急変前兆を察知し救命 院内迅速対応システム導入 福井赤十字病院
入院患者の容体が急変する前兆をいち早く察知して早期に医療介入する「院内迅速対応システム」(RRS)を福井県福井市の福井赤十字病院が導入している。早期介入により、患者の予期せぬ死亡を防いだり、状態悪化を回避したりすることにつながっている。
RRSは、心停止をはじめとした多くの急変には前兆があるとされる点に着目したシステムだ。福井赤十字病院は2020年7月から導入。麻酔科、救急科、循環器科の医師10人と、研修プログラムを受けたベテラン看護師8人でつくるチーム(RRT)が平日の日中(午前8時半~午後5時)に活動している。
同病院でのRRSの基本的な流れはこうだ。
(1)一般病棟の看護師が、術後や集中治療室(ICU)退室後の患者、「何かおかしいな」と懸念を抱いた患者について、1分間の呼吸数や脈拍、血圧といった7項目のデータを「早期警告スコア」で評価。
(2)スコアで中リスク(急変の可能性あり)、高リスク(急変の可能性が高い)の場合は、RRT看護師に連絡してRRSを起動。
(3)RRT看護師は即時に患者の状態を確認・判断し、RRT医師と情報共有。
(4)RRT医師は、必要があれば現場で初期対応を行い、主治医と連携してICUでの集中管理や病棟での治療継続などの方針を決定。
平日日中は毎日、当番制でRRTの医師と看護師が1人ずつ待機する。看護師は呼び出しに備えるほか、全身麻酔による手術を受けた、ICUから退出したといった急変リスクのある患者をピックアップして病棟を訪問し、病棟看護師と情報交換や状態確認をしている。
同病院では今年3月末までに、81回RRSが起動され、約3割の患者がICUに入室することになった。手術後に病棟で経過観察をしていた高齢女性は、急変の前兆を察知する上で重要な呼吸数が異常だったため、病棟看護師がRRSを起動。ICUへ運び込まれた。女性はその後順調に回復し、退院したという。
RRSの導入は病棟看護師の負担軽減にもつながっている。「何かおかしい」と感じたら、主治医を通さなくても、迷わずにRRSを起動することができる。小松和人副院長は「いつも見ている病棟看護師が感じた『何か変だな』ということが大事。RRS導入で気軽に相談できるような体制になった」と話す。
課題は、24時間365日体制を早急に整備すること。整備にはマンパワーが必要で、RRT看護師の育成を進めていく。小松副院長は「RRS導入前よりも明らかに早期の医療介入ができるようになった。より体制を充実させていきたい」と話していた。