温泉クンの旅日記

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京都・京田辺、酬恩庵一休寺(2)

2023-12-24 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <京都・京田辺、酬恩庵一休寺(2)>

 酬恩庵一休寺を訪れるのであれば、脚力に自信があってもバスの使用(二名以上ならタクシー奮発するのもいいかも)をお薦めする。新田辺駅から1.5キロ、徒歩25分というが最短経路をとった場合であり、路を間違えると丘陵地なのでけっこう悲惨なことになる。間一髪で逃して、長い待ち時間ができたとしても辛抱したほうが賢い。歩いて、しかも路を間違えてしまったわたしはとんだ大失敗。

 江戸時代の文化人・「石川丈山」が終の棲家として建てた「詩仙堂」を訪ねた記事で、わたしはこう書いた。
『丈山は小堀遠州、本阿弥光悦、松花堂昭乗、林羅山らとともに江戸時代初期の「寛永文化」を支えたひとりで、『渉成園(東本願寺)』や『酬恩庵(一休寺)庭園』、洛北の『蓮華寺庭園』などの作庭に関わったという。
 丈山の関わりのある他の庭園の名を、忘れず心に刻んでおくとしよう。』
 というわけで、一休寺には庭園を観にきたのである。

 

 庫裡に降りていく。
 庫裡は、僧侶の居住の場であり時食を調える場である。方丈の新築時に、加賀三代目藩主前田利常公の寄進により新築されたもので、江戸初期の建築様式をそのまま残している。

 庫裡左手にある方丈入口から入り、方丈庭園の方向に進む。
 方丈中央の昭堂、一休禅師の木像が安置してあるあたりの縁側に、先客が十名ほど座って住職らしい人の説明を受けていた。この木像は一休禅師逝去の年に、高弟「墨済」禅師に命じて作らせたもので自身の頭髪と髭を植えたとされている。

 

 年季の入った広い縁側の前に広がる、白砂とサツキの刈込みが美しい枯山水の方丈庭園の「南庭」だ。
 南庭は宗純王廟と虎丘を背景として、これら建物の北部斜面を利用してサツキの刈込があり西部に大きい蘇鉄が植えられている典型的な江戸時代の<禅苑庭園>である。
 刈込から軒下までは白砂が敷き詰められておりさっぱりとした中に落ち着いた雅味をあたえている。

 

 砂紋は方丈に対して水平方向に描かれることが多いが、一休寺では縦方向に砂紋が引かれている希有なものだ。

 

 縁側を歩いて「東庭」の十六羅漢の庭へ移動する。お釈迦様から「仏教を守って、生命あるもの全てを導いて」との遺言を受けた、選ばれた16人の羅漢のことで、大小十六個の石をその羅漢になぞらえた庭である。

 

 さらに縁側を辿り「北庭」。庭園内に低い山を設置した準平庭式の禅院枯山水である。
 右奥は蓬莱石を中心とした枯滝石組、左は鶴亀石組となる「蓬莱式庭園」の形式である。

 

 大きな巨石が、不老不死の仙人が住むとされる「蓬莱山」に見立てた蓬莱石で、枯山水の名園である大徳寺の「大仙院」の庭園」に似ている。一休禅師は、天皇の勅命を受け大徳寺大仙院の住職となり、応仁の乱で焼失した大仙院を復興しておりその影響を受けているのだろう。

 

 蓬莱石の右にある黒色の立石は「鯉魚石」で、鯉が滝を登る様子を表現した石だそうだ。鯉が滝を登るようなことはできないが、ひたすら修行を繰り返すという禅の理念を石組で表したのを「龍門瀑(りゅうもんばく)」と呼び、金閣寺にも同じものがあるという。
 鶴亀石組は、蓬莱石との組み合わせでつくられている。手前側に、鶴島と亀島が石組で表現され、右から見ると亀島、左から見ると鶴島という仕掛けになっている。また、その奥の松の下には「三尊石」がある。

 

 南庭・東庭・北庭の三方からなる庭園は、江戸初期のものとしては一流であり当代庭園の白眉とされている。作庭は「石川丈山」、「松花堂昭乗」、「佐川田喜六」の三名の合作とされているが、どのあたりが丈山によるものかは、まったくもってわからなかった。

 方丈入口の女性に教えてもらった、1時間に1本しかないバス時刻にはまだ時間があるので、鐘楼を見学することにした。
 鐘楼は、袴腰付(はかまごしつき)と呼ばれる鐘楼で、下層の板壁が柱に対して斜めに寄り掛かった特徴的な外観をした建物である。

 

 周りが樹木に囲まれて視認しにくいが、上層の縁を支える腰組や屋根を支える組物などに「禅宗様」と呼ばれる意匠の立派な建物だ。「禅宗様」とは、臨済宗の開祖明菴(みょうあん)栄西禅師が日本に伝えたといわれる建築様式で、軒先の扇垂木が並行でなく放射状に配され、独特の雰囲気を醸しだしているところだそうだ。


  →「京都・京田辺、酬恩庵一休寺(1)」の記事はこちら
  →「京都・一乗寺、詩仙堂(3)」の記事はこちら


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