温泉クンの旅日記

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目玉

2007-03-21 | 旅エッセイ
  < 目玉 >

 いい加減な旅が多いから直前まで目的地が決まらないこともあるのだ。
 たとえば、いつぞやの九州旅のときの数日前はこんなふうであったのだ。

 とにかく参った。あせっている。
 出発日が明後日に迫っているのに目的地が決まらないのだ。来週一週間の休みは
とれており、金曜日に出発することまでは決まっている。どこへ行くのですかと
訊かれるたびに、九州の天草方面ですと、いい加減に答えてある。

 ところが、九州は先週からあいにくの梅雨入りだそうで雨嫌いのわたしの心は
千々に乱れたのであった。北に行くにしても北海道はまだ肌寒く時期尚早であろう
し、東北もとくに行きたいところが思いつかない。ううむ、困った。そうだ。明日
の木曜朝の週間天気予報で、来週のところに九州地方に傘マークが並んでいたら
北の方面、傘マークがひとつぐらいであれば、初心貫徹九州に向かおう。

 しかし、表向きの目的は「九州は天草の景色をみたい」ぐらいでもよろしいが、
裏の目的というか目玉がまったくいまのところない。
 旅の目玉、いわゆるあの大事な、ドコサイケバエーネン酸である。たとえば
「ウトロの夕陽を見に行く」という表の目的とは別に、「道東の温泉ぜんぶ制覇
したるで」とかいう胸躍るものが今のところひとつもないのだ。



 ところが通じるもので、昼飯を食べにいったところであんまり待たせるものだか
ら、ついつい置いてある古い週刊誌をぱらぱらめくっていたら、それを発見したの
だ。はげの湯温泉というところが阿蘇のへんにあるらしく、お湯が滅法いいらし
い。あの温泉の達人ノグチさんが、泥湯温泉と奈良田温泉と並べてごひいきにして
いると書いていた。毎年必ずいくという。泥湯も奈良田もモチロン制覇済みだが、
はげの湯などというふざけた名前の温泉は恥ずかしながら知らなかった。よっし、
これだ、ケッテイ! そう思いましたね。
 そういうわけで、木曜の朝の天気予報の傘マークの数がひとつだったのと、裏の
旅の目玉急遽堂々決定とで、行く先はめでたく九州に決まった。



 さあ、準備だ。といってもたいしたことはない。
 今日は帰りに門前仲町まで歩いて、いつもの「不動一」の煎餅を買うとしよう。
運転中の眠気覚ましにいろいろ試したのだが、ここの煎餅が一番自分にあってい
る。それにとにかく旨いからつまみにもなるので、長旅には必ず持っていくように
なった。道中無事息災のゲンかつぎの意味もある

 長い運転もひさしぶりである。自分としては珍しく長い間、旅に行っていない。
公私ともに忙しすぎたのだ。太いの細いの、さまざまなしがらみが身体にがんじが
らめに巻きついているようだ。
 船が航跡を海面にひととき残すように、巻きついたそのしがらみをコノヤロメと
ほどき引きちぎり、高速道路のアスファルトに密かに撒き散らして一路九州にひた
走るのだ。

 なにしろ、九州は遠い。ひたすら、かなたにある。途中に、名古屋京都大阪神戸
という渋滞発生の都市が待ち構えているから、遠く感じるのだ。
 北海道のように、青森函館間はフェリーで、暫し楽チンの休みがあるわけでもな
い。運転しっぱなし。暫しの楽チンなど皆無。身体が遠さをイヤというほど実感す
るところまで行くのだから、それだけで転地効果はあるは必定の理。

 おーし、また元気の源泉を掘りあてたるデ。
 達人お勧めの秘湯「はげの湯」も、恐ろしく効きそうである。くたびれた身体
が、サラの新品に生まれかえるかも。まさかふざけた名前の由来どおりに、効きす
ぎて禿げたりしないだろうな・・・。

  →目玉の「はげの湯温泉」の記事はこちら
  →「天草」の記事はこちら

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