【岩手】学校歯科検診 「要治療者」受診半数に満たず 4割の小中で「口腔崩壊」確認 県保険医協調査
地域 2015年10月27日 (火)配信毎日新聞社
県内の小中学校で、歯科検診で虫歯などが見つかった子どものうち、実際に治療を受けているのは半数に満たないことが、県保険医協会が初めて実施した調査で明らかになった。虫歯が10本以上あるなど「口腔(こうくう)崩壊」と呼ばれる状態の子どもも、県内の小中学校の4割で確認し、同協会は「体の健康は歯から。異常があれば早期治療を」と呼びかけている。【春増翔太】
子どもの口腔衛生については、大阪府歯科保険医協会による昨年の調査で、歯科を受診できない子どもの存在が浮き彫りになり、全国的に問題化している。県保険医協会も今年2~3月、県内の全小中学校516校にアンケートし、282校(55%)から得た回答をまとめた。
その結果、歯科検診を受けた子ども5万1051人のうち、虫歯や歯周病があり、治療が必要だったのは3割超の1万6386人だった。しかし、こうした「要治療者」の中で、実際に受診していたのは7637人(47%)と半数に満たなかった。
一方、回答を寄せた学校のうち、112校(40%)が「ここ数年で口腔崩壊の子どもがいた」と答えた。自由記述では、「就学時に乳歯が全部虫歯の生徒がおり、親のネグレクト(育児放棄)が考えられる」「生えている歯17本の全てが虫歯の生徒がいた」などの実例を挙げた学校もあった。
同協会の小山田栄二副会長は「受診率の低さが最も問題」と指摘。虫歯の悪化などが進むと、十分に食べ物をかめないことによる偏食や低栄養▽心身の発達や健康への悪影響▽痛みによる集中力の低下や精神的な不安定――などが懸念されるという。
文部科学省の調査によると、県内の子どもたちは、全国的に見ても虫歯保有率が高い。盛岡市内の小学校で学校歯科医を務める小山田副会長は「早めに治療する方が、時間も費用も少なくて済む。保護者や学校での意識向上が子どもの健康には欠かせない」と話している。
◇「窓口無料化」求める声
今回の調査結果から県保険医協会が危惧するのは、子どもの歯を取り巻く環境の「二極化」だ。文部科学省の調査によると、12歳児1人当たりの虫歯の数は、ここ10年で半減となり大きく改善。一方で児童の口腔崩壊は深刻で、同協会は「家庭の経済格差が背景にある」として、子どもの医療費の「窓口無料化」を県や国に強く求めている。
県は東北地方で唯一、医療機関の窓口で一度支払い、後から償還払いを受ける方式を採っている。このため、保護者に一時的とはいえ負担が発生し「金銭的な理由で、子どもに必要なタイミングで治療を受けさせられない保護者もいる」(小山田副会長)という。
実際に滝沢市では、母親が一時的な金銭負担を理由に、3人の息子を一緒に治療してもらうことができず、長男から順番に受診させた結果、完治が遅れて症状が悪化。余計に治療費がかかったケースがあったという。
今回のアンケート調査でも、歯医者を受診しない理由として学校が挙げたのは、「親の意識の低さ」(27%)や「家庭の事情」(21%)に次いで、「経済的な理由」(18%)が多かった。各校の養護教諭からも「窓口無料化になれば受診率は上がる」「治療費援助も医療券だと面倒。簡単になればいい」などの声が上がっている。
地域 2015年10月27日 (火)配信毎日新聞社
県内の小中学校で、歯科検診で虫歯などが見つかった子どものうち、実際に治療を受けているのは半数に満たないことが、県保険医協会が初めて実施した調査で明らかになった。虫歯が10本以上あるなど「口腔(こうくう)崩壊」と呼ばれる状態の子どもも、県内の小中学校の4割で確認し、同協会は「体の健康は歯から。異常があれば早期治療を」と呼びかけている。【春増翔太】
子どもの口腔衛生については、大阪府歯科保険医協会による昨年の調査で、歯科を受診できない子どもの存在が浮き彫りになり、全国的に問題化している。県保険医協会も今年2~3月、県内の全小中学校516校にアンケートし、282校(55%)から得た回答をまとめた。
その結果、歯科検診を受けた子ども5万1051人のうち、虫歯や歯周病があり、治療が必要だったのは3割超の1万6386人だった。しかし、こうした「要治療者」の中で、実際に受診していたのは7637人(47%)と半数に満たなかった。
一方、回答を寄せた学校のうち、112校(40%)が「ここ数年で口腔崩壊の子どもがいた」と答えた。自由記述では、「就学時に乳歯が全部虫歯の生徒がおり、親のネグレクト(育児放棄)が考えられる」「生えている歯17本の全てが虫歯の生徒がいた」などの実例を挙げた学校もあった。
同協会の小山田栄二副会長は「受診率の低さが最も問題」と指摘。虫歯の悪化などが進むと、十分に食べ物をかめないことによる偏食や低栄養▽心身の発達や健康への悪影響▽痛みによる集中力の低下や精神的な不安定――などが懸念されるという。
文部科学省の調査によると、県内の子どもたちは、全国的に見ても虫歯保有率が高い。盛岡市内の小学校で学校歯科医を務める小山田副会長は「早めに治療する方が、時間も費用も少なくて済む。保護者や学校での意識向上が子どもの健康には欠かせない」と話している。
◇「窓口無料化」求める声
今回の調査結果から県保険医協会が危惧するのは、子どもの歯を取り巻く環境の「二極化」だ。文部科学省の調査によると、12歳児1人当たりの虫歯の数は、ここ10年で半減となり大きく改善。一方で児童の口腔崩壊は深刻で、同協会は「家庭の経済格差が背景にある」として、子どもの医療費の「窓口無料化」を県や国に強く求めている。
県は東北地方で唯一、医療機関の窓口で一度支払い、後から償還払いを受ける方式を採っている。このため、保護者に一時的とはいえ負担が発生し「金銭的な理由で、子どもに必要なタイミングで治療を受けさせられない保護者もいる」(小山田副会長)という。
実際に滝沢市では、母親が一時的な金銭負担を理由に、3人の息子を一緒に治療してもらうことができず、長男から順番に受診させた結果、完治が遅れて症状が悪化。余計に治療費がかかったケースがあったという。
今回のアンケート調査でも、歯医者を受診しない理由として学校が挙げたのは、「親の意識の低さ」(27%)や「家庭の事情」(21%)に次いで、「経済的な理由」(18%)が多かった。各校の養護教諭からも「窓口無料化になれば受診率は上がる」「治療費援助も医療券だと面倒。簡単になればいい」などの声が上がっている。