温泉クンの旅日記

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蔵王温泉(2)

2015-09-06 | 温泉エッセイ
  <蔵王温泉(2)>

 夕食のとき、わたしのそばでちょっとしたひと悶着があった。

 小さな学校の講堂なみに広い大食堂には、長テーブルがびっしり並び、料理の配膳もたぶん天ぷら一品を除いてほとんどすんでいる状態であった。
 高校の体育会系クラブの合宿も入って、どうやら泊り客は満員に近いようだ。料理の境界線も気をつけないと間違いそうである。
 わたしのこの日の夕食のメインは豚しゃぶだったので、もっぱら呑みに徹することにして酒が進みそうなものから順次手をつけていくことにした。
 飲物の注文を受けたり空いた皿を下げたりと、テーブルを飛び回る仲居さんのひとりをようやく捕まえて、わたしが酒を頼んだときだった。

 血相を変えた中年男性の泊り客が、浴衣がはだけるのも構わず大股で近づいてきた。
「なんで勝手に持っていくんですか! まだ食べている途中でしょうが!」
 そう大声で怒鳴り、周りの客が唖然とするなか、仲居が下げた皿のひとつを盆から荒々しく取り上げると、「まったく、どうなっていやがるんだ、ここは」とかぶつぶつ聞こえるように文句を言いながら隣の列の席に戻っていった。もしかしたらわたしとは逆で、好きなものを残して最後に食べるタイプなのだろうか。

 後にどっぷりと不機嫌な空気を残して、瞬間的に小さな嵐が吹き荒れていったようだ。不機嫌というものは恐怖と一緒で周りに強烈に伝染するので、一帯の客が苦笑いしつつもなんとなく白けてしまう。
 わたしも、早めに酒を切りあげてご飯をもらうことにする。

 それにしても、どこかでこんな場面みたことある・・・ぞ。そうだ、ドラマの「北の国から」だ。
 深夜のラーメン屋での五郎さんの「子どもがまだ食ってる途中でしょうが!」のシーンをまざまざと思いだした。
 また温泉に入り、部屋で呑んだのだが腹が減ってしょうがなくラウンジにいって夜食の半ラーメンの味噌を食べた。



 唐辛子か豆板醤が入っているようで辛口だがもう一杯頼もうかと思うぐらい旨かった。カラオケしている若いカップルのお邪魔にならないようにすぐに退出した。

 朝が明け始めたころに風呂に行くと、昨日女風呂だったところが男風呂になっていた。最近の温泉宿は通年男女を固定した浴室スタイルから、時間を決めて男女入替え制にする方式に変わってきている。そしてたいていは到着時に女性風呂だったほうが広かったりして優遇するのだ。きっと、女性客の心を掴めばリピート率があがるのであろう。「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」である。
 ここもそうだった。
 昨日男性だった風呂と同じ浴槽がまずある。



 もうひとつ同じくらいの半露天風呂が隣にあった。



 ただ窓がない半露天よりは百目鬼温泉のように天井がスコーンと抜けているほうが断然いい。でも、源泉風呂がふたつあるのはいいものだ。
 湯上りの火照った身体を外に出て高原の空気で醒ます。





 昨夜の混雑ぶりのせいか、下の駐車場で足らずに坂を上がったところも臨時の車の駐車場となっていた。犬連れで散歩しているのは地元のひとだろうか。



 朝食はバイキングだったので、手近の空いている席に座った。取った料理を残すのは厭なので食べきったら往復するのだ。



(あれっ、どこかで見たような顔のひとだ・・・)
 前方で、左右の高校生と談笑している中年男性に見覚えがあった。誰だっけか。あ、マラソンだ。たしか市民ランナーのあのひとだ。きっと高地で走るトレーニングかなにかで来ているのだろう。わたしは気が付かなかったことに決めた。

 夜と朝、食事中にいろいろあった宿であったが、涼しいから夏場ならまた来てもいいな。



  →「蔵王温泉(1)」の記事はこちら


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