< 海岸線 >
もっぱら、音楽を聴きながら運転する。
カーナビについているラジオの設定ボタンを押すと、そのエリアで受信できる
中波やFMを勝手に探してセットしてくれる。便利なものだ。だから、たいていは
FM放送をながしている。
受信しにくいところや眠いときにはCDを聴いて気分転換をはかる。ジョージ・
ウィンストンとかグローバー・ワシントンJRとかの、自分の好きな癒し系の音楽だ
と聴き入ってしまい、返って眠けを催す。だからテンポがよくて口ずさめる曲が
いい。たとえば宇多田ひかるやエブリィ・リトル・スィング(ELT)あたりが運転
中のわたしには合っているようだ。
宇多田の歌はあちこちに満遍なく明るさが沁み込んでいる。きらきらした歌詞の
断片が清涼剤のようで元気になる。声もいい。エックス・ジャパンなども一緒に
声を張りあげられるので、間違いなく眠気が飛ぶ。
長門の湯免温泉で朝を迎え、いつものように覚悟する。
(うぅーん・・・今日も、かなりの距離走ることになるぞ)
高速道路だけなら、いち日に七百キロ以上走ることもあるが、一般道込みである
と五百キロぐらいを限界としたほうが無難だ。三百から四百キロなら楽勝。これは
経験からである。もっともこれは自分の場合であって、普通のひとにはあてはまら
ないかもしれない。
今日はすこしでも大阪に近づきたいので、五百キロを覚悟している。
昨日はチェックインしてすぐにひと風呂浴びると、夕食がてらに近くの青海島を
観光した。小さな島で、橋がかかっていて車でそのままいけるのだ。島の海岸線で
車を停めて海を覗き込むと、たしかに名前の通りに、水が透き通ってきれいな海だ
った。しばらく見とれてしまう。わたしのなかの山陰のイメージを覆すほどの、あまりにも透明な海であった。軽めの夕食をとり宿に戻ると、温泉にはいり、多めの
寝酒でいつのまにか爆睡してしまった。
たっぷりの睡眠で身体も軽い。
朝食を七時半に食べて、八時丁度に元気に出発した。ここからまず出雲方面に向
かう。八時半に萩の町を通過した。
海岸線をひたすら走る。
道の左側におだやかな青い海が続く。天気もよく、気温も二十二度と心地よい。
両側のウィンドを下げて、潮の香りの涼やかな風で、こもった煙草の匂いを吹き
飛ばした。
道も空いているので七十キロで快調に走れた。九時半、田万川温泉というところ
にいったが臨時休業であった。ま、よくあることだ。縁がないということ、と割り
切る。
十一時に浜田の街にはいった。
とたんに、なにかを成し遂げたような充実が湧いてくる。
この数年、青森から何度かに分けて海岸線をずうっと降りてきたのだが、その
連結する地点が、ここ浜田である。これで山陰もすべてつながったわけだ。青森県
から山口県までの海岸線を、延々と、とにかく走ったわけだ。どんなもんだ。ただ
ただ温泉ばかりではないのだ。
浜田道から中国道を走ることに決めた。
浜田郵便局で心細くなった現金を補充した。
河島英五のCDを宇多田ひかるに取り替えた。睡魔に襲われるのはいつも昼過ぎが
多い。食事をとったあとの高速道路が一番眠くなる。あと二、三時間後のための
準備である。
走行距離が四百キロあたりを超えたら、どこか泊まるとこを決めよう。五百キロ
あたりにある温泉地だから、岡山か兵庫泊まりになるだろう。公営の宿からあたろ
う。
よーし、と小さく呟くと、シートベルトをきっちり締めた。
もっぱら、音楽を聴きながら運転する。
カーナビについているラジオの設定ボタンを押すと、そのエリアで受信できる
中波やFMを勝手に探してセットしてくれる。便利なものだ。だから、たいていは
FM放送をながしている。
受信しにくいところや眠いときにはCDを聴いて気分転換をはかる。ジョージ・
ウィンストンとかグローバー・ワシントンJRとかの、自分の好きな癒し系の音楽だ
と聴き入ってしまい、返って眠けを催す。だからテンポがよくて口ずさめる曲が
いい。たとえば宇多田ひかるやエブリィ・リトル・スィング(ELT)あたりが運転
中のわたしには合っているようだ。
宇多田の歌はあちこちに満遍なく明るさが沁み込んでいる。きらきらした歌詞の
断片が清涼剤のようで元気になる。声もいい。エックス・ジャパンなども一緒に
声を張りあげられるので、間違いなく眠気が飛ぶ。
長門の湯免温泉で朝を迎え、いつものように覚悟する。
(うぅーん・・・今日も、かなりの距離走ることになるぞ)
高速道路だけなら、いち日に七百キロ以上走ることもあるが、一般道込みである
と五百キロぐらいを限界としたほうが無難だ。三百から四百キロなら楽勝。これは
経験からである。もっともこれは自分の場合であって、普通のひとにはあてはまら
ないかもしれない。
今日はすこしでも大阪に近づきたいので、五百キロを覚悟している。
昨日はチェックインしてすぐにひと風呂浴びると、夕食がてらに近くの青海島を
観光した。小さな島で、橋がかかっていて車でそのままいけるのだ。島の海岸線で
車を停めて海を覗き込むと、たしかに名前の通りに、水が透き通ってきれいな海だ
った。しばらく見とれてしまう。わたしのなかの山陰のイメージを覆すほどの、あまりにも透明な海であった。軽めの夕食をとり宿に戻ると、温泉にはいり、多めの
寝酒でいつのまにか爆睡してしまった。
たっぷりの睡眠で身体も軽い。
朝食を七時半に食べて、八時丁度に元気に出発した。ここからまず出雲方面に向
かう。八時半に萩の町を通過した。
海岸線をひたすら走る。
道の左側におだやかな青い海が続く。天気もよく、気温も二十二度と心地よい。
両側のウィンドを下げて、潮の香りの涼やかな風で、こもった煙草の匂いを吹き
飛ばした。
道も空いているので七十キロで快調に走れた。九時半、田万川温泉というところ
にいったが臨時休業であった。ま、よくあることだ。縁がないということ、と割り
切る。
十一時に浜田の街にはいった。
とたんに、なにかを成し遂げたような充実が湧いてくる。
この数年、青森から何度かに分けて海岸線をずうっと降りてきたのだが、その
連結する地点が、ここ浜田である。これで山陰もすべてつながったわけだ。青森県
から山口県までの海岸線を、延々と、とにかく走ったわけだ。どんなもんだ。ただ
ただ温泉ばかりではないのだ。
浜田道から中国道を走ることに決めた。
浜田郵便局で心細くなった現金を補充した。
河島英五のCDを宇多田ひかるに取り替えた。睡魔に襲われるのはいつも昼過ぎが
多い。食事をとったあとの高速道路が一番眠くなる。あと二、三時間後のための
準備である。
走行距離が四百キロあたりを超えたら、どこか泊まるとこを決めよう。五百キロ
あたりにある温泉地だから、岡山か兵庫泊まりになるだろう。公営の宿からあたろ
う。
よーし、と小さく呟くと、シートベルトをきっちり締めた。
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