島根県立大加納教授 ALS患者の脳波読み取り、意思識別するアプリ開発
2019年9月3日 (火)配信山陰中央新報
意思表示できない重度の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の意思を識別するスマートフォン(スマホ)用アプリを、島根県立大出雲キャンパス看護栄養学部(出雲市西林木町)の加納尚之教授(56)が開発した。患者の脳波から「YES(はい)」か「NO(いいえ)」かを読み取る仕組みで、手軽に使えるのが特長。患者の意思に沿った介護によって患者や家族、医療関係者の負担と不安の軽減が期待され、製品化に向けて連携企業を探している。
ALSは次第に全身が動かせなくなる難病で、厚生労働省の2017年度のまとめでは、患者は全国で少なくとも9636人(島根91人、鳥取48人)。加納教授によると、病状が進むと、意識や聴覚、思考能力はあるものの全身が動かせず、話したり、目を開けられなかったりする「完全閉じ込め症候群」になる可能性があるという。
症候群になった患者と、支える家族、医療関係者が意思疎通する手段がほとんどないため、15年秋に開発に着手。人が何かを意識した時に脳から出る電気信号の脳波を活用し、使いやすいようアンドロイド対応のスマホのアプリにした。
スマホに手のひらの大きさの脳波測定機器を取り付け、機器から伸びる3本の電極を患者の額、つむじ、耳たぶに装着して使う。
脳波の識別に使うのは4種類の音で、「窓を開けますか」など簡単な問い掛けに対する答えが「YES」なら指定した1種類の音を、「NO」なら別の1種類の音を意識するよう患者に伝える。4種類の音を各15回ずつ計60回不規則に流し、意識した際の特徴的な脳波を読み取り、スマホ画面に「YES」か「NO」で意思が表れる。
4種類の音はそれぞれ「◎」「×」「☆」「□」の記号に分類され、音が出るのと同時に画面に表示される。完全閉じ込め症候群になる前に訓練しておけば、症候群になった時により効果的に使えるという。
患者1人に対して実証実験を行って効果を検証し、論文が看護理工学会誌に掲載された。製品化に向けて連携企業とともに実証実験を重ねて性能を高めたい考え。価格は未定で5万円以下を想定する。
加納教授は工学技術で患者の生活を支える生体医工学が専門で、22歳の頃からALS患者の意思伝達機器の研究に励み、過去に患者の目の動きやまばたきなどを活用した機器を開発。ALSの国会議員が誕生して病気への関心が高まる中、「患者や家族らとの会話の一助になればうれしい」と話した。
2019年9月3日 (火)配信山陰中央新報
意思表示できない重度の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の意思を識別するスマートフォン(スマホ)用アプリを、島根県立大出雲キャンパス看護栄養学部(出雲市西林木町)の加納尚之教授(56)が開発した。患者の脳波から「YES(はい)」か「NO(いいえ)」かを読み取る仕組みで、手軽に使えるのが特長。患者の意思に沿った介護によって患者や家族、医療関係者の負担と不安の軽減が期待され、製品化に向けて連携企業を探している。
ALSは次第に全身が動かせなくなる難病で、厚生労働省の2017年度のまとめでは、患者は全国で少なくとも9636人(島根91人、鳥取48人)。加納教授によると、病状が進むと、意識や聴覚、思考能力はあるものの全身が動かせず、話したり、目を開けられなかったりする「完全閉じ込め症候群」になる可能性があるという。
症候群になった患者と、支える家族、医療関係者が意思疎通する手段がほとんどないため、15年秋に開発に着手。人が何かを意識した時に脳から出る電気信号の脳波を活用し、使いやすいようアンドロイド対応のスマホのアプリにした。
スマホに手のひらの大きさの脳波測定機器を取り付け、機器から伸びる3本の電極を患者の額、つむじ、耳たぶに装着して使う。
脳波の識別に使うのは4種類の音で、「窓を開けますか」など簡単な問い掛けに対する答えが「YES」なら指定した1種類の音を、「NO」なら別の1種類の音を意識するよう患者に伝える。4種類の音を各15回ずつ計60回不規則に流し、意識した際の特徴的な脳波を読み取り、スマホ画面に「YES」か「NO」で意思が表れる。
4種類の音はそれぞれ「◎」「×」「☆」「□」の記号に分類され、音が出るのと同時に画面に表示される。完全閉じ込め症候群になる前に訓練しておけば、症候群になった時により効果的に使えるという。
患者1人に対して実証実験を行って効果を検証し、論文が看護理工学会誌に掲載された。製品化に向けて連携企業とともに実証実験を重ねて性能を高めたい考え。価格は未定で5万円以下を想定する。
加納教授は工学技術で患者の生活を支える生体医工学が専門で、22歳の頃からALS患者の意思伝達機器の研究に励み、過去に患者の目の動きやまばたきなどを活用した機器を開発。ALSの国会議員が誕生して病気への関心が高まる中、「患者や家族らとの会話の一助になればうれしい」と話した。