コロナ消毒、あの手この手 熱湯、ヒーター、研究続々 ロボット活躍、普及に期待
2021年1月4日 (月)配信共同通信社
世界で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染防止に向け、お湯やヒーター、市販のマウスウオッシュに紫外線など、身近なものを利用して消毒する研究が世界中で進んでいる。消毒ロボットも既に活躍。専門家はマスク着用や手洗い、換気など従来の対策も続ける必要性があると強調するが、新たな「あの手この手」の普及にも期待が集まる。
米航空機大手ボーイングはコックピットでヒーターを使い3時間にわたり温度40度に保つ実験をしたところ、新型コロナウイルスが99・9%以上死滅したとの結果を昨年12月に発表した。特別な設計で実験しており、日常生活を送る空間では実現不可能だが、今後のコロナ対策に参考となりそうだ。
熱湯も有効だ。日本の厚生労働省は、食器や箸は80度の熱水に10分さらせばウイルスを死滅させることができるとしている。衣類は通常の洗濯でも効果があるという。
英カーディフ大のチームは口内環境を再現し、市販のマウスウオッシュを複数実験。界面活性剤の塩化セチルピリジニウム(CPC)を0・07%以上含むもので、ほぼ除去できると確認した。
イスラエルの研究チームは遺伝子を覆う膜を壊すことで感染力が失われる特性に注目。似た構造のウイルスに特殊な発光ダイオード(LED)電球を使って波長285ナノメートル(ナノは10億分の1)の紫外線を照射し、30秒以内に99・9%以上を死滅させた。コロナでも効果が期待できるという。
人体に直接当たると有害だが、ハダス・ママネ教授は「エアコンに取り付ければ、吸い込んだ空気を浄化し室内に行き渡らせられる」と実用化に自信を示す。実際に米国では紫外線を照射するロボットを医療施設のほか空港などで導入。日本でも活用が始まっている。
広島大の坂口剛正(さかぐち・たけまさ)教授(ウイルス学)はウイルスを不活性化させても、別のウイルスが付着すれば感染リスクはあると指摘し「今後も手洗いとマスク着用は欠かせない」と話した。(共同=新里環)
※紫外線発光ダイオード(LED)電球
電流を流すと400ナノメートル以下の波長の紫外線を照射できる、半導体「発光ダイオード」を使った電球。紫外線には細菌やウイルスを破壊する効果があり、光が当たる部分であれば水や空気、物質も除菌できる。使用済みの防護服の殺菌や、空気清浄器などへの搭載も期待されている。除菌作用が強く波長によっては人体に有害なものもある。医療現場での殺菌にはこれまで水銀灯が使われていた。紫外線LEDは環境への悪影響も少なく、汎用(はんよう)化に期待がかかる。(共同)
※エアロゾル
空気中に浮遊する液体や固体の微粒子を指す。英単語が元で、つづりは「AEROSOL」。AEROは空中、SOLは液体中に固体の微粒子が分散している状態を指す。生成過程の違いにより、粉じんやミストなどとも呼ばれる。ディーゼルエンジンが出す黒煙や、建設現場でのアスベスト(石綿)の問題で使われた用語。新型コロナウイルス感染で問題となる飛沫(ひまつ)の直径は0・005ミリほど。1~2メートルは飛散するが、重さによりその後落下する。(共同)