温泉クンの旅日記

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大沢温泉 兵庫・神戸

2007-03-11 | 温泉エッセイ
  < 話したい >

 人生には、いろいろな別離がある。
 ああ、このひととはきっとまた必ず逢うだろうな、という確信をもつ別れもあれ
ば、うーん、このひととはたぶんもう二度と逢わないような予感の別れもある。

 大阪に住むオーちゃんは、もちろんその前者である。
 オーちゃんは春に突然会社を辞めた。どうするのだろう、わたしも呑み仲間たち
もあれこれ心配していると、翌年始めにそのオーちゃんからメールを受け取った。
「今度、高槻の山奥で猪や猿を相手に漬物屋を開きます」という内容で、高槻の
住所や電話番号が書かれたメールであった。開店は五月以降だという。呑み仲間
全員に配信されていた。
 近いうちにお店のほうに必ず行きます、わたしは心から喜んでそう返信したのだ
った。
 
 いま山陰の浜田道に乗り、そのオーちゃんが住む大阪に向かっている。
 突然、店の中にはいっていって驚かす。あれえ、と叫んできっと飛びあがるだろ
うな。ふふふ。もしも他の客に気をとられていたら、あのう、評判を聞いて横浜か
ら漬物を買いにきたんですけどオ、そう大きな声でいってこちらに振り向かせよ
う。

 時計をみると、いまは十二時前である。距離から到着時間をざっと計算すると、
大阪着は夕方の五時から六時ごろか。事前にまったく連絡もせずに、いきなり夕飯
時はちょっとまずいか。店の営業時間も知らないが七時か八時ぐらいまでは、開け
ているだろう。
 うむ。やはり翌日の朝、開店一時間後の十一時ぐらいが適当か。

 となると、宿は兵庫あたりがベストな位置である。早めにチェックインして、
サッカーをみよう。明日は十時にチェックアウトすれば、一時間もみておけば
いい。そう決めたら腹がへった。
 寒曳山パーキングで、車内のごみを捨て、カレーライスの昼食をとった。夜食用
の箸もゲットする。昨夜、カップめんを食べようと思ったら箸がなかったのだ。

 ひたすら中国道をひた走り、眠くなるとサービスエリアでたびたび休憩して、
お茶を飲んだりカレーパンを買ったりして気分転換をした。
 七塚原サービスエリアで給油したときに、今日の宿を本で探して予約した。神戸
の公営の安い宿だ。
 四時半、予定通り本日の宿がある「神戸フルーツ・フラワーパーク」に到着す
る。



 ここの施設がバブリーで、ものすごい。
 結婚式もできるようなしゃれた音楽堂や遊園地、園芸バイテク館、パン・ケーキ
館、ブランデー・ビール館、ミルク館、ビーフ館、フルーツ・フラワー館などの
テーマ館がある。そのうえパターゴルフ場、フルーツ狩りができるガーデンまで
ある。

 そんなびっくりするほど広大な施設の、一角にホテルがある。
 このホテルも、またスゴイ。本当に外国にきたような錯覚をおこすような豪華な
宿だ。なんでもオランダ国立美術館を模した建物だそうだ。だだっ広い前庭の一角
は、夏場はプール、冬場はスケート場として利用できる。



 これで、朝食つきで七千五百円だという。(いまはもう少し高いかも)
 ひとりなので千円ほどの追加があるにしても、ご機嫌なホテルである。あの、
かっては豪壮だった九州のグリンピア指宿をなぜか思い出し、ここはいったい採算
はとれているのだろうかと心配してしまう。
 部屋も広く清潔で申し分ない。ただひとつ、冷蔵庫がないのが寂しい。しかし、
無料の氷と、毎日運んでいた呑みかけのお茶や水のペットボトルとでなんとかなり
そうだ。

 ホテルに併設されたバーデハウスは、サウナとか打たせ湯寝湯とか九種類の風呂
が楽しめるという。北東北や伊豆にもあるがここも大沢温泉というらしい。
 さっそくいってみる。温泉施設は一見豪華だが、浴場にはいるなり「これって
プールの匂いじゃん」という、がっかりするものだった。

 ぶらぶら奥のほうにいくと、外に丸い形の源泉露天風呂があり、ほっとして笑顔
をとりもどした。これがなかなかよい。有馬そっくりの鉄分の多い温泉だ。これで
楽しみが増えた。泉質は含鉄塩化物強塩温泉である。身体を拭いたタオルが真っ赤
になってしまう。またここに泊まってもいいかもしれない。それくらい気に入っ
た。



 夕食は、一階のレストランでステーキでも食おう。わたしはテンダーロインステ
ーキよりは、脂身があるサーロインのほうが好きだ。ここは神戸だから、きっと
神戸牛のステーキだろう。旨いに違いない。
 楽しみにしているサッカーのテレビ中継の時間が早いので、はやめにレストラン
にはいった。なんと悲しいことに、レストランは完全禁煙であった。まあ、しょう
がないか。サーロインステーキは肉がすこし硬く、期待したほどの味ではない。
あるいは期待しすぎたのかもしれないが。眼でウエイターを呼ぶと、日本酒を常温
で頼む。

 ひとり旅は、無性にひとと喋りたくなるときがある。

 明日は、ひさしぶりに友人と話ができる。旅先では初対面のひととばかり喋るの
で、どこかしら構えてしまう。どこまでいっても観光「客」とか、泊り「客」とし
てのわたしと、地元のひとの会話である。
 なにか対等でない。いかにもお互いに打ち解けたように楽しげに話しても、心か
ら打ち解けてはいない。裸になれない。浴衣を着て風呂にはいっているようだ。

 それにしても、明日がホントウに楽しみだ。わたしは意味なく腕時計を確認する
と、こんどは勢いよく手をあげて、日本酒のお代わりを頼んだ。

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