温泉クンの旅日記

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吾妻線沿線

2007-03-17 | 温泉エッセイ
  < 吾妻線沿線 >

 渋川から草津を通り万座・鹿沢口方面へ走る単線のローカル線・・・吾妻線の
沿線には伊香保、四万、草津をはじめとして温泉がゴチャマンとある。無数とか
宝庫という言葉より、巡った者にはゴチャマンのほうがしっくりくる。

 ただし、温泉めぐりは車でないとけっこう便が悪い。電車ならバスを使うことに
なる。乗っても二十五分ぐらいが限界のバス嫌いのわたしだと、冬のワンシーズン
車に乗らないときには行ける温泉が限られてくる。駅から歩いていけるところに
なってしまうのだ。

 今回の草津旅だがそんなわけで、まずは小野上温泉センターで軽くサッパリする
ことに。
 小野上駅前にあるちいさな温泉である。宿は公営がひとつ、旅館がひとつであ
る。安いものだから、どちらも利用したことがある。東京で仕事を終えてから来て
も、ゆうゆう九時前にはチェックインできる。ただし温泉はこの日帰りの温泉施設
のほうがよろしい。



 センターの入浴料金は四百円と割安感がある。今回でたぶん四度目ぐらいであ
る。
 全国には同じ名前の温泉や似たような名前の温泉が多い。温泉話をしているとき
など、山梨の下部温泉と群馬の磯部温泉を取り違えるように、この小野上温泉も
山形の小野川温泉とわたしはいつも間違えてしまう。

 小野上温泉でさっぱりして男前をアップしたので、次は川原湯温泉へ向かう。
この川原湯温泉は、いずれ数年のうちにダムの底に沈んでしまうことで有名であ
る。
 川原湯温泉駅からは歩いて十五分ほどあればいける。駅からバスを使えば美人湯
で有名な川中温泉もそう遠くはないが雪だからそちらはパスした。
 駅前の国道を草津のほうに五十メートルほど進み信号を渡れば、あとはゆるやか
な坂だが一本道である。

「・・・・・ですか?」
 昨日からの雪がかなり積もった坂道を、降りしきる雪をフードでよけながら注意
深く滑らないように歩いていると、ザックを背負った若者が追い越しざまに笑顔で
いきなり声をかけられビックリしてしまう。

(あ? ・・・はい?!)
 あいまいな頷きとつくり笑顔でとりあえず返すと、ずんずん離れていく後姿を
みつめながら、考え込む。いったいなんてカレは言ったのだろう。青春とか
数字・・・十八・・・って聞こえたような気がする。どう見間違ってもわたしは
青春でもないし十八でもない。自分にあまりにも関係ない単語だから耳がきっと
拒否したのだろう。



 無料の外湯へ行こうと固く決めていたのだが雪の坂道に思い切りめげて、軟弱に
も手前の水車とむささびの宿と看板にある旅館「山木館」の温泉にさっさと変更す
る。
 水車の露天風呂。露天の冷気のなかを慌ただしく着ているものを脱ぎ散らかし、
掛け湯をたっぷりすると温泉に身体を沈めた。
 ひと心地がつくと、さっきの若者のことを思い出す。
 青春、十八・・・あとひとつ単語があったような・・・そうか! カレはこう
訊いたのだ。「青春十八切符、でですか?」



 青春十八切符を使って温泉でも回っているのですか。そういう問いかけだったの
だ。ジーンズにナイキのジャケットで、フードを深くかぶっていたから案外若く
見えたのだろうか。ふっ、ふ、青春・・・かよ。温泉を掬って顔にゆるゆる塗りこ
むように浴びながら、なにか機嫌がみるみるよくなってしまう。

 ところが大きな勘違いだったことが後で鉄道好きのやつに訊いてわかった。
 心に青春があると思っているひとなら、年齢制限まったく関係なくオッサンでも
オバチャンでも買える切符が「青春十八切符」だと言う。

 一瞬寄り目になるぐらいかすかに傷ついたわたしを、面白そうに笑いながら鉄道
好きがさらに追い討ちをかける。
「若く見えたというよりは、あんまり金持ってない貧乏そうに見えたんじゃない
の」


    →草津の記事はこちら
    →伊香保の記事はこちら

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