ファン・ボーボーと大トラ/世界むかし話 中南米/福井恵樹訳/ほるぷ出版/1988年初版
なんでわしが悪者にされるの。
そりゃヒヨコ、ブタ、ロバを食っちまったことは悪いと思うが、わしの住んでいる森があらされてしまったので、やむにやまれずにしたんだよ。
ファン・ボーボーというやつが、玉ねぎとつる草と一緒にやってきたのは、あとからわかったこと。
作ってあったシチューから、なにか歌がきこえてくるので、いらいらして、シチューの大釜を踏んだら、玉ねぎが目に入るし、ほら穴から出ようとしたら、つる草に足をとられ、こん棒でやたらとぶたれるとは。
昔話のトラは、どうにも損な役割。
昔話にのこっているということは、ベネズエラにもトラがいたということでしょう。
トラには、9種類の亜種がいるといいます。
シベリアトラ(アムールトラ)・アモイトラ・バリトラ・インドシナトラ・マレートラ・ジャワトラ・スマトラトラ・ベンガルトラ・カスピトラの9つの亜種に分類されていますが、残念ながら、バリトラ、ジャワトラ、カスピトラの3亜種はすでに絶滅してしまったといいます。
最大なのは、シベリアトラ(アムールトラ)、もっとも小さなトラは絶滅したバリトラ。
現在、アジアの十数ヵ国に生息しているトラもほとんどが、絶滅危惧種。
もしかすると、トラは昔話の世界にのこるだけかも知れないと思うと、考えさせられるところ。