路上のおじさん/サラ・V・文 クロ-ド・K・デュポア・絵 おび ただす・訳/六曜社/2017年
大都会の一日がはじまりました。
凍るような寒い夜があけ、路上のおじさんも、おきだしました。おなかをすかしていました。とてもがまんできないほどにほど はらぺこでした。つかれきったおじさんは、路上で しばらく横になります。ほんとに ほんの数分。
路上をとおりすぎる人々。「ねるとこじゃないぞ」と、いわれ またとぼとぼ あるきだしたおじさん。路上生活している人に たべものを配ってくれるショッピングセンタは、まだしまっていました。あまりに はやすぎたのです。
受付でまち、ようやく おじさんの順番がきました。ところが、「あなたのなまえを どうぞ」といわれ、名前がどうしても思い出せません。名前を名乗らないと食料はもらえないのです。しかたなく空席の目立つバスの中で、凍えきったからだをあたためますが、こどもから「この、男の人、くさーい!」といわれ、やがて乗ってきたたくさんの人が見つめる中で、居心地がわるくなり、バスをおりて公園へ。
とつぜん、女の子から「おじさん、おかし いらない?」と、ビスケットをもらったおじさん。女の子から「おじさんのかっこう、おもしろい!まるで、テディベアさんみたい!」と、声をかけられました。
夕方、配給所にならんだおじさんは、「おなまえを どうぞ?」といわれ、おじさんは、「テディベア」と、答えたのです。
スケッチ風の淡い感じの絵が、おじさんの境遇を示しているようです。
路上で横になり、とおりすぎる人びとの姿をみながら、名前を思い出せないおじさんは、ながいあいだ郵便配達人だったのを思い出します。年齢も、なぜホームレスになったかには、ふれられていません。
すべてが金の世の中、何が起こるかわかりません。家族も家もうしない、ホームレスになるのは、明日のわが身かもしれません。
少女との一瞬の交流が、ちょっとだけ希望をもたらしますが、明日は、なにが まっているでしょうか。
ベルギーの親子の作品です。
エリザベス女王逝去の報を聞いた日。