コロナ後遺症に横断的ケアを 高知大医学部・横山教授が指摘
2021年1月6日 (水)配信高知新聞
倦怠(けんたい)感や息切れ、嗅覚の異常...。新型コロナウイルス感染症の後遺症が国内外で相次いで報告されているが、その実態は明らかになっていない。日本呼吸器学会の理事長として調査に取り組む高知大学医学部の横山彰仁教授(62)=呼吸器・アレルギー内科学=は「普通の感染症と異なるのは間違いない。診療科を横断したフォローが必要だ」と話す。
「コーヒーやカレーの匂いも分からない時があって。料理の香りを楽しめなくなったのが残念で...」
県内の元患者の男性は、退院して数カ月たっても嗅覚に違和感を覚えている。
「脳に何か異常があって急に倒れるのではないか」と不安に駆られ、1日に何度も血圧を測った時期もあったという。現在は嗅覚が少しずつ回復している実感があり、「『無事に退院できただけでよかった』と気にしすぎないようにしてます」と話した。
▼4カ月後も
横山教授は「普通の感染症ならば後遺症は少ないが、新型コロナは人によってさまざまな後遺症が出る。インフルエンザとは大きく違う」と指摘する。
イタリアからの報告では、患者143人のうち約9割が発症からおよそ2カ月たっても倦怠感や呼吸困難、関節痛、胸痛などを訴えた。フランスや中国からも、退院後の倦怠感や息切れなどが報告されている。
国内では、国立国際医療研究センター(東京)が回復者63人を調査したところ、発症から約4カ月たった時点で、息切れ(7人)、倦怠感と嗅覚異常(各6人)、せき(4人)などの症状があった。14人が脱毛を経験したという。
高知県内では、退院者133人を対象にした調査で、26人が味覚異常や倦怠感、関節痛、精神面での不調などを訴えた。うち7人は4週間後も症状が継続したとしている。
▼2つの要因
横山教授は「報告されている全ての症状が新型コロナの後遺症かどうかはまだ分からない」とした上で、後遺症の要因に大きく2点を挙げる。
一つは、ウイルスによる障害が肺や血管、心臓などに残っていること。重度の肺炎が治る過程で肺の細胞が硬くなる「線維化」が起こり、息切れなどの原因になっている可能性があるという。また、免疫が過剰に働く「サイトカインストーム」で血管などが傷ついたことも関係していると考えられている。
二つ目は、病室や集中治療室などで人に会えず閉じ込められたことによるストレスや筋力低下などで、横山教授は「これらの要因が複合的に絡み合っているのではないか」と指摘した。
日本呼吸器学会は後遺症の実態を明らかにするため、昨年9月から本格的な調査に乗り出している。全国76施設の協力を得て、退院した元患者の肺機能や味覚、睡眠障害の有無などを3カ月おきに1年間検査する計画で、症例数の目標は千人。データは高知大医学部の「次世代医療創造センター」で集計する。
横山教授は「どの程度の割合でどんな後遺症が出るのか。それが今回の調査で分かるのでは」と話し、「新型コロナの後遺症は多岐にわたり、精神的なケアも欠かせない。診療科を横断したフォロー態勢が必要だ」と訴えている。