[コロナ最前線 緊急事態再び]街の人出、減り方鈍く…「かえって店すいている」と外出
東京・銀座。冬晴れの9日午後1時過ぎ、数寄屋橋交差点付近は、色とりどりのマスクをした若者やカップルらが行き交っていた。百貨店などの商業施設が新春セールを開催し、正月向けのBGMも聞こえる。ファストフード店前には、客の列ができていた。
洋服を買いに来た横浜市の会社員女性(26)は「前回の緊急事態宣言の時は出歩かなかったけど、今回は店が開いているし、宣言が出てかえってすいていると思った」と話した。
昨年4月11日、緊急事態宣言が出て初の土曜日の同じ時間帯。多くの商業施設が休業し、付近からは人影が消え、ハトやスズメが歩道を闊歩かっぽしていた。それから9か月。今回は人出の減り方が鈍い。NTTドコモの「モバイル空間統計」のデータによると、昨年4月11日の銀座の人出は感染拡大前から66%減ったが、今回は30%減にとどまる。
ただ、長引く新型コロナの影響は徐々に街を疲弊させている。シニア向けの靴を扱う店にはこの日、正午を過ぎても客が一人も訪れなかった。「銀座は、ぶらぶら歩いて買い物をしたり、食事をしたりして楽しむ街。うちの店もそんな客が多かったが、今は開店休業状態で、いつまで持つか」。店長の男性(61)がぼそりとつぶやいた。
「前回」と対照的な光景
新型コロナウイルスの感染が拡大する東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県は9日、2度目の緊急事態宣言が出てから初となる週末を迎えた。昨年4月の緊急事態宣言の直後は百貨店や小売店などの商業施設が軒並み店を閉め、人影が消えたが、今回は多くの人が街に繰り出している。
肩ぶつかりそう
首都圏から多くの若者らが集まる東京・渋谷。9日正午過ぎ、駅前のスクランブル交差点では、人をよけながら歩く大勢の人の姿があった。前回の緊急事態宣言直後の土曜日(昨年4月11日)の同じ時間帯に、ガラガラの交差点を通行人が真っすぐ歩いていたのとは対照的だった。
「前回の宣言時は、青信号でも数人しか横断していなかった。今回は、若者から年配の方まで、幅広い年代の人が街に出ているように感じる」。交差点近くで営業する「三千里薬品 宇田川店」の飯高宗久店長(47)がそう語った。
飲食店や衣料品店などが並ぶ「渋谷センター街」。昨年4月は幅広い業種への休業要請などを受け、多くの店がシャッターを下ろしていた。この日はほとんどが開いており、昼時の牛丼店は満席状態。ラーメン店の前では、5、6人の若者が列を作っていた。
都は今回、昨年4月の宣言時と同様、通院や必需品の買い出しなど、生活や健康の維持のために必要な場合を除き、不要不急の外出自粛を求めている。一方で前回行った休業要請については見送り、飲食店への午後8時までの時短要請などにとどめている。
昨年の宣言時には臨時休館した「SHIBUYA109」はこの日、午後8時まで営業。友人と待ち合わせていた千葉県浦安市の女子高校生(18)は、「午後8時までなら出歩いても大丈夫なのでは。買い物の後、できれば食事もして帰りたい」と話していた。
家族連れ目立つ
東京都品川区の戸越銀座商店街でも正午頃、マスクを着け、散歩や買い物を楽しむ家族連れが目立った。昨年4月は、スーパー前に買いだめで訪れた客が長蛇の列を作り、ドラッグストアではトイレットペーパーが品薄になっていた。この日はそうした様子は見られなかった。
商店街にある居酒屋「炭火ホルモン焼のネバーランド」は8日から、午前0時頃までの閉店時間を午後8時に早めた。客足が減ることを見越し、9日からは店の前で契約農家の野菜の販売も始めた。
経営する沢田泰広社長(34)は「良くも悪くも、みんな『コロナ慣れ』してきている部分がある気がする。コロナ禍での営業戦略を自分なりに練ってきたので、前回ほど悲観的ではない」と前向きだった。
前回の宣言時は休園していた東京ディズニーリゾート(TDR)。この日は閉園時間を早めて営業しており、最寄り駅の千葉県浦安市のJR舞浜駅には、開園1時間前の午前8時頃から多くの家族連れや学生が、次々と降り立った。
妻、娘2人と訪れた埼玉県熊谷市の会社員鈴木義春さん(47)は、5日に中止が決まった長女の成人式の代わりに、「家族でお祝いしてあげたい」と来園。長女とは成人後に園内のバーで酒を飲む約束をしていたが、今は休業中でかなえられない。「せめて楽しい一日にしたい」とゲートをくぐった。