どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

小さなサンと天の竜

2025年02月24日 | 絵本(外国)

   小さなサンと天の竜/チェン・ジャンホン:作絵 平岡敦・訳/徳間書店/2016年

 

 三つの高い山に囲まれた小さな村。
 ある夏の夜、大雨がふり、がけが崩れ、村の畑は、岩や泥にうずまってしまいました。この村に、一軒だけ、谷にとどまった家がありました。この一家には、山のむこうに畑がのこっていましたし、いまにも、赤ん坊がうまれそうだったからでした。

 崖崩れがおきた三日後、にこにこ笑いながら生まれてきたサン。毎朝、お母さんはサンを背負って山をこえ、畑にむかいました。サンは、「ああ、この山さえなければ・・」というお母さんのため息を毎日きいていました。少し大きくなると、山をこえ、仕事を手伝うようになったサンでしたが、お母さんがひどく疲れて畑仕事にでられなくなると、大きな声でいいました。「ぼくが、山を動かす」。六歳でした。

 つぎの朝から、つるはしで岩を砕き、たるに入れて村のはずれに運んだサン。家族に、この子はどうかしているよといいますが、おかあさんは、「いいえ、サンはとくべつな子です。いつかおおきなことをなしとげます」とやさしく、みまもります。

 二度目の春、つるはしをふるっていると、とつぜん岩が崩れ、小さなほらあなが、ぽっかりと口をあけました。なかには、いいかおりのするキノコが生えていて、ほら穴の奥には、白い髭を長くのばしたおじいさんがすわっていました。

 やがて、ふしぎなおじいさんにもたすけられ、山の上で、香をたいて、大空に祈っていると、とつぜん三筋の稲妻が闇を引きさき、三頭の白い竜があらわれました。

 

 不可能に挑む不屈の精神。そしてそれを助けてくれるふしぎなおじいさん。昔話風の展開です。

 過酷な生活を打破するため、家族のために山を動かすことを決意したサンの決意が伝わってくるような目。
 サンが積みあげた石の高さ。
 稲妻が闇を引きさくようす。
 三頭の白い竜が、火をはき、大地から山を引きぬいて北へ運ぶ場面。
 見どころ満載、これぞ絵本です。

 山の中腹に彫られた仏像や、サンとおじいさんが祈る山には、三体の石像があるのですが、これはなんだったのでしょうか。

 中国のことわざ、「愚公山を動かす」は、テーマになりやすいので、ほかにも類似のものがありますが、絵の魅力がつまった絵本です。


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