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市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

近年になく紛糾した東邦亜鉛安中製錬所における4.9第25回工場視察会の参加報告(その1)

2016-04-23 21:30:00 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題
■今年も恒例の東邦亜鉛安中製錬所の視察会が4月9日(土)午前9時半から正午にかけて実施されたので、昨年に引き続き当会も参加しました。

毎年4月上旬に開催される工場視察会。悲惨な安中公害を語り継ぐためにも重要なイベントだ。


気温の低い日が続いたので構内の桜はまだ見ごろを保っていた。

<第25回東邦亜鉛安中製錬所視察会>
日時:2016年4月9日(土)09:30-
参加者(敬称略)
 東邦亜鉛:中島正志、吉澤勇夫、秋山武郎、音羽俊夫、眞田淡史、石井光
 弁護団:4名(弁護士)
 緑の大地を守る会:20名程度(高橋由信、櫻井ひろ江、金井久男ら3市議含む)。

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会社側の紹介と挨拶。

会社司会:皆さん、おはようございます。(場内一同:おはようございます)環境管理室を担当しています中島でございます。本日の工場視察会におきまして、会社側の司会を担当させていただきますので、よろしくお願いいたします。それではまず会社側の出席メンバーの紹介をさせていただきます。まず、本社から総務本部長の乙葉取締役でございます。

会社取締役:乙葉でございます。どうぞよろしく。

会社司会:隣が、当社の顧問弁護であります眞田弁護士でございます。

会社弁護士:どうも、よろしくお願いします

会社司会:次に本社環境管理部の石井部長でございます。

会社環境管理部長:よろしくお願い申し上げます。

会社司会:続きまして、安中製錬所のメンバーでありますが、所を代表します秋山常務執行役員・所長でございます。

会社所長:よろしくお願いします。

会社司会:次に副所長の吉澤でございます。

会社副所長:よろしくお願いします。

会社司会:それと、環境管理室を担当しております、私、中島の6名で本日の工場視察会を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。では、続きまして朝の代表挨拶を頂戴したいと思います。安中緑の大地を守る会会長、藤巻千浪様、よろしくお願いをいたします。

会長:私はあのう、声がでけえから、マイクは使わずにやります。皆さん、ご苦労さまでございます。本日は、忙しいところを、弁護士の先生の方々、また、市会の議員さんの方々、団員の皆様、会社の皆さん、大変ご苦労様でございます。第20何回という、会でございましてご苦労様です。まあ、サクラも咲くしいい陽気になりまして、また、そのような下で出来るということは本当に喜ばしいことです。どうか、この会を通じて、またいろいろな意見を出したり、また出して、会を進展させていきたいと思っております。同か皆さまもご協力をお願い致します。大変言葉は尽くせませんが、大変おせわになりました。よろしくお願い致します。最後に皆々様の益々のご繁栄をお祈り申し上げまして、私の簡単ではございますが、ご挨拶とさせていただきます。大変ありがとうございました。

会社司会:ありがとうございました。続きまして、会社を代表いたしまして、所長の秋山よりご挨拶を申し上げます。

会社所長:えー、皆さん、おはようございます。(場内から「おはようございます」)所長の秋山でございます。視察会に当たりひとことご挨拶を申し上げます。この視察会は平成4年から始まりまして、安中緑を守る会と東邦亜鉛が協議会、それから視察会を通じて、皆さんと信頼関係の維持拡大、それから公害防止に関する相互理解、などを目的に今回で4半世紀の25年と、いう長い年月を迎えております。長きに亘り大変ありがとうございます。さて会社の操業面につきましては、順調に推移しておりますが、ただ、残念なのは収支面におきまして、亜鉛価格の大幅な下落によりまして、保有するオーストラリアの鉱山ですね。この運営が大変厳しく大きな損失を計上しております。まあ、一方、環境面につきましては、順調で関連する法規制も問題なく遵守しております。視察会を通じ、引き続き、これまで同様に皆様がたのご指導、ご協力を頂けますよう、お願いいたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。以上です、

会社司会:続きまして、本日の視察コースや日程につきまして、副所長の吉澤より説明をさせていただきます。

会社副所長:おはようございます。(場内一同「おはようございます」)管理監理室長を兼務しております吉澤です。よろしくお願いします。えー、レジメがありますけれども、まあ、昨年とですね、同様に製錬所内の精鉱工程の流れにそって、公害防止設備を中心にこれからご案内をさせていただきます。いま、所長からありましたように、昨年はですね、大きな天災、大雪だとか大雨だとか、そういうのも無くて、操業も順調に推移をしてきましたので、昨年と比べて大きな変化はないんですけれども、ぜひ安定して操業している状況をご視察をチアだきまして、安心を、お持ち帰りをいただきたいと思っております。コースについては、このようにありますけれども、今年もマイクロバス2台を用意させていただきまして、健脚コースについては、各視察場所でですね、バスから降りてのご案内となりますので、ヘルメットの着用をよろしくお願いをいたします。案内は、環境管理室の中島課長がご案内をします。ゆったりコースの2班については、バスの中からの視察ということにあります。視察中はバスを降りないので、まあ、乗り降りがつらくなられるかたにはご乗車をお勧めします。ヘルメットも被らずですね、気楽に行けると思います。案内は私が担当させていただきます。注意事項としてまず1点目のお願いですけれど、場内での写真撮影はご遠慮いただきたいということで、カメラ等は場内には絶対持ち込まないようにお願いをしたいと思います。塀の外では構わないんですけれど、中のほうは勘弁してほしいと。それから健脚コースのかたはバスを降りて工場内を歩いていただきますけれども、安全確保を大前提に、足元にご注意いただくとともに、設備や製品にですね、絶対に手を触れないようにお願いをしたいと思います。では、これから視察に入りますけれども、その前にせっかく桜も満開に咲いていますので、記念撮影をしてからバスにご案内したいと思います。撮影についてはですね、玄関で撮影したいというふうに考えていますので、これから誘導をよろしくお願いしたいと思います。以上です。

会社司会:えー、では、ただいまより工場視察に出発したいと思います。今、副所長の方からご案内がありましたとおり、出発前に玄関前で写真を撮影したいと思いますので、玄関前に集合をお願いいたします。なお、その前にトイレ等行かれる方については、トイレ等済ませて、玄関前に集合をお願いします。では、よろしくお願いいたします。


事務棟2階の大会議室の隅に置かれてあった安中製錬所のジオラマ。

<記念撮影後、工場視察に出発する>

会社司会:私ですね、場内視察を担当します環境管理室の中島でございます。えー、よろしくお願いをいたします。(車内から、「よろしくお願いします」)えー、先ほど、吉澤のほうからですね、レジメのほうにコースがあるというふうにご説明ありましたですけれども、このバスはですね、第1班、健脚コースということでですね、会場を出まして、この後ですね、工場の一番最上部、一番上へ上がってですね、それから下に降りながら、順次、視察をしていただきますのでよろしくお願いをいたします。視察する場所としましてはですね、一番工場の上に最終処分場がございますので、こちらをまず最初にご視察いただきます。そのあとですね、排煙脱硫工程を見ていただきまして、その後、ロータリーキルン、を見ていただきます。そのあと、新電解工場を見ていただきます。その後、8号のバグフィルター、これは集塵設備になります、そのあと第2鋳造工場、浄水の展望台、こちらでは排水処理の工程を見ていただきたい。その後、硫酸工場を最後に見ていただいて会場へ戻ると、いうような視察ルートになります。当社はですね、主に、亜鉛、鉛の地金を生産しております。その他には、電子部品材料ですとか、粉末冶金部品、こういったものを生産しております。当安中製錬所では亜鉛地金と亜鉛合金地金、硫酸、粉末冶金による焼結部品などを製造しております。亜鉛につきましては、年間12万トン、月に1万トンを生産しております。国内では20%強のシェアを持っているということになります。生産した亜鉛の65%くらいが自動車などに使用されます薄板鋼鈑メッキに使われております。

<坂を上りスラグ置き場の脇を通って最上部に向かい、3分ほどで到着する>


東邦学園の前の建物は撤去され、その後グラウンドだったが、平成23年の鉱山法改正を機に、経産省と結託して東邦亜鉛がここを掘って、安定型産業廃棄物最終処分場を作った。同法改正による特例期間中は、群馬県への設置手続が不要ということで、将来を見越して強引にサンパイ場を作ったのである。これが東邦亜鉛の常套手段だ。

昭和40年代には北野殿北浦に同社の従業員家族の社宅があった。

会社司会:えー、こちらが最終処分場になります。ここではちょっとバスを降りずに、バスの中からご覧いただきたいと思います、この最終処分場、安定型になっていますが、そこには遮水シートが貼ってあります。この遮水シートで、ですね、浸透水を回収して排水処理工程で排水を処理すると、いう構造になっております。埋立面積は2083㎡、容積としては1万2700㎥ほどございます。まあ、見てのとおり、最終処分場としては非常に小規模なものとなっております。平成25年の1月に、ですね、使用開始と、いうことになっていますが、実際のところですね、「まだ全く埋め立てをしておりません、まだ未使用と言う状態でございます。最終処分場については異常でございます。

参加者A:あの、右側の堆積物は、あれは雑草ですか。
会社司会:あれはこの葉っぱです。松の葉っぱ。
参加者A:うーん、あれも一応(処分場の中に)入っちゃっているから・・・天然のものかもしれないけれど、それも容積になっちゃうんじゃないですか。
会社司会:そうですね・・・、まあ、通常は時々は(掃除)しているんですけどね。
参加者A:まあ、気になるところですよね。

<バスはバックしてから、再び上ってきた道を下り始め、30秒もしないうちに停車する>


主排気塔と排煙脱硫装置及びその周辺施設。

会社司会:えー、こちらがですね、排煙脱硫工程になります。ロータリーキルンで発生します排ガス、こちらはですね、ガスクーラーで冷却して、バグフィルターで粗酸化亜鉛、を、回収をしております。で、その後のですね、ガス、については、こちらの排煙脱硫工程に送られて、処理をされております。えー、こちらに来る排ガスですね、亜硫酸ガスを含有しておりますので、こちらを亜鉛華TCA、亜鉛華TCAと申します。それと、苛性のTCA・・・苛性ソーダのTCA、それと水のTCA。この3つのTCAで脱硫、水洗をしてですね。その後、排ガスを排気塔から大気中に排気をしているという工程です。この、3つのですね、亜鉛華TCAがこの後ろの方にある、あの塔でございます。で、このですね、苛性のTCA、それが、この正面にある、向かって左側にある塔がこちらの苛性の、苛性ソーダのTCAです。その隣がですね、右隣りが、水のTCA、洗浄塔になっています。で、その奥ですね、水色の、あの、排気塔が、まあ、上から蒸気が出ていますが、こちらが排気塔。こちらから排ガスをしていく、ということになります。えー、まず亜鉛華TCAですけれども、ロータリーキルンで回収した粗酸化亜鉛、こちらを水で乳化をしたものを、吸収材として、あの塔のですね、上から、まあ、乳化した粗酸化亜鉛を降らせると。で、ガスをですね、下から入れて、で、この粗酸化亜鉛をですね、シャワー状で降らせまして、ガスと接触をさせて、脱硫をしていると、いうものでございます。で、あの塔の中にはですね、こういったピンポン玉くらいの大きさのボールがたくさん、3段、入っております。で、こちらをですね、ガスを下から入れることによって、これがこう動くんですね。で、液体は上から降ってきますので、ここで水と液体がよく接触するように、というような構造になっております。で、亜鉛華のTCAを通ったあと、その次の苛性ソーダのTCA、こちらも構造的には全く同じものでございます。ただ、吸収材として使っているのが、亜鉛華ではなくて、ここでは苛性ソーダを使っています。苛性ソーダはですね亜硫酸ガスと良く反応して亜硫酸ソーダとして脱硫をしているというものです。で、そのあとですね、水TCAにガスを送りまして、水で、さらに洗浄をして排気等から排気と、いうことになっております。こちらでは以上のようになります。では、引き続きまして、バスに戻りまして次の視察場所に向かいます。

参加者A:苛性ソーダのタンクはあれですか?苛性ソーダのタンク。
会社司会:えー、そうですね。
参加者A:ね。あの一番手前の奴ですね?
会社司会:いや、FRPの。
参加者A:あの、デカイやつ?
会社司会:あの、シールを貼ってあるタンク。
参加者A:ああ、あれね。わかりました。鉄だと錆びるからね。

<バスに乗り、更に坂を下る>

参加者A:(道路の)右の側溝の上にホースを配置しているのは?
会社司会:それはですね、雪が降った時に温水を流す・・・、融雪装置というんですね。
参加者A:なるほど。
会社司会:結構、雪が降っちゃうと、もう、流水が止まっちゃうものですから、溝の中の。
参加者A:そのためにだけに、あそこで、そうやっているわけ?
会社司会:はい。年に何回も有ることではないんですけれども・・・。
参加者A:ふーん。

<やがて3分ほどで、スラグ堆積場の脇から山の斜面の中腹にある昔の焙焼施設脇の通路を抜けてロータリーキルンの現場に向かう。途中、古びて今は使っていない焙焼炉の並ぶ場所だが、今回はなぜか、目隠しをするように、通路の左側をブルーシートで覆ってあった>


ロータリーキルンとドライヤー施設。

参加者A:あのう、このブルーシートは、何か(古い焙焼炉の)撤去工事かなんかの準備をされるんですか?そういう計画があるんですか?
会社司会:いや、そんなことはないですね。それとは・・そんなことはできないと思います。

※感想:公害問題の元凶の一つだった古い焙焼炉を撤去すれば、スペースが空き、スラグ置き場にすることも可能なのに、スクラップアンドビルドさえせずに、あらたに工場の東端の旧変電所施設に、スラグ置き場を新設しようという。公害対策の投資を渋る東邦亜鉛の体質を如実に示す一例と言える。

<すぐにロータリーキルンの現場に着く>

会社司会:えー、ではこちらで降りていただいてですね、ロータリーキルンの視察をしていただきます(と言ってバスを降りる)。えー、こちらが、これがロータリーキルンですね。この正面の上の、回転しているものがロータリーキルンでございます。こちらはですね、まず、ドライヤーというもので一次鉱滓、まあ、乾燥機になるんですけれども、まずこれで、乾燥をします。で、その乾燥をしたものにですね、コークスを混ぜて、このドライヤーに給鉱をします・・・あ、すいません、ロータリーキルンに給鉱します。ロータリーキルンはこちらです。で、このロータリーキルンですね、えー、まあ一次鉱滓とコークスを入れるんですけれども、ここに入れた後ですね、重油を燃焼させて、このロータリーキルン、1300度から1350度くらいで、燃焼させてですね、一次鉱滓中の亜鉛、こちらを、揮発をさせております。で、揮発させた亜鉛をですね、空気を接触させまして、酸化物として、ガスクーラーですとかバグフィルター・・・ガスクーラーとかバグフィルター。こういったもので粗酸化亜鉛を、捕集をするという工程になります。で、この粗酸化亜鉛につきましてはですね、亜鉛の原料として使用をしております。で、えー、こちらから、入れてですね、こちらからモノが出てくるんですけれども、出て来るモノについては、鉄分を多く含むクリンカーというモノが出てきます。こちらは冷却をしてですね、砕いた後、粒度を揃えてですね、鉄源として販売をしております。ロータリーキルンは以上でございます。では、次の視察場所へ移動したいと思います、バスへお戻りください。

参加者A:バーナーはそこで吹き込むんですか?逆サイド?
会社司会:バーナーは向こうです。モノが向こうから来て、バーナーはこっちです。モノはこっちから入って、バーナー(の炎)はこっちから入る。
参加者A:ああ、尻の方からね。

※感想:バーナーは向かって右手の奥のロータリーキルン(RC)の終端に設置してあるのだという。最終的に投入側から次第に温度を上昇させ、反応を進めていき、最終的に温度を上昇させきってから、スラグ(=クリンカー)として取り出すために、バーナーを終端に設置しているのだという。ただし、このバーナー側がどうなっているが、これまでの工場視察会では一切、近付かせてもらえない。会社の説明ではRCのバーナーの燃料は重油だというが、当会に寄せられた告発情報では、東邦亜鉛では廃油やピッチ類などのサンパイをRCの熱源として使っているという。この疑惑について昨年同社に確認したところ、そんなことは絶対にない、と直ちに否定されたが、実際の稼働状況は未だに謎のままだ。

<スラグ置き場を右手に見ながら、再び坂を下り、工場の東の方に向かう。新電解工場前に近付くと、右手の山林との間を流れる沢に沿って、道脇に不審な木の杭が並んで打たれているのが見えた。2分余りで新電解工場前に到着する。>


木の杭の正体は、視察会のあとの協議の場で明らかになった。上のジオラマ写真は、東邦亜鉛が高崎信金との裏取引で農民からぶんどった土地。高圧変電所を建設するはずだった。今回、なんとここをスラグ置き場にすることが発覚。↑


かつて鉱滓を埋め立てた土地の上に、4年前に建てられた業界でも最新鋭と言われる新電解工場。

会社司会:えー、では、こちらでですね、新電解工場をご覧いただきます。
まずですね、工場の中を見ていただく前に、亜鉛電解について少しご説明をさせていただきます。えー、槽の中にですね、こちらが亜鉛の・・硫酸亜鉛の溶液、まあ、電解液というふうに申していますけれども、硫酸亜鉛の溶液を、槽の中に入れています。その中にですね、えーとまず、プラス極、陽極板と言いますけれども、鉛の板ですね、一番向こうの端、あれが陽極板と申しましてプラス極ですので、そちらを入れてあります。その隣がですね、陰極板、まあ、カソード板とも呼びますけれどもアルミ製の板、こちらです。ですので、鉛の板とアルミの板。こちらを、硫酸亜鉛の溶液を張った槽の中に、交互に入れてあります。プラス、マイナス、プラスというふうに。で、この陽極板、陰極板にですね、直流の電気を掛けます。そうしますと、亜鉛はですね、プラスなものですから、マイナス極、アルミ板の方に、表面にですね、析出をします。まあこれ、電気分解ですね。真ん中にございますのがアルミの板、陰極板に亜鉛が付いた状態です。こちらですね。このアルミ板、表面に付いているのが、亜鉛です。こういったことで亜鉛の電気分解をしている工場でございます。えー、まあ弊社でですね、海外から原料を購入してますけれども、まあ、鉱石という形で購入しております。そのあと、溶液に溶かしてですね、ここで初めて亜鉛の形になるという工程でございます。では工場に入ってですね、電解工程を実際に見たいと思います。

参加者A:アノードは減耗しないですか?ずっと大丈夫?
会社司会:減らないです。
参加者A:(鉛に)銀を入れてるのは?
会社司会:強度を持たせためです。鉛はちょっと柔らかいですから。
参加者A:どのくらい入れていますか。ちなみに。
会社司会:そこまでちょっと。私はそこまで細かいことまでは。
参加者A:企業秘密?
会社司会:いや、そうではなく、微量ですよ。高いですから。

<タラップを上り、電解工場内へ>

会社司会:こちらが電解工場になります。先ほどご説明をさせていただいたようにですね、これが亜鉛の電解液を入れています槽です。この内側にですね、先ほど説明した硫酸亜鉛の溶液になります。ここに亜鉛が溶け込んでいるということです。いま見えます右側の板がですね、さきほど申し上げた鉛の陽極板でございます。その隣りにネズミの濃いのが・・・板が入っていますけれども、こちらがアルミのマイナス極、陰極板になります、この表面に、アルミ(亜鉛の間違い)が今、少しずつ、析出、電着をしているところです。ですので、この鼠色の板をですね、この後、引き揚げまして、ここからアルミの板をはぎ取ってそれを我々は生産しているということになります。ここ電解工場では以上でございます。次へ移動したいと思います。

参加者A:あれ、ショートする時はあります?例えばネズミとか何かが出て来て。
会社司会:ネズミはないですね。
参加者A:では、何か針金が落ちたとか?
会社司会:針金もないですね。あのう、異常成長があって、というのはあります。
参加者A:ああ、局部的に析出が多くなって。
会社司会:そうです。
参加者A:そういうことがあるんだ、ね。
会社司会:まあ、めったにある事ではないですけど。まあ、そうなっちゃうと効率が悪くなっちゃうんですよね。常時点検をして、そういうことのないようにしてますけれども。
参加者A:なるほど。やっぱり電流に偏差があるんですかね。よう、わからんですけど。
会社司会:・・ですかねえ。

<再びタラップを降り、車に乗り次の8号バグフィルターの場所へ>

会社司会:ここにはですね、4基のバグフィルターが設置をしてあります。このバグフィルターは、8号炉用の集塵機になっております。さきほど電解でみていただいたカソード亜鉛、それを溶解をします。その時に、酸化物が発生をします。これを集塵するための装置でございます。えー、バグフィルターは、ここにございますようなバグチューブ、こちらにですね、煤塵を含むガスを通過させて、煤塵を、捕集をいたします。除塵率としては99.5%以上。非常に高い集塵率をもっております。煤塵を含むガスをですね、こちらのバグフィルターの下からガスを入れまして、えー、まあ、こういうところからガスが抜けてくるわけですね。で煤塵はこの中に捕集されます。このバグチューブですね、万が一破損した場合はですね、スモークディテクターという煙を関知する装置で、検知ができるようになっています。スモークディテクターですけれども、こちらにちょっと図がございます。こちらがですね、ガスが通る煙道、ダクトですね、こちらをガスが通るんですけれども、投光器と受光器というのがございまして、こちらから光を出します。で、こちらの受光器でその光を受ける、で、ここをガスが通っていますのでもしここのガスにですね、煤塵が多く混じりますと、一刈を遮るということで、受光器の受光量が減ると。これによってバグフィルターの異常を検知しております。ちょっと模型がございますので、こちらでやってみます。こちらで光を出して反射をして、受光しています。えーと、ここに、例えばですね、こんな粉をこぼします。粉がこぼれると・・・(ピーッ、ピーッという音が発生する)警報が出る。これで異常を検知というふうな構造になっております。ここでは以上です、次に調合亜鉛のほうに移りたいと思います。

<徒歩で30mほど歩いた溶解工場に移動する>

会社司会:えー、こちらはですね、調合亜鉛を製造しています工程でございます。調合亜鉛についてはですね、高炉メーカーへ納入をしております。こちらにあるのが調合亜鉛になります。えー、高炉メーカーではですね、薄板鋼鈑メッキ、まあ、自動車等に使われるものですね。こちらのメッキに使用をされております。調合亜鉛につきましてはですね、他の金属、まあ、亜鉛だけのもの、純亜鉛という、この純亜鉛の、ジャンボインゴット、この少し虹色がかっているところ、これが実際のジャンボインゴットとでございます。で、あちらがですね。アルミニウムが添加された、まあ、調合亜鉛でございます。えー、で、先ほど、あの、電解工場で見ていただいたカソード亜鉛をですね、えー、一番上にあります溶解炉で、えー、溶解をしてます。こちらは亜鉛の溶解、温度は500度Cほどになります。で、ちょっと見ずらいんですけれども、さっき左側にですね、重油バーナーでアルミニウムを溶かす炉がございます。えー、まあ、最終は誘導炉で溶かした亜鉛と、石油バーナーで溶かしたアルミニウムを混ぜ、調合してですね、で、まあ、こちらにありますような調合亜鉛、まあ、こちら側から見ますと、左側にオレンジ色、真ん中にはピンク、右側には黄色のケース、ジャンボインゴットケースというのがありますけれども、あちらの金型に流し込んでですね、冷却をして凝固をさせて、抜き出すと、まあこういった調合亜鉛、ジャンボインゴットを製造している工程でございます。えー、では、次にですね、電気亜鉛の工程に移動したいと思います。

参加者B:冷却には水を使っているわけですか。
会社司会:えーと、ジャケットで冷却をしています。金型の外側です。直接じゃなくて、はい。
参加者A:今から10数年前に爆発事故をこの辺で起こしています。水が原因でした。
※参考⇒http://www.jpubb.com/press/34069/
参加者B:えっ、そうなんですか。

<すぐ隣りの電気亜鉛溶解工場まで歩いて20mほど移動する>

会社司会:えー、こちらがですね、電気亜鉛を製造している工程です。電気亜鉛についてはですね、メッキですとか、伸銅とか、真鍮、そういったものに使用されております。調合亜鉛と同様ですね、あの、一番上の方にグレーの塔がございますけれども、あそこの下に低周波誘導炉がございます。こちらで500度Cほどの熱をかけて溶解をしております。えー、うしろのほうにあるのが完成品になります。1枚が20キロございます。50枚積み、一山で1トンの量です。この製造の方法としては、調合亜鉛と同様ですね。溶解をした後、金型に流し込む。で、冷却をして金型から取り外す。えー、離型をして、積み込む、というような工知になってございます。積み込みについてはご覧のとおりロボットにより積み込んでいます。電気亜鉛の工程については以上でございます。えー、次の場所に移動したいと思います。バスにご乗車ください。

参加者A:すいません、重油加熱と誘導加熱で使い分けているのはなんでしたっけ?理由は?
会社司会:温度が違うんです。アルミは融点が高いので。低周波誘導路だと持たない。温度的に。
参加者A:しかし、誘導加熱の場合は1000度以上も可能ですよね。物理的にはね。温度コントロールするという問題ですか?
会社司会:モノ自体が持たない。設備自体が熱に。
参加者A:ああ、そういう材料を使っているだけね。
会社司会:ええ、耐熱性がないから。
参加者A:なるほどね。
会社司会:そこまで温度を上げるのは低周波じゃなくて高周波になる。
参加者A:ああそうか、低周波をつかってらっしゃるわけね。なるほど。ところで粉末冶金は藤岡でやっているんですか?
会社司会:ここでやっています。
参加者B:まだやっているんですか?
会社司会:はい。

<バスは構内を西へ移動し、2分ほどで排水処理施設前に着く>

会社司会:こちらで排水処理工程をご覧いただきます。


中央手前やや右が水処理施設。その右側が硫酸工場。

<タラップを上り排水処理施設が見渡せる展望台に出る>

会社司会:えー、こちらがですね、排水処理工程になります。えー、まずですね、この排水処理工程ですけれども製錬工程で発生します雑排水、こちらをですね、こういった排水ですとか、雨水、こういったものを集水池に集めております。集水池につきましては、第1集水池、第2集水池、第3集水地、第4集水地とございます。えー、こちらからですとね、向こうの遠くの方に見える池が集水池になってます。ですので、あそこに汚水が入っていると、いうことになります。で、集水地に集めた汚水を、ですね。まずですね、えー、中和槽、こちらに送ります。こちらではですね、えー、苛性ソーダを添加しまして、えー、pHをアルカリ性に調整をしてます。苛性ソーダを添加してpH調整をしています。で、苛性ソーダを添加することでですね、排水中の金属イオン、これが、水酸化物となって沈殿をします。えー、で、中和した液をですね、今度はシックナーに送ります。で、こちらでは、沈降剤を添加しながら、まあ、先ほど出た水酸化物を、沈殿をさせます。えー、固液分離ですね。えー、澄んだ水、きれいな水はオーバーフローに。出た沈殿物は、下から・・・沈みますので下から、スラッジとして抜き出します。で、こちらのスラッジはですね。フィルタープレスで水を抜いてですね、そのあと、溶解槽に送って、まあ、金属ですんで、もう一度、亜鉛の製錬工程に送って、原料としております。えー、一方ですね、オーバーフローした水の方はですね、えー、沈殿池に送られます。で、ここでもう一度ですね、固液分離、要は、まあ、僅かに残った固体については、下へ沈むようなことになりますけれども、オーバーフローのきれいな水を、今度は砂ろ過機に送ります。で、こちらで更に濾過をしてですね、えー、固形物をとって、最後にですね、もう一度ペーハー調整、pH調整を、硫酸を添加しまして、中性にしまして、えー、延長放流路を通って、弊社の排水はですね、ここから5キロほど下流にあります、えー、(高崎市)乗附になるんですけれども、ここで排水を、碓氷川にしております。えー、ここでは、汚水を一度まず中和して・・、えー、中和することで、えーと、そうですね、アルカリ側に中和することで金属が析出・・、水酸化物として析出をして、その析出した金属に関してはスラッジという形で、回収して、亜鉛の原料として使うと。で、水については、一度、固液分離をして、さらに固液分離、えー、精密ろ過をして、最終pH調整をしたのちに、排水と、いうような処理工程で、排水については処理をしております。

参加者B:中和剤、前は石灰を使ってましたよね?
会社司会:はい。
参加者B:石灰と苛性ソーダとは、どのようにちがうんですか?
会社司会:苛性ソーダのほうが高いことは高いと思います。すいません、金額まではちょっと自信がないです。ただ、こちらのほうが、中和した後の、まあ水酸化物の除去率が全然いいものですから、まあ、おカネには替えられないという、こちらの方が間違いなく効率・精度がいいものですから、はい。こちらを使わせていただいております。
参加者A:雨水由来の集水池って、どこですか?
会社司会:えーと、みんな一緒です。あの、4つとも基本的には・・・。
参加者A:なんだ、みんな混ぜちゃうのね。もったいないな。
会社司会:では、次の硫酸工場へ移動したいと思います。バスにご乗車ください。
参加者A:なんだ、大雨が降ったら、そのまま流すんですかね。
参加者B:あのう、すいません。雨水と排水は区別が無いんですか?
会社司会:ないです。ないです。
参加者B:基本的には。
会社司会:ただ、どちらかと言うと、4とか3は雨水が多い。1と2は工場排水が多い。
参加者B:海抜が低いということ。
会社司会:ではないんです。位置関係です。排水ルート関係でそういうふうになっていると、いうことです。特別、そのう、碓氷しか入っていないというのはないですね。
参加者B:ああそう。
参加者A:なんか、それちょっと誤解を招くね。排水図をみると。
参加者B:なんかね、2つあるような気がする。
参加者A:ああ、完全に分かれているなあ、これはいいコンセプトだなあと思ったんだけど。なんのことはない、みんなまぜているとは。
参加者B:私もそう思った。
参加者A:私も、あの絵を見て、これは(雨水と排水を)分けているからこれはいいなと思ったのに。

※感想:排水処理施設の説明用の図は、誤解を招きやすいので、直ちに修正の必要があると感じた。

<再びバスに乗り、さらに1分ほど下って、一番安中駅側に近い場所にある硫酸工場に移動する>


硫酸工場。

会社司会:えー、こちらが硫酸工場になります。えー、まず、焙焼炉というところでですね、鉱石を焼いております。で、焼いた時にですね、亜硫酸ガスが発生をします。えー、この亜硫酸ガスのですね、温度を下げてから、塩ビ製のパイプラインでこの工場へ送っております。で、そのダクトがですね、ちょっと見ずらいんですが、あちらのグレーのダクトですね、こちらにも見えますけれども、このグレーのダクトでこちらまで排ガスを、燃焼ガスを送っていると、いうことでですね。こちらで一番最初の工程が、この1とあるミストコットレルになります。このミストコットレルはですね、ガス中の水分を除去することを目的として設置がされています。えー、高電圧をかけた、まあ、部屋にですね、湿気を帯びましたガスを通しまして、集塵極で、ミストとかダスト、これを集めて除去する装置となっています。で、ミストコットレルの次がですね、この2と書いてある乾燥塔になっています。えー、こちらではですねミストコットレルで除去しきれなかった成分を更に除去をするということで、設置がされております。この乾燥塔ではですね、95%の硫酸をですね、降らせて、ガスと接触させまして、水分をですね、硫酸で吸収をしております。乾燥塔を通ったですね、ガスが、今度は熱交換器に・・・熱交換器はですね、えーと、この4と書いてある3つと、6とある、合計5基ございます。えー、で、この熱交換器はですね。次の転化器で、転化をさせるんですけれども、そのための温度調節をしているものでございます。まあ、440度くらいまで温度を上昇させています。で、熱交換器で温度調節をしたガスはですね、今度は5と書いてある転化器という装置に送られます。転化器はですね、えー、440度CにされたSO2のガス、焙焼炉からきたSO2のガスをSO3に転嫁をしております。SO2のガスのままではですね、なかなか硫酸にできないので、一度SO3のガスに転化する必要があると、酸化する必要があるということです。えーと、この転化には五酸化バナジウムの触媒を使って、まあ、反応を助長させて、促進させてあります。えー、転化器でですね、SO3となったガスを、今度は、吸収塔、ここで言いますと7と8ですけれども、こちらの吸収塔でですね、えー、SO3ガスを水と接触させて、えー、反応させます。それで、硫酸を、製造をしております。98%の硫酸にSO3ガスを接触させて、硫酸中の残りの2%の水分。こちらと反応させて、濃硫酸というふうに反応させて、硫酸を製造しております。で、反応した後のガスですけれども、こちらですね、乾燥ガスが出ます。えー、この、亜硫酸が抜けた後のガスについては、えー、9と書いてある調質塔、cちらに送られます。えー、この調質塔はですね、そのあとに、あの、ミストコットレルを通るんですけれども、ミストコットレルで除塵をするために、調質、要は水分を少し加えるということですね、ということと、もう一つは、排ガス中に残っていますSO2ガス、まあ微量で残ってますんで、こちらで苛性ソーダを使ってますので、ま、吸収をしていると、いう、この2つ、調質をすることと、残ったSO2ガスを苛性ソーダで吸収していると、いう2つの役目を持っております。で、調質塔を経たですね、ガスについては、最後の除外ミストコットレルで水分を最後、水分を除去しまして、最終排気塔から、まあ、排気をすると、いう工程になっております。えー、硫酸工場については以上でございます。以上で視察場所、終わりとなります。バスに乗っていただいてですね。会場に戻りたいと思います。よろしくお願いをいたします。

参加者A:そこの矢印が往来しているところは
会社司会:ガスが行ったり来たりしている。
参加者A:最終的に8から9の大きな矢印の方に持っていくわけでね。
そうです。そちらが排ガスのルートですね。
参加者A:じゃあ、循環させて、既定のSO3というか、濃度になったというのを選択的に送っているわけですか?バッチ式でやっているわけではないですよね?
会社司会:バッチ式ではありません。連続式です
参加者A:計器を見ながらね。
会社司会:はい、そうです。
参加者A:バルブを開けながらやるんでしょう?
会社司会:そうです。
**********

【ひらく会情報部・この項続く】

※参考資料「工場視察会 会社側配布資料」
①ようこそ安中製錬所へ 
20160409mb.pdf
②安中製錬所カタログ
20160409mbjop1.pdf
20160409mbjop2.pdf
20160409mbjop2p5.pdf
20160409mbjop3p4.pdf
20160409mbjop6.pdf
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大同スラグ裁判・・・裁判長の訴訟指揮が冴えわたった第4回口頭弁論の様子

2016-04-22 23:55:00 | スラグ不法投棄問題
■群馬県吾妻農業事務所による東吾妻町萩生川西地区における圃場整備事業に伴う農道整備工事で、あろうことか有毒物質をふくむ大同スラグが敷砂利として不法投棄されたにも関わらず、それを撤去しないまま上に舗装で蓋をしてしまった問題で、当会は、2015年4月30日に訴状を前橋地裁に提出しました。あれから、ほぼ1年が経過する2016年4月22日に、第4回目の口頭弁論が前橋地裁で開かれました。

裁判書類を袋に入れて県庁からゾロゾロと前橋地裁に歩いて向かう被告群馬県職員ら。




まもなく第4回口頭弁論が10時30分から21号法廷で開かれる前橋地裁の正面風景。

 当会では、当日朝10時過ぎに前橋駅からタクシーで県庁に到着したあと、徒歩で前橋地裁に向かいました。地裁1階ロビーには、次の内容の張り紙がしてありました。

**********
第21号法廷(本館2階)開廷表
平成28年4月22日金曜日
開始/終了/予定:10:30/10:40/弁論
事件番号/事件名:平成27年(行ウ)第7号/住民訴訟事件
当事者:原告:小川賢 外/群馬県知事大澤正明
被告代理人:関夕三郎
担当:民事第2部合議係
   裁判長 原道子
    裁判官 佐藤薫
    裁判官 根岸聡知
    書記官 清宮貴幸

**********

 2階に上がると、エレベーター前で県職員数名の面々が立ち話をしていました。挨拶をして、奥の第21号法廷にいくと、当会会員が早くも待機していました。ちょうど第21号法廷の傍聴席のドアが開けられたので、中に入りました。既に被告訴訟代理人の弁護士がおり、出頭カードの被告欄の笹本と書かれた名前に○が付けられていました。

 まもなく当会の事務局長も駆けつけて、原告席に座って開廷を今や遅しと待っていました。すると、珍しく裁判長は陪席の裁判官2名を引き連れて、開廷の3分ほど前に入廷してきました。その際、なぜか被告の県職員らは、まだ廊下で立ち話をしていたらしく、法廷に姿を見せませんでした。訴訟代理人の弁護士が慌てて呼びにいきました。

 裁判長は被告がゾロゾロと入ってくるまで静かに待っていました。そして定刻の10時30分になり、書記官が事件番号を読み上げて、開廷を告げました。

■第4回口頭弁論が開始されました。

 裁判長は、さっそく「本日は第4回目の口論弁論期日であり、原告側から準備書面(6)が提出されているので、原告はそれをそのとおり陳述したいということだね」と問いかけてきました。原告は「はい、陳述します」と答えました。

 裁判長は続いて「昨日準備書面(7)をもらったけど、まだ読めていない。基本的には準備書面等は期日の1週間前までに出してもらわないと読めない。準備書面を読んでから法廷に入れるようにすること」と原告に対して注意喚起をしました。原告は「すいません」と答えました。

 次に裁判長は「被告は第3準備書面を陳述することでよろしいか?」と確認を求めました。被告の訴訟代理人は「はい、陳述します」と答えました。

 裁判長は書類の提出について、原告に対して「甲43号証は原本なのか?」と質問しました。原告は、裁判官が、証拠写真を見て事実を把握しやすいようにカラーコピーで甲43号証を提出したため、裁判長は原本提出と感じたようです。原告は、「それはカラーコピーであって、原本ではありません。原本を持ってきましたので、ご確認下さい」と述べて、原本を書記官に渡しました。

 書記官はそれを裁判長に見せると、裁判長は「甲43号証は原本ということでよいね」と確認しました。書記官はそのあと、被告にも原本を見せて、間違いなく原本であることの確認を求めました。被告からは異議は出ませんでした。

 裁判長は続けて、「甲44、45、46、47は写しで提出ということだね」と確認してきたので、原告は「そうです」と答えました。裁判長は「では、甲47まで提出」と確認の言葉を発しました。昨日、原告が裁判所に提出した準備書面(7)と甲号証について、裁判長は、まだ原告準備書面(7)に目を通す時間がなく、「次回陳述ということにする」と言いましたが、甲号証は受理されたことになりました。

 次に裁判長は、乙号証について「5から9までだね」と、被告に確認をした後、「被告にお伺いしたい」として、本件の工事名の読み方について、「萩生川西地区とあるが、これは萩生川・西地区なのか、萩生・川西地区なのか。どっちなのか?」と被告に問いました。

 被告として出廷した職員のひとりが「萩生川・西地区です」と答えると、裁判長は「川で、切るのだね?」と念を押しました。すると、別の被告職員が、「おい、違うぞ」と耳打ちをしました。最初に応えた職員が慌てて「あ、すいません。萩生で切って、川西地区です」と訂正しました。

 裁判長はこの事件に重大な関心を寄せていらっしゃる様子で、「調べてみたが、萩生川というのはあの辺には見当たらない。川はないのか?工事名は萩生の西地区なのか?」と、現場の工事名さえ、あやふやな被告の回答に不満の様子で、あらためて被告に確認を求めました。

 被告はようやく「萩生・川西地区です」と答えるのが精いっぱいでした。いくら4月に異動で被告の指定代理人として初めて出廷したとはいえ、きちんと前任者から、現場の地名くらい教えてもらわなかったのか、と呆れてしまう対応には、公僕としての自覚が足りないと思いました。

 裁判長もおそらく同じ思いだったことでしょう。「それを知りたかった」と述べた背景には、部外者の裁判長でさえも、現場の地名を調べたのに、当事者の群馬県職員が、地名の確認さえしていないことに、驚きとともに、失望を感じたかもしれません。

 そのためか、裁判長は被告に対してさらに訴訟指揮を行いました。「原告準備書面(5)の3ページのところだが、準備書面(5)のなかに、萩生地区の支道27号から基準値を超えるフッ素が検出されたという主張があるね?」と裁判長から問われた被告は、「はい」と答えました。

 更に裁判長は「(原告が証拠として提出した)甲40号と41号について、これはマニュアルのようなものだと思うが、これに反論の主張があるか?」と被告に問いました。

 原告はこれを聞いていて、甲40と41のことを聞かれたと思って、つい「はい」と言ってしまいました。すると裁判長は「原告に聞いているのではない」と言いました。そして、あらためて被告に向かって、「被告が特にこの点に着目して、原告準備書面(5)に対して反論してもらいたい。それと、そこではフッ素が検出されたという原告の主張と、40号証、41号証に関する原告の主張があるので、そこに着目した論点に基づいて反論をお願いしたい。そして、その際には、裏付けとなる書証もお願いしたい。それが1点だ」と述べました。

 裁判長は続けて、「それから原告準備書面(6)。これはきょう陳述になったということだが、この原告準備書面(6)についても反論をお願いしたい。とりわけ、原告準備書面(6)の2ページ目に、『混合スラグ再生砕石は、廃棄物処理法に定める資格を有する者が製造したものではない』という原告の主張がある。それから『混合スラグ再生砕石が、敷砂利として使用された』という原告の主張について、それらに対する反論、そこにポイントを置いて、なおかつ、裏付けとなる書証があれば出してほしい」と2つ目の訴訟指揮をしました。

 裁判長はさらに続けて「それから、被告の第3準備書面を先ほど陳述していただいたが、『本件舗装工事契約の必要性について』と7ページ目に述べてあるけれども、この裏付けの書証というのが書かれていない。したがって、被告には主張だけではなく、その主張の裏付けとなる書証をお願いしたい。それが3点目だ」と被告に対して3つ目の指揮をしました。

 これにとどまらず、裁判長は「これは説明してもらいたいということになるのだが、被告の第3準備書面の8ページ目に、ステージコンストラクションというのがある。そこで、ステージコンストラクションと敷砂利との違いを説明すること。ステージコンストラクションの一つの段階として敷砂利と全く同じ状態ということがあるのかないのかもよくわからない。おそらく敷砂利について、『これは、段階的にやっていくんですよ』ということだと思うが、段階的にやっていくなかで、その段階の一つとして敷砂利というのと、同じことなのか、それとも敷砂利と違うのか、この点がよくわからない。以上、4点目についても、説明をお願いしたいと思う」と、4つ目の訴訟指揮をしました。

 ステージコンストラクションという、横文字の専門用語は確かに専門家以外にとっては、馴染みのない言葉です。いっそ、「後追い工事」というような訳語を使えばよいかもしれませんが、裁判長もよほどこの言葉は言いにくそうで、慎重に発音したにもかかわらず、すこし言いよどんでいました。無理もありません。被告が、こんな言いにくい専門用語まで引っ張り出してきて、自らの違反行為を必死にカモフラージュしているのですから。

 そして、裁判長はようやく原告の方に向かって「原告の関係では、原告準備書面(7)を読ませてもらっていないので、それ読ませていただいたうえで、なにか話しすることがあれば話しをするが、今回は、被告のほうの反論と、反論するにはこれだけの証拠を出してほしい、という要請を行った。とくによくわからないところについて、指摘させていただいたということだ」と今回の口頭弁論の意義を説明してくれました。

 原告は「ええ、的確なご指摘だと思っております」と答えました。

 裁判長は重ねて「それでいいか?」と声をかけてきたので、原告として「はい。全く異存ありません」ときっぱりと答えました。

 「では被告の準備にどれくらいかかるか。日数的にどれくらいかかるのか、というところで、次回の弁論期日を決めたいと思う」と裁判長は被告のほうを向いて、質問しました。

 すると被告らは顔を見合わせながら何やら少し相談しながら、「2カ月くらい・・・」という声が聞こえてきました。これを聞いた原告は「えっ、2カ月!」と声を出してしまいました。せめて1カ月あれば十分だと考えたからです。しかも、我々の税金から給与を得ている被告らですから、今回の事件でも原告が主張しているように、地方自治法第2条14項に定めた最小の経費で最大の効果を発揮することが、訴訟文書の作成でも求められているはずです。

 しかし、被告訴訟代理には裁判長に向かって「2カ月くらいでお願いしたいと思います」と答えてしまったのです。

 すると裁判長は、さすがに、これではあまりにも先送りになってしまうと考えられた様子で、急遽、被告に次のように訴訟指揮をしました。「それでは、原告準備書面(7)についてまだよく読んでいないけれど、被告が対応するというなら、それなりにこの準備書面(7)に対応するということでよろしいか」と、原告が昨日提出したばかりの準備書面(7)についても、反論があればするように被告を促したかたちとなりました。被告はかぼそい声で「はい」と言いました。

 それを聞いた裁判長は、凛とした声で、「ではお願いします。2か月後となるとは6月20日になるが、その次の週となると、6月24日の午後で受けることは可能か?」と被告に問いました。被告訴訟代理人の笹本弁護士は「差支えます」と答えました。

 裁判長は「それではその次は7月8日でどうか?」と更に2週間後の日にちを提案しました。被告はようやく「はい、結構です」と答えました。

 裁判長は「7月8日の冒頭の10時半とか、10時10分、あるいは9時半、そのあたりではどうか?」と原告に聞いてきました。原告は「こちらは金曜日、いつでも大丈夫です」と答えました。「早くてもか?」と聞く裁判長に対して、原告は「問題ありません」と答えました。

 その結果、次回の第5回口頭弁路期日について裁判長は「それでは7月8日午前10時30分に、この法廷で行う」と宣言しました。

 そして、「それで、被告に出していただくのは、2か月ほどかかるということから、6月22日まででよいか?」と裁判長に言われた被告は「はい」と答えました。

最後に裁判長は「今日は、ここまででよろしいか?」とこちらを向いて述べたので、おもわず原告として、「はい。的確な訴訟指揮だと思います。ありがとうございます」と答えてしまいました。

 こうして第4回口頭弁論が終わりました。時間的には約9分間でしたが、密度の非常に濃い内容でした。

■以上が、4月22日の第4回口頭弁論のあらましです。2カ月も時間をかけて被告の群馬県がどんな反論の準備書面を提出してくるのか、その反論の内容について注目したいと思います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※当会注:上記の法廷内の口頭でのやりとりは、出席・傍聴した当会会員のメモと記憶、そして独自の解釈により構成したものであり、概ね間違っていないとは思いますが、発言内容を正確に表してはありませんので、あらかじめ認識ください。ただし、もし事実と著しく異なっている箇所が有ると判断される場合には、FAXやメールで書面でご指摘、ご連絡いただけると幸いです。

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大同スラグ訴訟・・・第4回口頭弁論に向けて原告住民が準備書面(6)及び(7)を提出

2016-04-21 23:42:00 | スラグ不法投棄問題
■東吾妻町萩生地区の農道整備工事契約にかかる大同有毒スラグの不法投棄問題をめぐり、市民オンブズマン群馬が群馬県を相手取って提起している住民訴訟は、4月22日(金)午前10時30分から前橋地裁2階201号法廷で第4回口頭弁論が開かれます。

 これに向けて、被告の群馬県から3月15日に第3準備書面が提出されました。内容については次の記事をご覧ください。
○2016年3月17日:大同スラグ訴訟・・・4.22第4回口頭弁論に向けて被告群馬県から第3準備書面が届く(その1)
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1923.html
○2016年3月17日:大同スラグ訴訟・・・4.22第4回口頭弁論に向けて被告群馬県から第3準備書面が届く(その2)
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1924.html

■その後当会は、被告第3準備書面で群馬県が主張する事項について反論するため、準備を続けた結果、4月15日付で原告準備書面(6)を提出しました。内容は次のとおりです。

*****原告準備書面(6)*****PDF → iuj2016.4.pdf
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明
                            平成28年4月15日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中
              原告準備書面(6)
                       原告  小 川  賢  ㊞
                       原告  鈴 木  庸  ㊞
 平成28年3月15日付の被告第3準備書面について、次のとおり反論する。

第1 被告第3準備書面の「第1 はじめに」に対する反論

【被告の主張】
 原告らの主張は,要するに,以下の2つに整理されるものと解される。
 ① 萩生川西地区区画整理補完3工事(以下,「本件農道整備工事」という。)は,鉄鋼スラグが混合されたブレンド骨材が用いられており,廃棄物処理法に違反する違法な工事であるから,その契約(以下,「本件農道整備工事契約」という。)は違法であり,その後に行われた萩生川西地区農道舗装工事(以下,「本件舗装工事」という。)は,本件農道整備工事契約の違法性を承継するため,その契約(以下,「本件舗装工事契約」という。)も違法になる(以下,「原告ら主張1」という。)。
 ② 本件舗装工事は,本件農道整備工事の違法性を隠蔽するために行われた違法な工事であるから,本件舗装工事契約は,地方自治法第2条第14項に違反して違法である(以下,「原告ら主張2」という。)。
 なお,原告らは,原告ら主張2に関し,地方自治法第2条第16項及び第17項違反も主張しているが,これらは違法な事務や行為の効力を定めている規定であり,違法性の根拠となる規定ではない。
 以下,上記整理に従って,被告の主張の骨子を整理する


【原告の反論】
 被告は自分の都合に合わせて、勝手に原告の主張を2つに仕分けして、争点をごまかそうとしている。
 ①で被告は、「本件農道整備工事契約に使用された鉄鋼スラグが混合されたブレンド骨材が用いられているから廃棄物処理法に違反する違法な工事」と定義している。原告が当初から主張しているのは、本件農道整備工事契約に使用されたのは、無許可の大同特殊鋼、大同エコメット、佐藤建設工業が製造・出荷していた混合スラグ再生砕石なる代物は、廃棄物処理法で定めた資格のある中間処理業者が製造したものではないから、廃棄物処理法に違反していること、また、そのような違法な資材が、本来使用されてはならない敷砂利として使用されたことは、廃棄物処理法の目的に定めた「廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする」に違反していることである。被告は原告の主張を意図的に歪めて解釈しようとしている。
 ここではっきりさせておきたいのは、中間処理業者として無許可の大同特殊鋼、大同エコメット、佐藤建設工業が、本来の「再生砕石」を偽装した「混合スラグ再生砕石」なるシロモノを製造し、「スラグ混合再生路盤材」と銘打って販売(甲第44号証)すること自体、廃棄物処理法に違反していることである。
 さらに、本件農道整備工事契約に使用されたのは、単なる「混合スラグ再生砕石」ではなく、環境基準値を遥かに上回るふっ素等を含んだ有害・有毒なスラグである。鉄鋼スラグ協会のガイドラインさえ逸脱した危険物質であり、本来であれば、遮断型最終処分場で処理されるべきシロモノである。
 ②の「なお書き」で被告は、「地方自治法第2条第16項及び第17項違反を主張しているが、これらは違法な事務や行為の効力を定めている規定であり、違法性の根拠となる規定ではない」と勝手に解釈している。しかし、地方自治法第2条第15項は「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない」と、また、同条第16項は「前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする」と定めており、法令に違反して事務処理を行ってはならず、行った場合でもそれは無効であるとする、極めて常識的な条項である。これを否定しようとする被告の考え方そのものが、地方自治法を歪めて解釈している証左である。


第2 被告第3準備書面の「第2 原告ら主張1について」に対する反論

【被告の主張】
1 廃棄物処理法について
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下,「廃棄物処理法」という。)は,廃棄物の排出を抑制し,及び廃棄物の適正な分別,保管,収集,運搬,再生,処分等の処理をし,並びに生活環境を清潔にすることにより,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として定められている法律である(廃棄物処理法第1条)。
 廃棄物処理法が定めているのは,例えば,国民の責務(第3条の4),事業者の責務(第3条),国及び地方公共団体の責務(第4条),環境大臣が定める基本方針(第5条の2),都道府県廃棄物処理計画(第5条の5)などの外,一般廃棄物処理業者や処理施設に係る規定(第7条ないし第9条の7)や,産業廃棄物処理業や処理施設に係る規定(第14条ないし第15条の4)などである。
2 本件農道整備工事契約は廃棄物処理法に違反していないこと
 原告らは,本件農道整備工事契約は,廃棄物処理法に違反している旨を主張するものと解される。
 しかし,廃棄物処理法は,上記のとおり,地方公共団体の責務(第4条)を定めているものの,そこで定められている都道府県の責務は,「第2項 都道府県は,市町村に対し,前項の責務が十分に果たされるように必要な技術的援助を与えることに努めるとともに,当該都道府県の区域内における産業廃棄物の状況をはあくし,産業廃棄物の適正な処理が行なわれるように必要な措置を講ずることに努めなければならない。」及び「第4項 国,都道府県及び市町村は,廃棄物の排出を抑制し,及びその適正な処理を確保するため,これらに関する国民及び事業者の意識の啓発を図るよう努めなければならない。」というものであり,いずれも努力義務を定めているのみで,県が締結する個別具体的な契約について規制を及ぼすものではなく,その余にも,県が締結する個別具体的な契約について規制を及ぼす規定はない。
3 結論
 したがって,本件農道整備工事契約は,廃棄物処理法には違反しておらず,原告らの主張1には理由がない。


【原告の反論】
 前項①で述べた通り、廃棄物処理法の目的は「廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする」であり、被告を含め自治体も、原告を含め住民も、これを遵守しなければならない。被告の環境森林部廃棄物リサイクル課は、平成27年9月7日に、スラグ混合再生砕石あるいはスラグ混合再生路盤材なるシロモノは、産業廃棄物と認めており、被告がそのようなものを敷砂利として本件農道整備工事で使用したこと自体、違法であり、当然、本件舗装工事に先立ち、原因者である大同特殊鋼等に、撤去を命じて、撤去が確認された後に、本件舗装工事の予算計画を立案すべきであった。
 被告は3つの点で違法行為を故意に看過しようとしている。
 その1つは、大同特殊鋼、大同エコメット、佐藤建設工業が、製品カタログ(甲第44号証)まで作成して、無許可で製造したスラグ混合制裁路盤材(RC-4)と銘打った再生砕石の偽装製品を、多数の建設業者に販売していたことについての違法行為である。
 2つ目は、甲第31号証で自ら決めたルールさえ無視して、農道の敷砂利工に偽装製品が使われたにもかかわらず、施工業者にそのことを指摘しないまま、完成検査を行って合格通知を出していたことである。
 3つ目は、大同特殊鋼、大同エコメット、佐藤建設工業が製造し、佐藤建設工業が納入した材料証明書の不備をきちんと摘示しないまま、違法な危険物質を本件農道整備工事で業者に納入させ、本来、食の安全性が最優先の営農環境の観点から、そのような危険な環境汚染物質が存在するのを認識した時点で、速やかに原因者に撤去させるべきところ、あろうことは、真逆の行為、すなわち、撤去させずに上に蓋をして、恒久的に環境汚染物質の存在を固定化してしまったことである。


第3 被告第3準備書面「第3 原告ら主張2について」に対する反論

【被告の主張】
1 地方自治法第2条第14項の意義
 地方自治法第2条第14項は,「地方公共団体は,その事務を処理するに当つては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」として,最少の費用で最大の効果をあげなければならないと規定している。これを,「最少費用最大効果原則」ということがある。
 なお,地方財政法第4条第1項も,地方公共団体の経費に関して,「その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない。」として,最小費用最大効果原則に則した規定を置いている。本件と同様の住民訴訟において,地方自治法第2条第14項違反が主張されるときは,地方財政法第4条第1項違反も併せて主張されることが多いが,原告らはこれを主張していないので,以下では,地方財政法第4条第1項については触れないこととする。


【原告の反論】
 さすがに、被告は長年にわたり地方自治に携わってきたことも有り、地方自治法に詳しいことを痛感させられる。第2条第14項も地方財政法第4条第1項も、同じことを意味していることは、被告の主張どおりであり、原告としてはなんら反論するところではない。
 そこで地上自治のエキスパートである被告に対して誠に畏れ多いことではあるが、地方自治法第138条の2についても、被告は既に十分承知した上で、今回の本件農道整備工事契約をしたのかどうか、あらためて、確認してもらいたいと思う。
 ちなみに、これまた被告には釈迦に説法であるが、次に地方自治法第138条の2を例示しておく。

  第一三八条の二
  普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う。


【被告の主張】
2 地方自治法第2条第14項違反の判断枠組み
(1)近時の最高裁判例
 住民訴訟において地方自治法第2条第14項違反が争われた近時の最高裁判例には,以下のものがある。
① 最判平成20年1月18日(民集62巻1号1頁・乙6)
 最高裁は,普通地方公共団体が土地開発公社との間で締結した土地の先行取得の委託契約について,委託契約を締結した地方公共団体の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又は濫用があり,当該委託契約を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合には,当該委託契約は私法上無効になるとしている。
② 最判平成23年12月2日(民集未登載・乙7)
 最高裁は,地方公共団体が締結した賃貸借契約について,前記最判平成20年1月18日を引用し,最小の経費で最大の効果をあげるという観点から,裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があり,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する特段の事情が認められる場合には,地方公共団体の締結した賃貸借契約は無効としている。
③ 最判平成25年3月28日(民集未登載・乙8)
 最高裁は,し尿処理を目的として設立された広域連合が新たなし尿中継槽設置のために第三者との間で締結した土地の賃貸借契約について,不動産を賃借する目的やその必要性,契約締結に至る経緯,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられており,これらを総合考慮してもなお,地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ,地方自治法2条14項等に反して違法となるものではないとしている。


【原告の反論】
 これらの判例が存在することは認めるが、それが本事件とどう関係するかは不知。


【被告の主張】
(2)地方自治法第2条第14項の違法性判断の枠組み
 以上のように,判例は,地方自治法第2条第14項に違反するのは,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があり,同条の趣旨を没却するような特段の事情が認められる場合であると判示している。また,上記平成25年判例は,更に一歩踏み込み,契約の目的や必要性,契約締結の経緯や契約内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因やその他の諸般の事情を総合考慮した上で,裁量権の範囲の逸脱,濫用にあたるかを判断している。
 なお,上記でいう地方自治法第2条第14項の趣旨とは,先述のとおり,いわゆる最少経費最大効果原則のことをいう。
 以下では,上記の判断枠組みに従って,本件舗装工事の契約締結について裁量権の範囲の逸脱又は濫用があり地方自治法第2条第14項の趣旨を没却するような特別の事情が認められないことについて述べる。


【原告の主張】
 本事件は、あきらかに裁量権の範囲の逸脱又は濫用があり、本件農道整備工事契約で違法な資材が使用されたにもかかわらず、被告は裁量権を濫用して、検査合格とした。さらに違法な資材の使用が世間で騒がれるに伴って、今度は「臭いものには蓋」とばかりに、必要性のない本件舗装工事を無理やり実行するために、直ぐに実行できる予算を流用した。被告の本件舗装工事の契約行為は、あきらかに裁量権の範囲の逸脱及び濫用に該当する。以下では、本事件が、いかに裁量権の範囲の逸脱、濫用にあたるかについて述べる。


【被告の主張】
3 本件舗装工事契約について裁量権の範囲の逸脱又は濫用はなく,地方自治法
 第2条第14項の趣旨を没却するような特別の事情は認められないこと
(1)本件舗装工事契約の目的について
 萩生川西地区圃場整備事業(以下,「本件圃場整備事業」という。)は,農地の区画整理,農道整備及び用排水路整備などの総合的な整備を実施することで,農業生産性の向上による農業振興と地域住民等の便益の増進を目的としている。
 したがって,本件舗装工事契約の目的も,農業生産性の向上による農業振興と地域住民等の便益の増進である。
 なお,原告らは,本件舗装工事契約は,本件農道整備工事において下層路盤工として用いられた鉄鋼スラグが混和している下層路盤工を隠蔽する目的で締結されたものであると主張するものと解されるが,そのような目的ではない。


【原告の反論】
 被告がいかに詭弁を弄して釈明しようとしても、産業廃棄物を敷砂利に使ったこと、その敷砂利を撤去せずに、上に舗装で蓋を掛けた事実は、否定しようとしても否定することはできない。


【被告の主張】
(2)本件舗装工事契約の必要性について
 当該道路は,急勾配であり,未舗装のままにしておくと,車両の通行等に伴って下層路盤工として敷設した砕石が路外に散逸しやすく,砕石の補充が必要になりやすい立地であった。そのため,下層路盤工が散逸するのを防ぐために可及的早期に舗装工事を行う必要があった。
 また,当該道路は,営農上の取水施設の操作場所に通じる道路であり,豪雨等のときに通行する必要性が高い。未舗装の状態だと,豪雨等のときに路面の陥没やぬかるみ等のため車両による通行が著しく困難となり,取水施設まで赴くために危険や不便が発生する恐れがあった。そのような事態が発生することを未然に防止するため,可及的早期に舗装工事を行う必要があった。
 更に,当該道路は,山際に位置しているため,雨天時等に山から若干の土砂を含んだ雨水が路面に流れ落ちて来る立地であり,未舗装のままにしておくと,土砂や雨水等の流入により路面が荒れやすい。そのため,路面整正に迫られる可能性が高く,それを未然に防止するため可及的早期に舗装工事を行う必要があった(甲10の17項)。
 なお,下層路盤工として敷設したブレンド骨材に鉄鋼スラグが含まれていることが新聞等で報道されたことで,未舗装のままにしておくと地域住民等が不安を抱いたり,農作物の風評被害に波及したりすることも懸念され,それらを未然に防止する必要性もあったが,それはあくまでも本件舗装工事の施工時期を若干前倒しした理由の1つに過ぎず,本件舗装工事契約の元々の必要性は,上述のとおりである。


【原告の反論】
 既に求釈明で、被告の説明に対して、原告は反論済みなので、被告の繰り返しの戯言に対して改めて反論するまでもない。
 被告は「なお書き」で、「下層路盤工として敷設したブレンド骨材に鉄鋼スラグが含まれていることが新聞等で報道されたことで,未舗装のままにしておくと地域住民等が不安を抱いたり,農作物の風評被害に波及したりすることも懸念され,それらを未然に防止する必要性もあったが,それはあくまでも本件舗装工事の施工時期を若干前倒しした理由の1つに過ぎず」などと主張しているが、それならば、なおさら本件舗装工事に先立ち、原因者の大同特殊鋼等に対して、有害物質入りの資材の撤去を優先的に実行させるはずだ。それを未然に防止する方法が、なぜ本件舗装工事なのか、なぜ農業地帯に持ち込まれた有害物質入りの資材の撤去より、舗装工事のほうが有効な対策と考えたのか。被告の主張は支離滅裂である。


【被告の主張】
(3)本件舗装工事契約の締結に至るまでの経緯について
ア ステージコンストラクション工法について
 本件舗装工事契約の締結に至る経緯を理解するためには,前提として,ステージコンストラクション工法を理解しておく必要がある。
 ステージコンストラクションとは,一度に表層まで完成させず,まず路盤まで施工し,その後状況を判断して段階的に完成させていく施工法である(乙9・309頁)。その方法は,舗装構造により若干その考え方を異にするが,一般的に,水田地帯等の軟弱な路床に設置される農道については,「盛土工法や置換工法等で路床改良を行って舗装をする。この場合,第一段階で下層路盤までを砕石材料等で施工し路面整形を行い,工事車両等の限定された範囲での交通開放を行って圧密沈下等の促進を図り,その後これらの状況を判断して順次段階的に施工していく。」ものとされている(乙9・309頁)。
 このような工法が用いられるのは,交通開放することで通行車両による転圧の効果が期待でき,「経費面から,また舗装構造の安全設計という面からも期間的な制約が許されるならば有利になることが多い」(乙9・309頁)からである。


【原告の反論】
 前回、平成28年1月15日付の原告準備書面(5)で、被告が強調したがる「一般的」な工法とは到底言い難いステージコンストラクションについて、原告側が苦労して見つけた文献は、「土地改良事業計画設計基準 設計 農道」(農林水産省構造改善局 平成元年4 月制定)で、28年前に制定されたものであり、やや時間的に古かったが、甲第39号証として提示したものである。群馬県職員措置請求に関する監査結果(甲第10号証)のPage 9に記されているように、群馬県監査委員の聴取に対して、被告である農村整備課及び吾妻農業事務所職員らが、「(4) 農道設計の手引(群馬県農政部策定手引書。平成24年3月版)」を引用してステージコンストラクションについて説明している経緯があるが、これらの内容は甲39号と同じであることから、平成元年からステージコンストラクションについての設計の考え方は変わっていないと思われる。本来であれば、被告がステージコンストラクションの主張を始める段階で、この工法を説明した文献を提示するべきであり、第3回口頭弁論で原告が既に同内容の文献を出して反論しているにも関わらず、この期に及んで、あらためて被告が原告に対して、この工法について理解しろ、と主張するのはまことにもって実に失礼極まりない。
 前回、原告は準備書面(5)の中で、被告の主張するステージコンストラクションとは名ばかりであり、「下層路盤工」はあくまで「敷き砂利」であると重ねて説明した。
 にもかかわらず、それについて被告は、今回の第3準備書面で反論をしていない。
 被告は、本件舗装工事の下層路盤工は、本件農道整備工事の下層路盤工と同じ材料を使用していると主張しているが、原告は、あくまで敷き砂利であると考える。
 敷き砂利には、ステージコンストラクションが適用されない、ということは、被告が常々業界を指導していることである。
 したがって、原告の指摘に反論しないまま、被告から「ここで改めて前提として,ステージコンストラクション工法を理解しておく必要がある」と主張されても、原告としては、「被告は反論ができないから、このような主張を繰り返しているに過ぎない」と考えるほかはない。
 今回新たに追加提出する甲第43号証(酒井宏明・県会議員の上申書)には、被告が、本件農道舗装工事の公示日の翌日の平成26年6月4日に、現場に酒井県議を案内した際に、ステージコンストラクションについての説明は何もなかったと記してある。このことからも、被告の主張は、違法行為を取り繕うためのウソであることがわかる。


【被告の主張】
イ 本件舗装工事契約の締結に至る経緯
 平成22年6月10日,国庫補助事業として,萩生川西地区に係る農山漁村地域整備交付金県営農地整備事業が採択された。以後,萩生川西地区について,順次,農地の区画整理,用排水路整備及び農道整備が進められた。
 平成25年3月7日,本件農道整備工事が起工され,同月18日に入札が行われ,同月19日,本件農道整備工事契約が締結されて,その後着工した。この時点で,本件農道整備工事は,ステージコンストラクションによる段階的施工法で実施し,当面は未舗装状態で工事を止めておき,将来的に舗装工事を実施することを予定していた(なお,本件圃場整備事業に限らず,圃場整備事業における農道整備では,一般的にステージコンストラクションの工法が用いられている。)。


【原告の反論】
 南波建設が施工した本件農道整備工事の設計図書には「敷砂利」と記載されている。このことについて原告は、監査委員も甲第10号証の中で認めていることを、原告準備書面(3)の求釈明⑥で具体例も交えて説明した。
 にもかかわらず、被告はこの点について、具体的に説明していない。被告は単に「起工された時点からステージコンストラクションが予定されていた」と繰り返すのみである。ならば、本件農道整備工事を請け負った南波建設が当該工事を施工する前に、敷砂利工から下層路盤工に設計変更すればよかったのではないか?
しかも被告は、原告への反論をしないまま、「一般的にステージコンストラクションの工法が用いられている」と主張をエスカレートさせている。何をもって「一般的」とするのか?お役人様である被告が、「一般的」と突然言い始めれば、納税者である一般住民は、奴隷のようにそれに従わなければならないのか?群馬県の土木・農道工事のバイブルというべき群馬建設工事必携(平成27年度版、1224ページ、URL:file:///C:/Users/Owner/Downloads/H27%E5%BF%85%E6%90%BA%E2%85%A0(%E7%AC%AC%EF%BC%91%E5%9B%9E%E6%94%B9%E6%AD%A3%E5%BE%8C)%E3%80%90%E9%9B%BB%E5%AD%90%E7%89%88%E3%80%91H280205.pdf)を見ると、どこにもステージコンストラクションなる言葉が見当たらない。
 原告もステージコンストラクションについて文献で読み込んでいる。原告は、この工法を設計段階から組み込むのであれば、使ってもよい工法と考えるが、「一般的」なのかどうかは、群馬建設工事必携を基準に判断するべきだと考える。しかしこの議論は、前述の原告主張のとおり、本件農道整備工事における工種そのものが「敷砂利工」であったため、本事件とは無関係の話である。
 酒井県会議員の上申書(甲第43号証)によると、2014年6月4日の現地視察の際、農政部からはステージコンストラクションの説明は何もなく、現場の状況は掘削を伴わず、砕石も転圧されていないことから、酒井議員も「敷砂利工であった」との認識を得ている。監理課通達(甲第9号証)によれば、敷砂利に鉄鋼スラグをブレンドした砕石は使用できないので、酒井議員は「撤去するべき」と農政部に指摘をした。
 すなわち、被告は、1年間も違法で有害なスラグを敷砂利として放置しておいた行為(このため、当然ながら当初から転圧さえしなかった)を糊塗しようと企んで、なんとか下層路盤工を装うために、被告自身が甲9号証で決めた自らのルールさえ無視して、ウソをつき通そうとしているのである。


【被告の主張】
 本件農道整備工事の施工中である同年4月23日,県営萩生川西土地改良事業推進協議会第24回工事委員会が開催され,出席していた地域住民等から,本件農道整備工事に先行して平成24年6月12日から同年11月30日にかけて実施された萩生川西地区区画整理5工事に係る農道のうち勾配が急な路線について舗装工事を希望する旨の要望が出された。被告は,上記5工事に限らず,急勾配の路線,維持管理上必要な路線,営農上利用の多い路線については,優先度,予算状況等を考慮し,本件圃場整備事業の事業期間内に舗装工事を実施する旨を回答した(乙3)。
 同年6月28日,本件農道整備工事が完了した。
 平成26年1月から同年2月にかけて,大同特殊鋼株式会社が鉄鋼スラグを販売していることが逆有償取引に当たり廃棄物処理法に抵触する疑いがある旨の報道がなされ(甲1 3,甲14),また,同会社の鉄鋼スラグに関して国会で質疑がなされるなどした。
 同年3月,本件圃場整備事業で施工した農道の下層路盤工に,大同特殊鋼株式会社渋川工場に由来する鉄鋼スラグが混合されたブレンド骨材が使用されていることが確認された。
 吾妻農業事務所長は,上記3項(2)で述べた舗装工事の必要性に加え,地域住民等から舗装の要望が出されていたことや,大同特殊鋼株式会社に由来する鉄鋼スラグを含む砕石が下層路盤工として未舗装の状態で露出していることで地域住民等が不安を抱いたり農作物の風評被害への波及も懸念されたことから,総合的に判断し,早期に本件舗装工事の必要を認めて,工事を早期に繰り上げて実施することとした。
 被告は,平成26年5月20日,本件舗装工事の予算措置のために,地域公共事業調整費を活用できないか協議を行い,同年6月2日,地域公共事業調整費からの支出が決定された。
 そして,同年6月11日に本件舗装工事に係る入札が行われ,同月12日,本件舗装工事契約が締結された。


【原告の反論】
原告の反論に対して答えず、相変わらず同じ説明を何度も被告から繰り返されても原告としては困るのである。甲43号証にもあるとおり、本件舗装工事を中止し有害鉄鋼スラグを撤去すれば、それで事足りたのである。無駄な血税を投入する必要はなかったのである。


【被告の主張】
(4)本件舗装工事契約の内容に影響を及ぼす社会的要因
 本件舗装工事は,本来的に,地域住民等の要望を受けて実施されることになったものである。
 鉄鋼スラグに係る報道は,舗装工事の施工時期を早めたという点で契約内容に影響を与えた社会的要因の1つではあるが,あくまでも施工時期の点のみであり,舗装することは事業目的の達成及び地域住民等の要望が主たる社会的要因である。


【原告の反論】
 被告から何度も同じ説明をされても、原告としては困る。地域住民等の要望する舗装希望箇所は他にもたくさんある中、鉄鋼スラグを不法投棄されている路線しか舗装されていない。また、有害スラグが敷砂利に施工されていることを地域住民等にきちんと説明すれば、地域住民等は間違いなく撤去を要望するはずである。


【被告の主張】
(5)本件舗装工事契約の内容に影響を及ぼす経済的要因
 当該道路については,前記(2)で述べたとおり,未舗装の状態だと砕石の補充や路面整備などの必要に迫られる可能性が高く,将来的に道路の維持管理費の増加が確実視されていた。
 本件舗装工事を施工したことにより,それらの維持管理費が増加することがなくなったため,道路の維持管理費が低減された。


【原告の反論】
 原告としては、原告の質問に答えないまま被告から何度も同じ説明をされても困るのである。将来的に道路の維持管理費の増加が確実視される箇所は他にもたくさんある中、鉄鋼スラグを不法投棄されている路線しか舗装されていない。


【被告の主張】
(6)地域公共事業調整費からの支出について
 本件舗装契約にかかる費用は,地域公共事業調整費によって支出されているものである。
 地域公共事業調整費とは,地域総合行政及び地域振興行政の推進に資する公共事業に要する経費のうち,複数分野にかかわるものに要する経費である(乙4)。


【原告の反論】
 原告の指摘に反論のないまま、被告から何度も同じ説明をされても困る。本件農道整備工事は,「ステージコンストラクションによる段階的施工法で実施し,当面は未舗装状態で工事を止めておき,将来的に舗装工事を実施することを予定していた」というなら予定されていた予算を使用するべきである。
 この点、敷砂利工で施工された有害な鉄鋼スラグを隠ぺいする目的で無理やアスファルト被覆するなら地域公共事業調整費によって支出されることもつじつまが合う。
 ちなみに、公僕を生業としている被告には釈迦に説法であるが地方財政法第3条(予算の編成)第1項には「地方公共団体は、法令の定めるところに従い、且つ、合理的な基準によりその経費を算定し、これを予算に計上しなければならない。」とする定めがある。


【被告の主張】
 本件舗装工事を行った地区である本件圃場整備事業は,中山間地域の限られた農地で営農条件も厳しい地区において,農地の整備を行うことで,農業生産性の向上や営農経費の軽減,地域農業の主体となる担い手の育成等を目的として実施されている事業である。これに加えて,農業生産基盤の整備によって,耕作放棄地の発生を防止し,国土保全も図られるとともに,地域で生産される農作物のブランド化による販売力の向上による地域活性化など,その効果は多方面に生じうる。
 また,地域公共事業調整費を用いず,事業費を本件圃場整備事業予算で実施しようとすると,工事への着手が遅延することになり,早期に実施することが求められていた本件舗装工事を早期に実施することが不可能であった。
 このような用いられ方こそ,「地域の政策課題に機動的かつ柔軟に対応」「複数分野にかかわる基盤整備」という地域公共事業調整費の目的に適うものである。
 このように,地域公共事業調整費より本件舗装工事契約にかかる支出をしたことについては,裁量権の範囲を逸脱又は濫用したとするべき要素はない。


【原告の反論】
 被告は「本件圃場整備事業は、農業生産基盤の整備によって、耕作放棄地の発生を防止し、国土保全も図られ、地域活性化など、効果は多方面に生じうる」と本当に認識しているなら、県会議員の上申書にある通り、なぜ県会議員の指摘をうけ有害な鉄鋼スラグを撤去せず、無理やりアスファルト被覆で蓋をしてしまったのか?被告の対応は、事業の目的と真逆ではないか?被告の農政職員は、県会議員の真摯な指摘を無視してもよいのか?


【被告の主張】
4 小活
 以上の事情を総合すれば,本件舗装工事契約は,地方自治法第2条第14項が定める最少費用最大効果原則に合致することはあっても,これに反するところは全くないことは明らかであり,本件舗装工事契約の締結について,吾妻農業事務所長には裁量権の範囲の逸脱又は濫用はなく,地方自治法第2条第14!の趣旨を没却するような特別の事情は認められない。
 よって,本件舗装工事契約の締結は,地方自治法2条14項には違反しないため,同法242条の2第1項4号の「違法な行為」には当たらず,原告らの主張には理由がない。


【原告の反論】
 被告は、公共工事に際して、工事の安全性、品質性の観点から、地方自治法第2条第14項その他関連法令に基づいて、様々な施工ルールを立案して、工事関係者に伝える努力をしてきたはずである。
 にもかかわらず、本事件において、これまでの姿勢と真逆の主張をするのは、行政の継続性、正当性の観点からどうしても認めることはできない。
 よって、本件舗装工事契約の締結は、地方自治法が138条の2で普通公共団体の執行機関に対してその事務を誠実に管理・執行すべき義務を課していること、同法2条14項が事務処理にあたって最小の経費で最大の効果を挙げるべきことを求め、地方財政法4条1項が地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえてこれを支出してはならないことなどを勘案すると、被告の主張には理由がない。

                             以 上

*****証拠説明書*****
※PDF → 6160415.pdf

*****甲号証*****
甲43号証 ※PDF → 20160328.pdf
甲44号証 ※PDF → (略)
**********

■続いて、さらに追加の反論をするために、4月21日付で原告準備書面(7)を提出しました。内容は次のとおりです。

*****原告準備書面(7)*****PDF → i7j2016.4.pdf
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明
                            平成28年4月21日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中
              原告準備書面(7)
                       原告  小 川  賢  ㊞
                       原告  鈴 木  庸  ㊞
 平成28年3月15日付の被告第3準備書面の「第2 原告ら主張1」について、次のとおり反論を追加する。

<被告第3準備書面の「第2 原告ら主張1について」に対する反論の追加>

被告の主張】
2 本件農道整備工事契約は廃棄物処理法に違反していないこと
 原告らは,本件農道整備工事契約は,廃棄物処理法に違反している旨を主張するものと解される。
 しかし,廃棄物処理法は,上記のとおり,地方公共団体の責務(第4条)を定めているものの,そこで定められている都道府県の責務は,「第2項 都道府県は,市町村に対し,前項の責務が十分に果たされるように必要な技術的援助を与えることに努めるとともに,当該都道府県の区域内における産業廃棄物の状況をはあくし,産業廃棄物の適正な処理が行なわれるように必要な措置を講ずることに努めなければならない。」及び「第4項 国,都道府県及び市町村は,廃棄物の排出を抑制し,及びその適正な処理を確保するため,これらに関する国民及び事業者の意識の啓発を図るよう努めなければならない。」というものであり,いずれも努力義務を定めているのみで,県が締結する個別具体的な契約について規制を及ぼすものではなく,その余にも,県が締結する個別具体的な契約について規制を及ぼす規定はない。
3 結論
 したがって,本件農道整備工事契約は,廃棄物処理法には違反しておらず,原告らの主張1には理由がない。


【原告の反論の追加】
 被告が作成して運用中の土木・農業共通の「群馬県建設工事必携」には「群馬県建設工事執行規程」が記されている。ちなみに、ネットで次のURLでアクセスが可能である。
「群馬県県土整備部基準通知システム」
http://www.dobokunews.pref.gunma.jp/cgi-bin/cbdb/db.exe?page=DBView&did=192
「群馬県建設工事必携(H23年版)」
http://www.dobokunews.pref.gunma.jp/cgi-bin/cbdb/db.exe?page=DBView&did=420
 同工事必携の目次に続いて「1.群馬県建設工事執行規程」がある。
http://www.dobokunews.pref.gunma.jp/cgi-bin/cbdb/db.exe?page=DBRecord&did=420&qid=1424&vid=472&rid=11&Head=&hid=&sid=1371&rev=&ssid=3-725-6084-g40
 同工事必携の1-5ページに示された同規程の第17条には、契約書に関して次の記載がある(甲第45号証)。なお、下線は原告が追記したものである。

(契約書)
第17条 契約担当者が規則第191条第1項の規定により作成する請負契約に係る契約書は、建設工事請負契約書(別記様式第6号)及び建設工事請負契約約款(別記様式第6号の2)に基づいて作成しなければならない。ただし、契約の性質又は目的により必要のない事項については、この限りではない。

 ここでいう「規則」とは「群馬県財務規則」(平成3年群馬県規則第18号)のことである。また、ここでいう「建設工事請負契約約款」についても、同じく「群馬県建設執行規定」の1-14ページに次の記載がある(甲第46号証)。なお、下線は原告が追記したものである。

(総則)
第1条 発注者及び受注者は、この約款(契約書を含む。以下同じ。)に基づき、設計図書(別冊の図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。以下同じ。)に従い、日本国の法令を遵守し、この契約(この約款および設計図書を内容とする工事の請負契約をいう。以下同じ。)を履行しなければならない。


 群馬県建設工事必携では、遵守すべき法令を次の文書で、丁寧に例示している。
「7.群馬県土木工事標準仕様書」
http://www.dobokunews.pref.gunma.jp/cgi-bin/cbdb/db.exe?page=DBRecord&did=420&qid=1424&vid=472&rid=19&Head=&hid=&sid=1371&rev=&ssid=3-725-6084-g40
この中の「第1編 共通編 第1章 総則 第1節 総則」の7-73~75ページには次の記載がある(甲第47号証)。なお、下線部は原告が追記したものである。

1-1-1-35 諸法令の遵守
1.受注者は、当該工事に関する諸法令を遵守し、工事の円滑な進捗を図るとともに、
諸法令の適用運用は受注者の責任において行わなければならない。なお、主な法令は
以下に示す通りである。
(1)地方自治法 (平成23年6月改正 法律第82号)
(2)建設業法 (平成20年5月改正 法律第28号)
(3)下請代金支払遅延等防止法 (平成21年6月改正 法律第51号)
(4)労働基準法 (平成20年6月改正 法律第89号)
(5)労働安全衛生法 (平成18年6月改正 法律第50号)
(6)作業環境測定法 (平成18年6月改正 法律第50号)
(7)じん肺法 (平成16年12月改正 法律第150号)
(8)雇用保険法 (平成22年3月改正 法律第15号)
(9)労働者災害補償保険法 (平成22年3月改正 法律第15号)
(10)健康保険法 (平成22年5月改正 法律第35号)
(11)中小企業退職金共済法 (平成18年6月改正 法律第66号)
(12)建設労働者の雇用の改善等に関する法律 (平成21年7月改正 法律第79号)
(13)出入国管理及び難民認定法 (平成21年7月改正 法律第79号)
(14)道路法 (平成22年3月改正 法律第20号)
(15)道路交通法 (平成21年7月改正 法律第79号)
(16)道路運送法 (平成21年6月改正 法律第64号)
(17)道路運送車両法 (平成20年4月改正 法律第21号)
(18)砂防法 (平成22年3月改正 法律第20号)
(19)地すべり等防止法 (平成19年3月改正 法律第23号)
(20)急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(平成17年7月改正 法律第82号)
(21)河川法 (平成22年3月改正 法律第20号)
(22)海岸法 (平成22年6月改正 法律第41号)
(23)港湾法 (平成22年6月改正 法律第41号)
(24)港則法 (平成21年7月改正 法律第69号)
(25)漁港法 (平成12年5月改正 法律第78号)
(26)下水道法 (平成17年6月改正 法律第70号)
(27)航空法 (平成21年6月改正 法律第51号)
(28)公有水面埋立法 (平成16年6月改正 法律第84号)
(29)軌道法 (平成18年3月改正 法律第19号)
(30)森林法 (平成18年6月改正 法律第50号)
(31)環境基本法 (平成20年6月改正 法律第83号)
(32)火薬類取締法 (平成21年7月改正 法律第85号)
(33)大気汚染防止法 (平成22年5月改正 法律第31号)
(34)騒音規制法 (平成17年4月改正 法律第33号)
(35)水質汚濁防止法 (平成22年5月改正 法律第31号)
(36)湖沼水質保全特別措置法 (平成22年5月改正 法律第31号)
(37)振動規制法 (平成16年6月改正 法律第94号)
(38)廃棄物の処理及び清掃に関する法律 (平成22年5月改正 法律第34号)
(39)文化財保護法 (平成19年3月改正 法律第7号)
(40)砂利採取法 (平成12年5月改正 法律第91号)
(41)電気事業法 (平成18年6月改正 法律第50号)
(42)消防法 (平成21年5月改正 法律第34号)
(43)測量法 (平成19年5月改正 法律第55号)
(44)建築基準法 (平成20年5月改正 法律第40号)
(45)都市公園法 (平成16年6月改正 法律第109号)
(46)建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成16年12月改正 法律第147号)
(47)土壌汚染対策法 (平成21年4月改正 法律第23号)
(48)駐車場法 (平成18年5月改正 法律第46号)
(49)海上交通安全法 (平成21年7月改正 法律第69号)
(50)海上衝突予防法 (平成15年6月改正 法律第63号)
(51)海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(平成22年5月改正 法律第37号)
(52)船員法 (平成20年6月改正 法律第53号)
(53)船舶職員及び小型船舶操縦者法 (平成20年5月改正 法律第26号)
(54)船舶安全法 (平成18年6月改正 法律第50号)
(55)自然環境保全法 (平成21年6月改正 法律第47号)
(56)自然公園法 (平成21年6月改正 法律第47号)
(57)公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成21年6月改正 法律第51号)
(58)国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成15年7月改正 法律第119号)
(59)河川法施行法 (平成11年12月改正 法律第160号)
(60)技術士法 (平成18年6月改正 法律第50号)
(61)漁業法 (平成19年6月改正 法律第77号)
(62)漁港漁場整備法 (平成19年5月改正 法律第61号)
・・・(以下略)
2.受注者は、諸法令を遵守し、これに違反した場合発生するであろう責務が、発注者に及ばないようにしなければならない。
3.受注者は、当該工事の計画、図面、仕様書及び契約そのものが第1項の諸法令に照らし不適当であったり矛盾していることが判明した場合には直ちに監督員に報告し、その確認を請求しなければならない。


 このように、請負契約の履行に際して、発注者である被告は、受注者とともに、日本国の関係法令を遵守しなければならないことは明白である。
 本件農道舗装契約では、受注者の池原工業㈱が、当該工事に廃棄物処理法や土壌汚染土壌汚染対策法に抵触する大同特殊鋼渋川工場由来のスラグが使われていたのを知っていたわけだから、現場を見て、直ちに被告の監督員に報告し、その確認を請求しなければならないところである。
 しかし、大同由来のスラグを好んで使用していたとみられる池原工業㈱が、被告の監督員に報告をしたかどうかは、不知である。
 いずれにしても、被告は、被告第2準備書面の「第3 原告準備書面(2)『第2 求釈明』に対する回答」において、「本件舗装工事契約に先立ち施工された本件農道整備工事契約において、請負業者から使用材料承認願の提出を受け、その品質について基準を持たしていることを確認できたため使用した。なお、スラグ混合下層路盤材RC-40は再生砕石として株式会社佐藤建設工業から購入し使用しているため,大同エコメット株式会社が廃棄物処理業の許可を得ているか否か確認する必要はない」として、法令で定める諸法令のうち、廃棄物処理法等の遵守を怠ったことを認めている。
 このことからも、本件農道整備工事契約は、製造・販売の資格のない無許可業者である㈱佐藤建設工業から購入した資材を使用していることは明らかであり、上記の自ら定めた契約ルールである工事必携、規程、規則、約款、標準仕様書に照らしても、廃棄物処理法等の法令を遵守しておらず、被告の主張には理由がない。
 なお、被告が、大同特殊鋼由来の産業廃棄物であるスラグを本件農道整備工事契約で敷砂利として使用したこと自体、被告の県土整備部が発出した通達(甲9)で禁止した砕石骨材(クラッシャラン)にクラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材の下層路盤工以外の工種に抵触しており、被告の主張からは、まさにルール無視の無法行政がまかりとっている実態をうかがい知ることができる。

                           以 上

*****証拠説明書*****
※PDF → 7160421.pdf

*****甲号証*****
甲45号証 ※PDF → b45qnhsk.pdf
甲46号証 ※PDF → b46h_ij.pdf
甲74号証 ※PDF → b47qnyhwdl1ij.pdf
**********

■なお、被告の群馬県からは、4月の異動で一部の担当職員らが交替した為、次の2件の書類が提出されてきました。

*****訴訟代理権消滅通知書*****
※PDF → 20160421im.pdf

*****指定代理人指定書*****
※PDF → 20160421wlw.pdf
**********

■以上の訴訟資料が裁判所に提出された上で、原告として明日4月22日の第4回口頭弁論に臨むことになります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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三菱自動車による燃費偽装事件から見えてくる大同有毒スラグの再生砕石偽装・不法投棄事件の特殊性と異常性

2016-04-21 22:14:00 | スラグ不法投棄問題

■またまた大企業による不祥事件が発生しました。今度は三菱自動車工業です。4月20日に、軽自動車4車種で燃費試験時に、燃費を実際よりよく見せるためにデータを改ざんする不正が行われたと発表しました。燃費偽装事件と言えば、昨年9月に発覚したドイツのフォルクスワーゲンの不正ソフトによるエンジンの燃費偽装事件が記憶に新しいところです。
○2015年9月25日:フォルクスワーゲンの排ガス違法制御ソフト搭載のディーゼル車が示した企業モラルの重要性
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1726.html

 今回データ改ざん不正発覚の対象となったのは、三菱自動車工業のeKワゴンなど2車種と、同社が受託生産し日産自動車が販売する「デイズ」など2車種で、2016年3月末までに計62万5000台を販売しています。

 一体なぜ、こんなことが起きてしまったのでしょうか。それは、大企業でも中小企業でも、上層部に対して、下からの意見が届きにくく、そうこうしているうちに、下からの意見も出てこなくなり、不正が分かっていても見て見ないふりをするようになってしまったのではないでしょうか。

 この悪弊は企業以外にも、いち早く行政において蔓延してしまいました。役人の世界では、業務の過程で、違法行為を察知したら告発義務があるのですが、それよりも都合の良い守秘義務のほうばかり目を向けすぎてしまったことです。

■今回、4月20日の記者会見で謝罪を余儀なくされた社長の相川哲郎氏は、かつて三菱自動車の発祥だった三菱重工業の相川健太郎社長(その後会長)の息子だといいます。

 もともと相川社長はエンジニアで、東京が医学工学部を卒業し、技術者として一貫して新車開発を担当してきましたが、最大のヒット作が2001年発売のeKワゴンでした。当時はまだ40歳代でしたが、この頃から「将来の社長候補、そしてプリンス」と呼ばれていて、「父親の威光を笠に着ることもなく、謙虚で頭のいい人」と社内の評判が高かった反面、剛腕で知られた父親と比べて「やはり御曹司。おっとりタイプで、改革トップというイメージはあまりない」という見方もされていたようです。

 三菱自動車の過去30年は3つのステージを変遷してきました。1989年に就任した中村裕一社長はバブル期で、「パジェロ」がヒットし国内販売で3位に躍進しました。この黄金期に「自工は重工を抜いた」と豪語しましたが、中村社長の退任後は不祥事が続き、95年から05年までの10年ほどの間に、実に6人が社長を交代しました。

 この間、2000年には独ダイムラー・クライスラー(当時)傘下となりましたが、2004年に独社は経営から手を引きました。その理由は短期間に2度もリコール隠し問題を起こし、「不祥事の三菱自」といわれるほどに企業統治に支障をきたしていたからでした。その結果、三菱重工、三菱商事など「三菱御三家」が面倒を見るかたちとなり、商事出身で現会長兼最高経営責任者(CEO)の益子修氏が9年間にわたって社長を務めて、再建の道筋をつけました。

■4月20日の会見で、相川社長は「コンプライアンスの徹底は難しい」と嘆きましたが、不正防止策については経営陣の1人としてこの15年間にわたって取り組んできた結果を見ると、抜本的意識改革が不可欠な同社のリーダーに相応しかったのかという疑問が湧いてきます。

 相川氏を社長に指名した当時の三菱自動車の会長は、三菱重工で社長や会長を歴任した西岡喬氏でした。この西岡氏を三菱重工社長に指名したのが相川賢太郎氏でしだ。結局、こうした不祥事が発生した場合には、いくら能力があっても、世襲のような形になってしまったことから派生した弊害、あるいは因果関係を感じざるをえません。

 その三菱重工は、平成23年に受注して長崎造船所で建造中だった大型客船が2016年1月に3度の火災を起こし、さらに度重なる仕様変更による手直しなどで、納期が大幅に遅れ2016年3月中旬に1番船を1年遅れで引渡、累計1866億円という巨額の損失を計上しました。その結果、同社の造船部門は別会社化となりました。

 三菱商事も、同や天然ガスなど資源価格の低迷により先月3月24日に4,300億円という巨額の減損損失が発生するとの見通しを発表しました。前期は4,005億円の黒字だった同社の連結最終損益が、一転して2016年3月期は1,500億円の赤字に転落しました。1969年度に現在の会計を採用して以来、三菱商事の連結赤字は初めてで、長年守ってきた総合商社の収益トップの座も、伊藤忠商事に明け渡すことになりました。

■このように通常の民間のマーケットにおいては、長年かかって苦労して築いてきた顧客に対する信用というものは、製品(軽自動車)の性能(燃費)を偽ったことが一つでもバレてしまうことにより、あっけなく崩壊してしまい、企業に甚大な損害を与えてしまうのですが、なぜか、大同スラグの場合には、まったく様相が異なるようです。

 これは、公共事業と言う市場で、行政と言う顧客に対しては、安心・安全という要素は問われない、あるいは二の次、ということなのかもしれません。

 大同特殊鋼は、特殊鋼製造分野では世界的なメーカーです。特殊鋼という製品において、その性能や成分を偽ったりすれば、ただちに淘汰されてしまいます。しかし、有毒スラグを公共工事に大量に不法投棄しても、顧客である国や県、市町村は、なぜか、告発さえ躊躇してしまうのです。

 こんな理不尽なことがあってもよいのでしょうか。やはり、顧客である行政がきちんとルールに則り、ウソの製品(スラグ混合再生砕石)を排除し、原因者であるブラック企業連合にたいしてきちんとケジメをつけるように、引導を渡す必要があるのではないでしょうか。

 当会は、我が国の行政機関が、まともに機能するように、4月22日の前橋地裁での第4回口頭弁論での陳述を通じて、引き続き尽力を重ねて参る所存です。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考記事
**********NHK NEWS WEB 2016年4月20日17時14分
三菱自動車 燃費の不正操作は62万5000台
 三菱自動車工業は、自社で販売した軽自動車2車種と、日産自動車向けに生産した軽自動車2車種の合わせて62万5000台で、実際よりも燃費をよく見せる不正を意図的に行っていたことを明らかにしました。これまでの再試験で、国に提出したデータと5%から10%、燃費がかい離していたということで、該当する車種の生産と販売を停止しました。
 これは三菱自動車の相川哲郎社長が、20日午後5時から都内で開いた記者会見で明らかにしました。
 それによりますと、自社で販売した軽自動車2車種と、日産向けに生産した軽自動車2車種で、実際よりも燃費をよく見せるため、国に提出したデータで意図的に不正な操作を行っていたということです。
 不正が行われていたのは、いずれも平成25年6月以降に生産した三菱自動車の「eKワゴン」と「eKスペース」、日産自動車向けの「デイズ」と「デイズルークス」です。これらの車種のうち三菱自動車が販売したのは、合わせて15万7000台、日産向けに生産したのは合わせて46万8000台で、すべてを合わせると62万5000台に上るということです。
 会社側によりますと、これまでの再試験で、国に提出したデータと5%から10%、燃費がかい離していたということで、対象となる車は、生産と販売を停止しました。対象となる車の燃費試験は、開発を担当した三菱自動車が行いましたが、こうした不正は、日産側からの指摘を受けて調査した結果、判明したということです。
 うした不正について、三菱自動車は、当時の性能実験部長が指示したと言っており、事実かどうか確認していると説明しています。さらに、国内向けに生産しているほかの車についても、社内調査のなかで、国が定めたものとは異なる方法で試験が行われていたことが分かったということです。今後、海外向けの車についても調査を行うとしています。
 会社側では、これらの事態を重く見て、外部の有識者による委員会を設置し、徹底した調査を行うとしています。三菱自動車では、「燃費の不正が行われていた車種に乗っている顧客に対して誠実に対応したい」としています。
★三菱自動車 過去2回リコール隠し
 三菱自動車工業は、かつて「リコール隠し」が発覚し、12年前、「最後の挑戦」だとして会社の再建に乗り出しました。
 三菱自動車は、平成12年、内部告発をきっかけに国の立ち入り検査を受け、その結果、1万件を超えるクレーム情報を隠していたことや、4件のリコールを国に届け出ず、ひそかに車を改修していたことが発覚しました。このため、法人としての会社と、元副社長らが、虚偽の報告をしていたとして道路運送車両法違反の罪で略式起訴されました。会社は、当時の社長が、責任を取って辞任したほか、再発防止策をまとめ、その取り組みを監査する、第三者委員会を設けるなどしました。
 ところが2年後の平成14年、横浜市で大型トレーラーの車輪が突然外れて歩行者を直撃し、親子3人が死傷する事故が起きました。この事故の原因のトレーラーの車軸と車輪をつなぐ「ハブ」と呼ばれる部品の欠陥について、会社は、平成16年3月にリコールを届け出るまで、国には「整備上の問題」と説明し、欠陥を隠していました。このため、虚偽の説明をしていたとして当時の副社長など元幹部らが逮捕、起訴され、6年前、道路運送車両法違反の罪で罰金が確定したうえ、業務上過失致死傷に問われた幹部2人も、平成24年に有罪が確定しました。
 この2回目のリコール隠しの直後にも会社は社内に品質の管理やリコールの対応を専門に検討する「品質統括本部」を設けるなど企業体質を転換するための再建計画をまとめました。そして、三菱自動車の岡崎洋一郎会長は平成16年5月の記者会見で、「自動車メーカーとして存続するこれが最後の挑戦であるとの気概をもって今回の再建計画を作った。安全、品質を第一とする基本に立ち返る」と強調してました。
★フォルクスワーゲンでも大規模な不正発覚
 自動車の検査を巡っては、去年、ドイツのフォルクスワーゲンで大規模な不正が発覚しました。排ガス規制を逃れるため、ディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していました。このソフトウエアは、検査の時にだけ窒素酸化物などの有害物質の排出を低く抑えるもので、実際には最大で基準の40倍に上る有害物質を排出していました。
 フォルクスワーゲンによりますと不正な車両は全世界でおよそ1100万台に上るとされ、EU=ヨーロッパ連合の域内ではおよそ850万台がリコールの対象になったほか、当時の会長が責任を取って辞任する事態に発展しました。
 フォルクスワーゲンは、去年12月に内部調査の結果を公表し、不正が起きた背景には、一部の社員による職務の怠慢などに加えて、会社側にも不正を防ぐためのチェック体制が不十分だったり、一部の部門が規則に違反する行為を黙認したりという問題があったという認識を示しています。
 そして、コストを抑えながら厳しい排ガス規制をクリアするだけの技術がなかったことが、不正の発端になったとしています。
★3月期決算で1300億円余の営業利益
 三菱自動車工業は、円安に加え、アメリカでの好調な販売などを背景に、このところ堅調な業績を挙げています。
 去年3月期の決算は、売上高が2兆1800億円余り、期間中のもうけを示す営業利益が1300億円余りとなっていました。ことし3月期について、会社側では、売上高は1年前より3.6%多い2兆2600億円を見込んでいるほか、営業利益は1年前より8%少ないものの1200億円余りを見込んでいます。
 ただ、日本国内での事業は、去年4月に軽自動車税が引き上げられたことなどもあり、昨年度の新車の販売台数は、1年前の実績より1万5000台少ない10万台を見込むなど苦戦しています。

**********NHK NEWS Web 2016年4月21日9時28分
三菱自動車に国交省がきょうも立ち入り検査
 三菱自動車工業が実際よりも燃費をよく見せる不正を意図的に行っていた問題で、国土交通省は21日も愛知県にある三菱自動車の施設に立ち入り検査を行い、不正が行われたいきさつなどについて詳しく調べています。
 愛知県岡崎市にある三菱自動車工業の「技術センター」には午前9時すぎ、国土交通省の自動車局の担当者が入り、立ち入り検査を始めました。
 三菱自動車は20日、自社で販売した軽自動車2車種と日産自動車向けに生産した軽自動車2車種の合わせて62万5000台で、実際よりも燃費をよく見せる不正を意図的に行っていたことを明らかにし、国土交通省は20日から道路運送車両法に基づいて立ち入り検査を行っています。
 不正を行ったのは技術センターにある「性能実験部」という部署で、三菱自動車によりますと、当時の性能実験部長が「私が指示した」と話しているということですが、事実かどうかは確認中だとしています。このため、国は立ち入り検査を通じ、不正が行われたいきさつなどについて詳しく調べています。
★従業員「不安で心配」
 軽自動車を生産していた岡山県倉敷市の工場で働く人たちからは、今後、雇用などに影響が出るのではないかという不安の声が聞かれました。
 三菱自動車は20日、日産自動車向けも含め、平成25年6月以降に生産した軽自動車4車種で、開発部門が実際よりも燃費をよく見せる不正を意図的に行っていたと発表しました。
 これらの軽自動車の生産はいずれも岡山県倉敷市にある水島製作所で行っていて、去年4月からことし2月までの生産台数はおよそ16万2000台と水島製作所の生産台数の6割を占めています。
 21日朝、水島製作所では午前7時半ごろから従業員たちが足早に出勤していました。工場で働く男性従業員は「このような不正があり残念のひと言です。今後、車が売れなくなるのではないかという不安があるし、会社がどうなるのか心配しています」と話していました。また、別の男性は「まだ詳しいことが何も分からず、不安がないと言えばうそになります。会社からの説明を聞きたいと思います」と話していました。
 三菱自動車では、不正が明らかになった4車種の生産と販売を停止していて、今後、部品メーカーも含めた地域経済への影響が懸念されます。
★中古車販売店「どう対応すればよいのか」
 問題となっている車種を扱う岡山県倉敷市の中古車販売店は「燃費のよさを売りにした主力商品だったのにどう対応すればよいのか」と困惑していました。
 年間1000台以上の車を販売しているという岡山県倉敷市の中古車販売店では、日産自動車向けに三菱自動車が生産している車種も含めて問題となった4つの車種で合わせて10台の在庫があり、まもなく納車する予定の車もあるということです。
 宮崎賢治店長によりますと、これらの車種は車内の広さと並んで「燃費がいい」という触れ込みで店の主力商品の一つになっていたということで、「私たちも客によく薦める車だった。今後、客からの問い合わせもあると思うがどう対応していいのか分からないところが多い」と困惑した表情で話していました。
★官房長官「深刻な事案 厳正に対応」
 菅官房長官は午前の記者会見で、「本件は、自動車の燃費や排出ガスの検査に用いるデータを恣意(しい)的に改ざんしたもので、消費者の信頼を損なう行為で、あってはならないことであり、極めて深刻な事案だ。国土交通省の立ち入り検査や会社側からの報告を踏まえて、不正の全容を1日も早く解明し、厳正に対応して、車の安全を確かなものにしていきたい」と述べました。

**********Car Watch 2016年4月21日 16:55
三菱自動車の燃費不正行為、相川社長「いい燃費に見せるための操作があったことは確か」
 三菱自動車工業は4月20日、同車製軽自動車62万5000台について、型式認証取得時に同社が国土交通省へ提出した燃費試験データに不正があることを公表。同社取締役社長 相川哲郎氏、同取締役副社長 中尾龍吾氏、同執行役員 開発本部長 横幕康次氏が出席する記者会見を実施した。
 今回の発表では、対象車両の型式認証所得に際し、燃費を実際よりもよく見せるため不正なデータ操作が行なわれていたことが判明するとともに、国内法規で定められた試験方法と異なる試験方法が採られていたことも判明している。
 排出ガスや燃費性能を計測する台上試験では、シャシーダイナモで走行抵抗負荷を再現するために走行抵抗値を入力する必要があるという。走行抵抗値はメーカーからデータが提出され、そのデータをもとに燃費試験が実施される。
 まず、開発本部長の横幕氏の説明では、国が定めた測定方法の「惰行法」に対して、同社が「高速惰行法」と呼ぶ試験方法の存在を認めた。
 横幕氏の説明によると「惰行法」はある一定速度からギヤをニュートラルにして速度の変化を見るというもので、例えば「惰行法」では90km/hから10km/h減速して80km/hになるのに何秒かかるのかといったことを計測するのに対して、「高速惰行法」では1秒間の間に何km/hスピードが減速するのかをみる違いがあるという。
 今回不正を認めた62万5000台の燃費試験では、法律に定められた測定方法の違いに加えて、国交省に提出する走行抵抗値をもとめる際に、通常であれば計測したデータの中央値を捉えるところを、データの下限を捉えて燃費値をよくみせる不正な操作が行なわれたという。
 同社取締役副社長の中尾龍吾氏は「現在、正しい走行抵抗値で再試験をしている最中。(JC08モード)燃費値の乖離の割合は5%~10%程度の影響があるとみているが、いずれにしても最新の数値を国土交通省に提示する予定」と話した。
 また、相川社長は「この操作は意図的なものであると考えている。その理由は現在調査中であるが、いい燃費に見せるための意図があったことは確か。私としてはこの件は把握していなかったが経営として責任を感じている。まずはこの問題を解決する。そして再発防止のため道筋をつけることが私が責任を果たすこと。それ以上のことは考えていない」との考えを示した。
 今回の不正発覚の経緯は、次期車の開発にあたり日産自動車が現行車である該当車の燃費を参考に測定したところ、届出値との乖離があり、三菱自動車が試験で設定した走行抵抗値について確認を求められた。これを受けた三菱自動車による社内調査の結果、実際より燃費に有利な走行抵抗値を使用した不正が明らかになった。
 該当車は、2013年6月から生産している「eKワゴン」「eKスペース」と、日産自動車向けに供給している「デイズ」「デイズルークス」の計4車種。これまでに三菱自動車は計15万7000台を販売、日産自動車向けには計46万8000台を生産している(2016年3月末現在)。現在、該当車は生産と販売を停止。日産自動車でも販売を停止しており補償についても今後、協議するとしている。
 今後のユーザーに対する保障について、中尾氏は「社内でどういうことをしていけばお客様に納得していただけるか検討を始めた段階。今後どのようなことをやる必要があるのかを決めてお客様に案内していきたい」と述べるとともに、エコカー減税に適合しないモデルについては、減税分の返納等など対応をしていく考えを示した。
**********

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大同有害スラグ問題を斬る!・・・大同様ら発行「スラグ混合砕石パンフレットはデタラメだらけ②」の巻

2016-04-19 22:29:00 | スラグ不法投棄問題

■読者の皆様にご注目をいただいております、大同様らが発行したデタラメ・パンフレットの解説特集ですが、更に掘り下げて見ていきましょう。大同特殊鋼は、今春(2016年3月)53億円もの特別損失を計上すると新聞報道がありました。53億円の新聞報道についてはこちらをご覧ください。
○2016年3月31日:大同有害スラグ問題を斬る!・・・大規模不法投棄の原因者「大同様は反省したのか?」の巻
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1938.html


 特別損失とは、企業が通常の活動以外で、特別な要因で発生した損失のことですが、新聞報道を振り返ると
「大同特殊鋼は30日、調査や処理の費用として53億円の特別損失を2016年3月期連結決算に計上すると発表した。」
となっています。

 2015年9月に刑事告発されてから、早7か月余り、中々、逮捕などに至りませんが、大同様が計上した53億円もの特別損失の中には、関係各方面への根回し、口利き、腕利き弁護士らへの高額な報酬が、多額に盛り込まれているものと推測されます。「地域の皆さまにご迷惑をかけたと認識しており、誠意を持って対応していきたい」などと大同様は、詫びを口にしていますが、裏では刑事告発内容について、争う姿勢を見せているものと思われます。

 当会では刑事告発の内容について、告発者である群馬県森林環境部に何度か取材を試みましたが、残念ながらお話しいただけませんでした。ですが、週刊金曜日などの記事により「産業廃棄物の無許可中間処理違反」程度なのではないかと想像しています。週刊金曜日の記事についてはこちらをご覧ください。
○2016年1月27日:大同有毒スラグ問題を斬る!・・・「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」についての考察
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1871.html

 刑事告発から7か月余りも経過していることを考えると、大同特殊鋼が群馬県警に対し「有害スラグと天然石を混ぜることが中間処理に当たると思っていなかった」などと主張し、必死で抗っていることでしょう。

■さて、特集シリーズで取り上げているスラグ混合砕石のデタラメ・パンフレットについて、当会の誇るリットン調査団の専門的観点による更なる考察を加えていきましょう。

*****リットン調査団の検証レポート*****
 リットン調査団、検証レポートを行います(^^)/。

 普通、パンフレットと言えば、試験表提出の前段階として、販売獲得活動に際し広く需要家に見せる、言わば企業の顔というべき書類です。

 刑事告発に関連して、注目される個所の記述を抜き出してみましょう。


「環境にやさしいスラグ混合再生路盤材(RC40)」と、商品名が記載されています。

 大同特殊鋼は群馬県警に対し「有害スラグと天然石を混ぜることが中間処理に当たると思っていなかった」と主張し、争っていると思われますが、広く製品の利用を訴えた企業の顔ともいうべきパンフレットには
スラグ混合再生RC40
と書いてあるのです。

 「再生」や「RC」、つまりリサイクルとは、廃棄物処理法では「中間処理」と定義されています。大同特殊鋼はそのパンフレットで声高らかに、
再生=RC=リサイクル中間処理
をしたと宣言しているのです。

 大同特殊鋼は自ら、このパンフレットで「廃棄物処理法に違反して無許可で中間処理をした」と宣言しているのです。

 もちろん当会では、「大同特殊鋼は有毒スラグを不法投棄した」と考えています。その販売に際しては、このパンフレットを見る限り、詐欺的手法を用いたと考えています。

 詐欺的なパンフレットですが、こと刑事告発の関係で言えば、「RC40」と勝手に再生砕石の製品コードを盗用して、率直に「RC=リサイクル=中間処理」と偽装過程を示し、無許可処理を自ら“ほのめかし”ているのです。


「天然砕石製造(佐藤建設工業提供)」と題する写真を掲げて、天然砕石の建材メーカーである佐藤建設工業とタイアップして、悪のタッグを組んだことを声高らかに喧伝しています。

 日本の産業史上、これほど露骨で大規模な製品偽装も珍しいでしょう。過去に類を見ないほど自分勝手なブラック企業同士がタイアップすることにより、大量の有害物質が“きれいな群馬ちゃん”にばら撒かれてしまった実態は、当会がこれまでに県内各地の投棄現場からレポートでお伝えしているとおりです。↑
**********続く**********

■当会では、法治国家の根幹を守るため、大規模な有害スラグ=サンパイ不法投棄事件の顛末に、出来ることは何でもやっていきたいと思います。そこで、廃棄物処理法に基づく刑事告発を、行政まかせではなく民間市民団体として行うことを現在、検討中です。

 我が国は、法治国家ですから、当会としては、大同・佐藤のようなブラック企業に対しては、2度と法令違反をしないように、厳しく遵法精神を肝に銘じさせる必要があると考えています。不法投棄をした者に対しては、当然、罰則が適用されなければ、群馬県、いや日本全国がゴミだらけになってしまうからです。

 廃棄物処理法第25条に定められた罰則は「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」です。同条で定められた罪と見なされる違反行為としては、「廃棄物処理業の無許可営業」「行政からの命令に違反」「無許可業者への処理委託」「廃棄物の不法投棄」などです。

 このうち、大同スラグ関係では、「無許可営業」と「無許可業者への処理委託」それに「不法投棄」が関係すると思われます。

 また、東吾妻町萩生地区の農道の敷砂利のように、実際は100%生一本スラグなのに、スラグ混合再生砕石などと偽装した材料証明書を役所に提出している場合には、有印文書偽造・同行使のほか、詐欺罪の適用も考えられます。

 そこで、大同・佐藤のブラック連合への刑事告発については、上記の違法行為の中から関係するものを選定して、罰条を決め、容疑が固まり次第、告発に踏み切りたいと思います。

【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
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