと思っているんですが、国交省が、そこを調べてしまって、万が一出てきたら、おそらく大変な問題になるということが分かっているので、全然調べる気も無いようです。それで、有害物質は、百歩譲って、地中に眠って水質の心配とかもあるんですが、国交省が水質をしっかり検査して、絶えず、土壌環境検査を継続して行えば、ある程度の不安は解消できるかなあと思います。しかしこの隆起の問題は時限爆弾のように10年後、20年後に、八ッ場ダムの移転代替地で出てくるかもしれないんですよね。
 で、Tさんの自宅は、さきほどのM先生によると、水平方向に10数センチ動いて、上に5センチくらい盛り上がっているらしいんです。だから、相当動いているんですけど、ただ、家は、2、3センチ動くだけで、もう家として建てつけが悪くなったり、よくゴルフボールが転がるとか、そういった被害というのはもう数センチ動くだけで起きているんですね。仮に八ッ場ダムの移転代替地が、ここまでの量を使っていなくても、先ほど言ったように最大で10%盛り上がるということを考えると、八ッ場ダムの家が、同じような、ここまでひどくなくても、家にクラックが入ったりする状況になるというのは十分考えられます。国交省も問題を先送りしたいのでしょうけれど、これを、例えば10年、20年して、八ッ場ダムの地域の人たちのお宅の外壁にクラックがたくさん入り始めるといったことになった場合に、誰が責任をとるのかという問題が出てきます。これも、ダムに賛成だ反対だという問題ではなくて、本当は、正面から取り組まなければいけない問題だと思います。しかし、なかなか、国交省の当時、住民の信頼関係がまだ厚いので、今まだあまり住民の人たちが声を上げている方々が少ないんですけど、今私が一番懸念している問題です。今後、そのようになってくる可能性があります。
 話が前後しますが、先ほどのTさんは、大同から30年前に、スラグをもらって、こういう状況になったので、民事訴訟をするのもかなり不利なんだろうなと。専門家のかたがたがここにいらっしゃるのですが、ただ、ご本人はスラグが膨らむものだというのは、知らなかったのと、大同から説明も受けていなかったのと、有害物質が含まれていないという説明だったんですが、明らかにフッ素が含有されているし、周辺土壌から微量な六価クロムも検出されていて、何とか助けてあげたいなと、私は個人的に思っています。今、大同特殊鋼の相談ダイヤルに電話をして、大同と今、電話でちょうどやり取りしているところなんですが、もしここにいらっしゃる弁護士の先生で、法律的な見地から、アドバイスをしていただける方がいらっしゃったら、大変ちょっとお困りで、奥さんが、平衡感覚がおかしくなって、もう頭痛持ちになったり、そういう状況もあります。もし、何か法律的な助言をいただける方がいらっしゃったら、相談に乗ってあげていただければと、この場を借りてお願いなんですけど。
 これから民間の問題がいろいろ出てくると思うですが、一方で、責任の所在。どうも国交省とかは、今、一義的には被害者だと言っているようですが、大同が、どこまでおカネを払うのかというところで、今は低姿勢で大同もいるんですけども、本当に、必要な費用が、大同特殊鋼が負担するのか、或いは負担できるのか。例えば大同特殊鋼が、群馬県内で使ったスラグを積算すると・・・全部撤去すると大体200億円くらいおカネがかかるようなんですよね。で、この費用を、大同が本当に全部負担できるんだろうかという問題も有るんですね。それから使われている場所が、家とかだけじゃなくて、皆さんの利用されている上武道路とかでたくさん使われたので、上武バイパスを通行止めにしてスラグの撤去をしようということになると、住民の生活にもなかなか影響があるということで、国交省も群馬県も、本音では撤去の量は必要最小限度に抑えたいというのが本音なんですね。
 で、私のスタンスは、なかなか難しいんですけど、まずは表面に出ているもの、これは経口摂取というか、口から粉塵が入る可能性があるので、そこはもう速やかに撤去すべきだと思います。

 具体的に言うと渋川市内で、そういった場所が何十カ所もあります。公園とか、小学校とか、小学校の駐車場とか、そういう市民生活に重大な影響を及ぼす場所で、アスファルト舗装をしていない、表面にむき出しの砂利の状況でたくさんスラグが今、放置されています。渋川市の試算だと8億7千万円が、撤去するのにかかるらしいんですけど、市から財政支出が出せないということで、今も放置されているんですね。
 だから、こういったのは、カネの出所がどうだということではなくて、公害問題になる前に、早く撤去しなければいけないなあというふうに思っているので、そういった場所はまず速やかにやってほしいと。で、道路に使われているものについては、市民生活の影響を考えると全て、即、撤去というのは難しいのでしょうけど、ただ、さっきの膨張を考えると、そう遠くない時期に結局は撤去せざるを得ない状況に来るのではないかと私は見ています。
 まさに県の担当者が、検査の結果をまとめて、刑事告発をしてからが大変だというふうにおっしゃったんです。今、県のほうにいろいろな方から電話がたくさん来て、「うちで使われているのはスラグではないのか」とか、「道路の傍に住んでいるんだけれど」という問い合わせたくさん来ていて、これからそういった住民の人たちの、撤去を求める声とか、不安の声とかというのはたくさん上がってくると思います。県もそこをすごく心配しているというと、違うんでしょうけど、そうなることを想定して、かなり、体制を組んでいるわけですけど、警察が捜査をしたのがむしろ始まりで、これからたくさんいろいろな問題が、出てくると思いますので、法律の専門家の方々を始め、住民の方々もぜひ注視していただいて、問題の解決に一緒になって取り組んで行ってほしいなというふうに思っています。
 まとまらない説明で申し訳ありませんが、私からの説明はこの程度で終えます。この後、質疑などをさせていただきたいと思います。どうも有難うございます。(拍手)
**********

【市民オンブズマン群馬事務居からの報告・この項続く】

※配布資料
○大同特殊鋼鉄鋼スラグ問題 説明資料→
20151009xouwilj.pdf
○ルポ「循環型社会」の裏側→
20151009xoulilj.pdf
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大同スラグ問題を斬る!・・・渋川市の対応「ここが変だよ」番外編その1

2015-10-11 23:15:00 | スラグ不法投棄問題
■有害スラグ問題に揺れる群馬県ですが、原因者である大同特殊鋼やブラック佐藤建設工業が所在する渋川市ではスラグ問題にとどまらず、様々な廃棄物が不法投棄されているようです。10月10日に、朝日新聞にスクープ記事が報道されました。


**********朝日新聞2015年10月10日群馬版
2015n1010v.pdf
土中に大量のコンクリ片
渋川市の運動場の建設現場

 渋川市北橘町で建設中の運動場の土の中から産業廃棄物とみられるコンクリート片が大量に見つかった。6月の大雨で土を覆っていた擁壁が崩れ、発覚したという。工事を発注した市は全敷地を掘り起こし、ほかにも埋まっていないか調べている。業者から事情を聴き、今月中に市議会へ報告するという。
 コンクリート片が見つかったのは市が建設を進めている北橘運動場(仮称)。約5.3ヘクタールの敷地に、野球場や多目的広場などを整備し、2016年9月の完成を予定していた。
市によると、基礎部分などの造成工事は、14年6月に工事が始まり、今年2月に完成した。予定価格9605万円(税抜き)の条件付き一般競争入札で4社が入札し、市内の建設会社が9500万円(税抜き)で落札した。
 通常、擁壁を置く工事の場合、降雨の際に壁が崩れないように、壁の下部を土で固めておくが、今回の工事ではその対策が講じられておらず、雨水を排出する設備が整備されていなかったという。そのため、6月の大雨の際、雨水で重みが増した土が擁壁を押し、壁がずり落ちたとみている。
 その後、市が現場を確認したところ、擁壁がずれ落ちた部分の土の中にコンクリート片が混ざっているのを見つけたため、整地された多目的広場の数カ所を掘り起こすと、コンクリート片があちこちから出てきたという。
 市土木維持課によると、工事期間中は市職員が週1~2回、現場確認し、建設会社とも打ち合わせをしてきたが、「四六時中、監督している訳ではなく、コンクリート片が混入されたかどうかは確認できなかった」としている。不法投棄されたものであれば、廃棄物処理法違反の疑いがあるという。
 計画では、敷地外から土を持ち込むことはなく、傾斜地の高い場所の土を低い場所に移し替える工事だったといい、工事を請け負った建設会社は市の調べに、「なぜコンクリート片が混入したのかはわからない」と話しているという。
 市は、野球場予定地にもコンクリート片がないか掘り起こして調べ、確認した結果や今後の方針について議会に報告するという。(上田雅文)
***********

■当会では以前、渋川市の運動場の擁壁が、円弧滑りを起こして崩壊した様子を報告したことがあります。有害スラグ問題の発祥地の渋川市ですから、有害スラグが絡んだ事件が多発していること、また有害スラグを市自ら不法投棄させていた渋川市行政ですから、そのいい加減な体質から、円弧滑りの発生は、行政の設計ミスであると睨んでいました。
○2015年6月26日:大同有毒スラグを斬る!…渋川市で先週発生の擁壁崩壊災害!有害スラグ原因か?オンブズマンが緊急調査
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1650.html

 では、10月10日付の朝日新聞の報道記事のポイントを整理してみましょう。

(1)建設中の運動場の土の中から産業廃棄物であるコンクリート片が大量に見つかり廃棄物処理法違反の疑いがあること。

(2)事件の発端の背景に、市の設計ミスの疑いがあり、大雨で、擁壁が円弧滑りを発生したため、不法投棄の様子が偶然見つかってしまったこと。

(3)工事を請け負った建設会社は、「なぜ混入したかわからない」と有害スラグ問題のブラック佐藤建設工業と同様に、「わからない」を主張していること。

(4)産業廃棄物処理法違反の疑いがあるのに、この記事の結びは「議会に報告するという」となっていること。

■上記のそれぞれのポイントについて、解説を加えてみましょう。

(1)建設中の運動場の土の中から産業廃棄物であるコンクリート片が大量に見つかり廃棄物処理法違反の疑いがあること。

<解説>
 コンクリートは“がれき類”に分類されている産業廃棄物です。有毒物質が含まれていてもいなくても、法律に分類の規定があり、分類に当てはまれば産業廃棄物となることから、不法投棄は許されません。
 この点、大同スラグの場合、廃棄物としての認定が遅れましたが、スラグも同様に毒を含んでいようがいまいが、「鉱さい」に分類される廃棄物であり、法律を読む限り、コンクリートと同様に、不法投棄は許されないことは、明らかです。


(2)事件の発端の背景に、市の設計ミスの疑いがあり、大雨で、擁壁が円弧滑りを発生したため、不法投棄の様子が偶然見つかってしまったこと。

<解説>
 大雨による円弧滑りは、市が擁壁の下部の土を、次の工事予定のためか、掘削して取り除いてしまった状態を放置したため起きた“人災”です。市の設計ミスの疑いがありますが、渋川市議会でこの問題が取り上げられました。ところが、採決の結末は多数決により、不問とされてしまったそうです。
 この議会の行為は、市行政の不備を隠蔽する行為です。隠ぺい行為自体にも、犯罪性があるのではないでしょうか?


(3)工事を請け負った建設会社は、「なぜ混入したかわからない」と有害スラグ問題のブラック佐藤建設工業と同様に、「わからない」を主張していること。

<解説>
 有害スラグ問題で、佐藤建設工業の佐藤社長は、毎日新聞の取材に対して、都合が悪くなると「わからない」を連発しました。そのくせ、有害スラグ入りの盛り土について、「(有害スラグの)混入がわずかであれば影響は少ない」などと、学者でもないのに自分勝手な理屈を並べ立てているのです。
 今回のコンクリート片不法投棄問題でも、請負建設会社は同じように、「わからない」とブラック発言をしています。問題解決に向けて、自分なりに調査するつもりはないようです。
 ブラック佐藤建設工業は、自分勝手に天然砕石に混ぜて不法投棄した有害スラグを、自ら撤去することもなく、依然として何事も無かったかのように、上武国道工事に盛り土材を納入し続けています。地域住民の不安は増すばかりです。
 国土交通省はなぜペナルティーを科すこともなく、如何わしい盛り土をブラック佐藤に納入させ続けているのでしょうか?
 同様に、渋川市は、請負建設貴社に対して、なんのペナルティーを科さずに住民の不安を余所に、工事を続けさせるつもりなのでしょうか?


(4)産業廃棄物処理法違反の疑いがあるのに、この記事の結びは「議会に報告するという」となっていること。

<解説>
 特に、このことが問題です。産業廃棄物処理法違反の疑いがあるのに、「行政は議会に報告する」という結びになっています。犯罪性が疑われている問題について、議会で承認でも取るつもりなのでしょうか?
 犯罪行為であっても、渋川市は、議会で多数派工作が行われ、この問題を不問にしてしまえば、廃棄物処理法違反という犯罪を隠蔽できると思っているのでしょうか?
 渋川市では、過去にも度々、議会で多数決により、闇にまみれてしまった犯罪行為のあったことが疑われています。


■有害スラグ問題では、渋川市議会においては珍しいことに、早期措置を求める議決がなされました。しかし、その稀な議決さえも見事に無視され、渋川市では相変わらず“大同さまのご機嫌伺い”を続けています。

 市長や行政の都合がいいように議会が運営され、めったに起こらないことですが、市にとって都合が悪い決議が仮に起きても、結局、それは無視をされてしまうのです。

 今回のコンクリート片の不法投棄は、有害スラグとは直接関係のある問題ではありませんが、番外編として“ここが変だよ、渋川市!”と叫びたいのです。

【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】

※参考情報
*********
参考:廃棄物処理法第2条
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46SE300.html
(産業廃棄物)
第二条  法第二条第四項第一号 の政令で定める廃棄物は、次のとおりとする。
一  紙くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、パルプ、紙又は紙加工品の製造業、新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行を行うものに限る。)、出版業(印刷出版を行うものに限る。)、製本業及び印刷物加工業に係るもの並びにポリ塩化ビフェニルが塗布され、又は染み込んだものに限る。)
二  木くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、木材又は木製品の製造業(家具の製造業を含む。)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業及び物品賃貸業に係るもの、貨物の流通のために使用したパレット(パレットへの貨物の積付けのために使用したこん包用の木材を含む。)に係るもの並びにポリ塩化ビフェニルが染み込んだものに限る。)
三  繊維くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く。)に係るもの及びポリ塩化ビフェニルが染み込んだものに限る。)
四  食料品製造業、医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物
四の二  と畜場法 (昭和二十八年法律第百十四号)第三条第二項 に規定すると畜場においてとさつし、又は解体した同条第一項 に規定する獣畜及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律 (平成二年法律第七十号)第二条第六号 に規定する食鳥処理場において食鳥処理をした同条第一号 に規定する食鳥に係る固形状の不要物
五  ゴムくず
六  金属くず
七  ガラスくず、コンクリートくず(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものを除く。)及び陶磁器くず
八  鉱さい
九  工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物
十  動物のふん尿(畜産農業に係るものに限る。)
十一  動物の死体(畜産農業に係るものに限る。)
十二  大気汚染防止法 (昭和四十三年法律第九十七号)第二条第二項 に規定するばい煙発生施設、ダイオキシン類対策特別措置法第二条第二項 に規定する特定施設(ダイオキシン類(同条第一項 に規定するダイオキシン類をいう。以下同じ。)を発生し、及び大気中に排出するものに限る。)又は次に掲げる廃棄物の焼却施設において発生するばいじんであつて、集じん施設によつて集められたもの
イ 燃え殻(事業活動に伴つて生じたものに限る。第二条の四第七号及び第十号、第三条第三号ヲ並びに別表第一を除き、以下同じ。)
ロ 汚泥(事業活動に伴つて生じたものに限る。第二条の四第五号ロ(1)、第八号及び第十一号、第三条第二号ホ及び第三号ヘ並びに別表第一を除き、以下同じ。)
ハ 廃油(事業活動に伴つて生じたものに限る。第二十四条第二号ハ及び別表第五を除き、以下同じ。)
ニ 廃酸(事業活動に伴つて生じたものに限る。第二十四条第二号ハを除き、以下同じ。)
ホ 廃アルカリ(事業活動に伴つて生じたものに限る。第二十四条第二号ハを除き、以下同じ。)
ヘ 廃プラスチック類(事業活動に伴つて生じたものに限る。第二条の四第五号ロ(5)を除き、以下同じ。)
ト 前各号に掲げる廃棄物(第一号から第三号まで及び第五号から第九号までに掲げる廃棄物にあつては、事業活動に伴つて生じたものに限る。)
十三  燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、前各号に掲げる廃棄物(第一号から第三号まで、第五号から第九号まで及び前号に掲げる廃棄物にあつては、事業活動に伴つて生じたものに限る。)又は法第二条第四項第二号 に掲げる廃棄物を処分するために処理したものであつて、これらの廃棄物に該当しないもの
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