人生の最終段階…自ら意思表示、室蘭・日鋼記念病院でも「ACP」運用始める
2019年10月8日 (火)配信室蘭民報
「終末期にどのような医療やケアを受けるか」について、事前に患者が家族や医療者らと話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」。全国的に取り組みが進む中、室蘭・日鋼記念病院(柳谷晶仁院長)でも今年3月から運用を始めた。患者自らが望んでいる「最終段階における医療・ケアへの思い」について意思表示してもらうことで「その人の人生に合わせた医療の提供を」との思いもある。
■普及を促す
延命治療を希望する、しないにかかわらず、自らの意識がしっかりしているうちに、自身の終末期医療について「事前に・明確に」指示する「リビングウィル」(生前意思)という考え方がある。
一方、「患者の意思決定支援計画」とも呼ばれるACPは、リビングウィルよりさらに一歩進み、「人生の最期にどんな医療やケアを受けたいか―について、家族や医師らと話し合いを重ね、希望を託す」取り組み。欧米では既に普及している考え方だ。
厚生労働省では、昨年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(改訂版)を策定。亡くなる直前、過ごす場所や治療の選択が必ずしも自身の望み通りにいかない状況なども受け、ACPの普及を促している。
■適切な説明
こうした動きに、日鋼記念病院では昨春、ワーキンググループを立ち上げ、「適切な看取(みと)りに対する指針」を策定。3月からACPの運用を始めた。
同病院のACPは、終末期を迎える前のなるべく早くに、患者とその家族に医療・介護従事者らが適切な説明と話し合いを行い、「患者本人の意思決定を基本として、医療・ケアを行うために支援体制を整える」といった内容だ。
具体的には、(1)病状説明(2)急変時の心肺蘇生(3)当院で対処困難な疾患の対応(4)代理決定者(自身で希望を判断できなくなった場合、主治医と相談して治療方針を決める人)について(5)人生の最終段階を迎えた時に希望する医療行為―の5項目について「急変時および人生の最終段階における意向確認書」に沿って、本人の意思をそれぞれ確認していく。
■価値観共有
同病院によると、ACPに理解を示し、「自らの意思」を示した人は延べ264人(9月末現在)に上る。「余命が分かった段階で積極的な治療を望まない人」がいる一方、経管栄養や胃ろうなどの「あらゆる医療行為を受けても延命を望む人」も。「その考え、受け止め方はさまざま」(ACP委員会)だ。
榎並宣裕副院長(ACP委員会委員長)は「寿命が延びる中、合併症をはじめ、病気とともに過ごす人が多くなっている」とし、「意思決定の伴走者として、価値観を共有しながらサポートしたい」と話す。
一方、ACPでは、表明した意思についての変更は可能だ。中には、考えが変わるたびに、意向確認書を何度も提出する人もいる―という。同病院でも「気持ちは状態や時間の経過によっても変化する」(榎並副院長)とし、定期的に話し合って、希望内容を見直すなど、家族や治療・ケアに当たる人たちと患者の考えを共有している。
ふれあいサロンほっとな~る(室蘭市中島町)で、15日午後1時から開催の「ふれあいサロン・お元気講座」で、同病院の山本亮医療福祉相談室長(医療ソーシャルワーカー)がACPについて解説する。山本室長は「ご自身の人生を快適に、充実した『生』を全うするため、じっくり考える機会になれば」などと話す。入場無料。
2019年10月8日 (火)配信室蘭民報
「終末期にどのような医療やケアを受けるか」について、事前に患者が家族や医療者らと話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」。全国的に取り組みが進む中、室蘭・日鋼記念病院(柳谷晶仁院長)でも今年3月から運用を始めた。患者自らが望んでいる「最終段階における医療・ケアへの思い」について意思表示してもらうことで「その人の人生に合わせた医療の提供を」との思いもある。
■普及を促す
延命治療を希望する、しないにかかわらず、自らの意識がしっかりしているうちに、自身の終末期医療について「事前に・明確に」指示する「リビングウィル」(生前意思)という考え方がある。
一方、「患者の意思決定支援計画」とも呼ばれるACPは、リビングウィルよりさらに一歩進み、「人生の最期にどんな医療やケアを受けたいか―について、家族や医師らと話し合いを重ね、希望を託す」取り組み。欧米では既に普及している考え方だ。
厚生労働省では、昨年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(改訂版)を策定。亡くなる直前、過ごす場所や治療の選択が必ずしも自身の望み通りにいかない状況なども受け、ACPの普及を促している。
■適切な説明
こうした動きに、日鋼記念病院では昨春、ワーキンググループを立ち上げ、「適切な看取(みと)りに対する指針」を策定。3月からACPの運用を始めた。
同病院のACPは、終末期を迎える前のなるべく早くに、患者とその家族に医療・介護従事者らが適切な説明と話し合いを行い、「患者本人の意思決定を基本として、医療・ケアを行うために支援体制を整える」といった内容だ。
具体的には、(1)病状説明(2)急変時の心肺蘇生(3)当院で対処困難な疾患の対応(4)代理決定者(自身で希望を判断できなくなった場合、主治医と相談して治療方針を決める人)について(5)人生の最終段階を迎えた時に希望する医療行為―の5項目について「急変時および人生の最終段階における意向確認書」に沿って、本人の意思をそれぞれ確認していく。
■価値観共有
同病院によると、ACPに理解を示し、「自らの意思」を示した人は延べ264人(9月末現在)に上る。「余命が分かった段階で積極的な治療を望まない人」がいる一方、経管栄養や胃ろうなどの「あらゆる医療行為を受けても延命を望む人」も。「その考え、受け止め方はさまざま」(ACP委員会)だ。
榎並宣裕副院長(ACP委員会委員長)は「寿命が延びる中、合併症をはじめ、病気とともに過ごす人が多くなっている」とし、「意思決定の伴走者として、価値観を共有しながらサポートしたい」と話す。
一方、ACPでは、表明した意思についての変更は可能だ。中には、考えが変わるたびに、意向確認書を何度も提出する人もいる―という。同病院でも「気持ちは状態や時間の経過によっても変化する」(榎並副院長)とし、定期的に話し合って、希望内容を見直すなど、家族や治療・ケアに当たる人たちと患者の考えを共有している。
ふれあいサロンほっとな~る(室蘭市中島町)で、15日午後1時から開催の「ふれあいサロン・お元気講座」で、同病院の山本亮医療福祉相談室長(医療ソーシャルワーカー)がACPについて解説する。山本室長は「ご自身の人生を快適に、充実した『生』を全うするため、じっくり考える機会になれば」などと話す。入場無料。