アトピーのアドヒアランスを上げるには【小児臨床アレルギー学会2019】
京都府立医大・加藤則人氏の報告
MMJ2019年9月20日 (金)配信 アレルギー疾患小児科疾患皮膚疾患
第36回日本小児臨床アレルギー学会(会長・土生川千珠独立行政法人国立病院機構南和歌山医療センターアレルギー科)が7月27、28日、和歌山市内で開かれ、27日には共催シンポジウム2「PAEからAEへ 成人科から見た小児アレルギー疾患の診療への期待」があった。京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学の加藤則人教授は「成人期アトピー性皮膚炎」と題して発表し、「寛解を維持するツールとして薬物療法があると患者に伝えることが重要」とまとめた。(MMJ編集長・吉川学)
ゴールを段階的に示して治療成果を賞賛すべき
加藤教授はまず、アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す搔痒のある湿疹を主病変とする疾患で、患者の多くはアトピー素因を持つという定義を紹介。乳児では紅斑、湿潤性紅斑などの急性病変が主体で、頭、顔から始まりしばしば体幹、四肢に下降するのに対し、成人では浸潤性紅斑、苔癬化病変など慢性病変が主体で、頭、頸、胸、背など上半身に皮疹が強い傾向があると話した。
診断治療アルゴリズムを示し、しっかりしたと診断すること必要としたうえで、除外すべき診断として接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、疥癬、乾癬などをあげた。見分けが難しい場合もあり、皮膚T細胞性リンパ腫など、典型的なアトピー症状と異なる場合は皮膚生検で病理学的所見を検討することも大切だと述べた。
抗炎症外用薬や保湿外用薬は、ベトベトするなどで治療アドヒアランスが低下しがちだと指摘。対策として、思春期以降はこれまで親を主体にしてきた説明を本人にして、理解を共有することだと話した。さらに、自然寛解も期待されること、そのために達成すべきゴールを段階的に本人に示し、治療の成果を賞賛し本人に成果の自覚を促すことだと述べた。
心身医学を意識したアプローチが奏効する場合も
また、湿疹があることが最大の悪化因子であると指摘。皮膚の炎症により皮膚バリア機能の低下や被刺激性の亢進、搔破刺激によって湿疹がますます悪化する悪循環が起きるため、薬物療法で炎症を制御することがアトピー性皮膚炎の悪化因子を減らすことにもなると解説した。
治療目標と予後については、症状がないか軽微で日常生活に支障がなく薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することが目標とし、予後については一般に慢性に経過し適切な治療で症状がコントロースされた状態が長く維持されると寛解も期待されると述べた。
最後に、正確な診断と抗炎症外用薬を中心とした薬物療法が重要で、湿疹が最大の悪化因子であることを患者と共有し、寛解を維持するツールとして薬物療法があると伝えることが重要としたうえ、成人のアトピー性皮膚炎では、薬物療法に加えて心身医学を意識したアプローチが奏効することがあるとまとめた。
京都府立医大・加藤則人氏の報告
MMJ2019年9月20日 (金)配信 アレルギー疾患小児科疾患皮膚疾患
第36回日本小児臨床アレルギー学会(会長・土生川千珠独立行政法人国立病院機構南和歌山医療センターアレルギー科)が7月27、28日、和歌山市内で開かれ、27日には共催シンポジウム2「PAEからAEへ 成人科から見た小児アレルギー疾患の診療への期待」があった。京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学の加藤則人教授は「成人期アトピー性皮膚炎」と題して発表し、「寛解を維持するツールとして薬物療法があると患者に伝えることが重要」とまとめた。(MMJ編集長・吉川学)
ゴールを段階的に示して治療成果を賞賛すべき
加藤教授はまず、アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す搔痒のある湿疹を主病変とする疾患で、患者の多くはアトピー素因を持つという定義を紹介。乳児では紅斑、湿潤性紅斑などの急性病変が主体で、頭、顔から始まりしばしば体幹、四肢に下降するのに対し、成人では浸潤性紅斑、苔癬化病変など慢性病変が主体で、頭、頸、胸、背など上半身に皮疹が強い傾向があると話した。
診断治療アルゴリズムを示し、しっかりしたと診断すること必要としたうえで、除外すべき診断として接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、疥癬、乾癬などをあげた。見分けが難しい場合もあり、皮膚T細胞性リンパ腫など、典型的なアトピー症状と異なる場合は皮膚生検で病理学的所見を検討することも大切だと述べた。
抗炎症外用薬や保湿外用薬は、ベトベトするなどで治療アドヒアランスが低下しがちだと指摘。対策として、思春期以降はこれまで親を主体にしてきた説明を本人にして、理解を共有することだと話した。さらに、自然寛解も期待されること、そのために達成すべきゴールを段階的に本人に示し、治療の成果を賞賛し本人に成果の自覚を促すことだと述べた。
心身医学を意識したアプローチが奏効する場合も
また、湿疹があることが最大の悪化因子であると指摘。皮膚の炎症により皮膚バリア機能の低下や被刺激性の亢進、搔破刺激によって湿疹がますます悪化する悪循環が起きるため、薬物療法で炎症を制御することがアトピー性皮膚炎の悪化因子を減らすことにもなると解説した。
治療目標と予後については、症状がないか軽微で日常生活に支障がなく薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することが目標とし、予後については一般に慢性に経過し適切な治療で症状がコントロースされた状態が長く維持されると寛解も期待されると述べた。
最後に、正確な診断と抗炎症外用薬を中心とした薬物療法が重要で、湿疹が最大の悪化因子であることを患者と共有し、寛解を維持するツールとして薬物療法があると伝えることが重要としたうえ、成人のアトピー性皮膚炎では、薬物療法に加えて心身医学を意識したアプローチが奏効することがあるとまとめた。