【岩手大】オス・メスや別の個体、猫はふんの臭いで識別
2018年5月16日 (水)配信読売新聞
猫がふんの臭いの原因となる物質の有無を嗅ぎ分けて、他の猫の雌雄や個体を識別していることがわかったと、岩手大農学部の宮崎雅雄准教授らの研究チームが発表した。
臭いの原因物質を特定したことで、消臭剤の開発など、猫のふんの悪臭対策への効果が期待できるという。
近年、ペットとして猫を飼う人が増える一方、放し飼いや野良猫によりふん尿の被害も増えている。研究チームでは、ふんの臭いを介した猫の縄張り行動の研究に取り組んだ。
人間は腎臓の病気になると尿にたんぱく質が多く混じるようになるが、猫は健康な状態でもたんぱく質を多く含む尿を出す。このたんぱく質から、猫の尿独特の悪臭の原因物質が生み出される。研究チームは、この原因物質を揮発性の硫黄含有化合物と特定し、猫のふんにも含まれることを突き止めた。
実験では、猫に対し、この化合物を薬品処理して臭わないようにしたふんを2回嗅がせた後、化合物の臭いがするふんを示した。2回目は臭いに慣れて嗅ぐ時間が減ったが、3回目は嗅ぐ時間が増え、臭いを識別していることが判明。化合物は雄の方が多く、雌雄を区別するフェロモンとして機能していると結論づけた。
さらに、悪臭の主成分で個体ごとに異なる脂肪酸も嗅ぎ分けることができ、脂肪酸の臭いで個体を識別しているとみられる。
今回発見された化合物は銅や銀などの金属イオンと結合しやすい性質があり、結合すると揮発性が弱まり臭いが低減するという。宮崎准教授は「研究で猫の臭いの識別能力が把握できた。ふんの悪臭を取り除く技術開発への応用も期待できる」と話している。