温泉クンの旅日記

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能取湖、サンゴ草群落の絶景

2019-10-06 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <能取湖、サンゴ草群落の絶景>

 だれでも記憶のなかにはガラクタばかりでなくいくつかの宝物を持っているよな。キミもそうだろ?
 そして、持っている宝物は少ないより、たんまりと多いほうがそりゃもういいに決まっている。そのひとの豊かな人生の証になるんだからな。

 

 能取(のとろ)湖、紅葉のサンゴ草群落・・・。
 オレにとって、思いだす風景の宝物のひとつがまさにここなんだ。いわばあの菊池渓谷の記憶と同じくらい、ピカピカの輝きのお宝なのさ。

 

 十年以上前になるが、留萌に近い苫前というところから北海道を横断して、知床ウトロの夕陽を見に突っ走ったときにみて以来だ。下道だけのざっと三百七十キロ・・・。思えばとんでもなく無謀、若気の至りアーンド汗顔の至りというやつだ。

 サンゴ草の群落が真っ赤に染まり、能取湖レッドといわれる圧巻の絶景だ。広さはどのくらいって? ・・・そうね、東京ドームより少し小さいくらいといったら想像しやすいかな。

 

 どこにあるかって? 
 それがね・・・ちょっと遠いんだ。

 

 

 北海道の網走、オホーツク海に面した網走国定公園に含まれている湖で、網走駅からは十三キロ離れていて、歩いたら三時間はかかるから、バスかタクシーを使ったほうがいいよ。二十分もみとけば充分。

 

 網走湖の北、サロマ湖との間に挟まれた湖なんだ。
 能取(のとろ)はアイヌ語で<あごのところ>とか<岬>を意味するそうで、能取湖は周囲約三十三キロ、最大水深二十三メートルのほぼ海水の湖だ。

 

 サンゴ草はアッケシ草の別称で、茎が丸く葉のない一年草。夏には緑色をしているが、秋になると赤く色を変えて、やがて真紅の絨毯のような風景になる。
 真紅とはちょっとだけいいすぎで、良く見ると黒みがかった赤だ。

 

 道東地方ではサロマ湖、小清水あたりの国道脇に広がる濤沸(とうふつ)湖、厚岸湖でもみられる。なにしろ厚岸湖は日本で初めて発見された場所で「アッケシ草」という名称の由来にもなったそうだ。
 昼間の時間帯もいいが、初秋の早朝、朝靄が発生する日も幻想的な風景となるらしいが日程に余裕がない旅人にはちょっときびしい。

 

 九月に網走にいったのならとにかく無理しても絶対にいくべきだよ。
海とつながっている湖のため、九月にはぜんぜん無い大潮なんだけど、十月に入ったらその大潮でサンゴ草は沈んでみられなくなってしまうそうだからね。

 

 能取湖にはサンゴ草を観賞できる木道が設置されているんだ。
「もし・・・背中に蟲がいっぱい!」
 オレは思わず前を歩くオバサン軍団の、背中が蟲オバになっちゃってるひとりに声をかけてしまったぜ。

 木道を歩いたら、あちこちに蚊柱のようにいる羽虫の大群にはホント要注意だ。蚊より大きいが蠅より小さいが大量で、背中や髪の毛にたかり、鼻や口を襲うから。
 あのオバサン、よっぽど素敵な体臭なのか前の晩に深酒でもしたのだろうか。まあ、世の中には虫が好かないヤツもいれば、蟲に好かれるヤツもいる。ということだね。ははは。

 

「あのォ・・・」
 鈴を転がすような女性の声が木道を引き返すオレの背に掛けられた。えっもしかして、ナンパか?
「は?」
 鼻の下をビローンと伸ばして嬉しそうに見返る、オレの背中を指さして、こう言ったね。
「背中が蟲でビッシリと・・・なんかスゴイことになってますけど!」



     *今回は前にわりと評判良かった「東京駅、天上の晩餐」風の文体で書いてみたよ


  →「熊本、菊池渓谷を歩く(1)」の記事はこちら
  →「熊本、菊池渓谷を歩く(2)」の記事はこちら
  →「夕陽」の記事はこちら
  →「東京駅、天上の晩餐(1)」の記事はこちら
  →「東京駅、天上の晩餐(2)」の記事はこちら


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